第4章 実行|売る

相続した実家・空き家を売る:流れ・費用・手取り・期限

相続した空き家を売る流れは、相続登記、査定、媒介契約、売買契約、引渡し、翌年の確定申告の順です。3,000万円控除などの期限は、相続開始日で変わります。

  • 売る順番は「名義を相続人に移す → 査定 → 媒介契約 → 売買契約 → 引渡し → 翌年の確定申告」です。共有者がいれば、最初に全員の意思をそろえます。
  • 手取りは、売却価格から仲介手数料などの費用と譲渡所得税を引いた額です。3,000万円控除が使えるかで、モデルケースでは222.0万円(1,200万円で売る場合)の差が出ます。
  • 期限は相続開始日で決まります。あなたのケースは期限カレンダーと診断で確かめてください。

公開 /更新 /執筆・編集:実家の手引き 編集部(運営者情報)

相続した実家・空き家を売るには、どんな順番で進めますか?

相続した実家・空き家は、相続登記、査定、媒介契約、売買契約、引渡し、翌年の確定申告の順に進めます。共有者がいる場合は、最初に全員の売却の意思をそろえます。

相続した実家・空き家を売るには、どんな順番で進めますか?
順 やること 期限・ポイント 詳しい記事
1 相続登記(名義を相続人にする) 相続による取得を知った日から3年以内(不動産登記法76条の2)。売るには事実上必要 最初にやること
2 共有者の合意・遺産分割 共有物全体の売却は共有者全員の同意が原則(民法251条) 共有名義の売り方
3 査定(机上査定・訪問査定)を複数社に依頼 査定額の根拠を聞く 手取り計算
4 媒介契約を結ぶ 次の章の表のとおり、契約の種類で縛りが違う 本記事
5 売り出し・内覧・価格の調整 売れないときの道は後述 本記事
6 売買契約 契約不適合責任の取り決めを確認 本記事
7 決済・引渡し 公共料金の停止日を記録しておく 確認書の取り方
8 売却翌年の確定申告 原則2月16日〜3月15日(国税庁 No.2020) 確定申告

相続登記には注意点があります。相続人申告登記(不動産登記法76条の3)をしても、それだけでは売却や担保設定はできません。売るには、遺産分割などに基づく相続登記が別に必要です(法務省)。

片付けや遺品整理が必要な場合は、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)が詳しく扱っています。

不動産会社との契約と、売却後の責任はどう決まりますか?

媒介契約は一般・専任・専属専任の3つがあり、専任と専属専任は宅地建物取引業法で有効期間や報告の頻度が決まっています。売却後の責任は、民法566条と572条が基本になります。

媒介契約とは、不動産会社に買主探しを頼む契約です。宅地建物取引業法34条の2は、契約を結んだら書面を交付することを不動産会社に求めています。

不動産会社との契約と、売却後の責任はどう決まりますか?
項目 専任媒介契約 専属専任媒介契約
他の不動産会社への重ねての依頼 できない できない
自分で見つけた買主との直接契約 契約上できる(禁止の特約がない場合) できない(特約を含む契約)
有効期間の法定上限 3か月(更新も1回につき3か月まで) 3か月(同左)
指定流通機構への登録 契約日から7日以内(休業日を除く) 契約日から5日以内(休業日を除く)
売主への業務報告 2週間に1回以上 1週間に1回以上

根拠:宅地建物取引業法34条の2第3〜5項・第9項、同法施行規則15条の10(2026年10月17日確認)。複数社に重ねて頼める契約は「一般媒介契約」と呼ばれます。一般媒介契約には法律上の有効期間の上限はありませんが、国土交通省の標準媒介契約約款は、有効期間を3か月を超えない範囲で定めるとしています(一般媒介契約約款8条)。

売却後の責任である契約不適合責任とは、引き渡した建物や土地が契約の内容に合わないときに、売主が負う責任です。

不動産会社との契約と、売却後の責任はどう決まりますか?
条文 内容
民法566条 買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、追完請求・代金減額・損害賠償・解除ができない。ただし売主が引渡し時に不適合を知り、または重大な過失で知らなかったときは別
民法572条 責任を負わない特約をしても、売主が知りながら告げなかった事実は免れない

雨漏りやシロアリなど、知っている不具合は契約前に書面で買主へ伝えます。免責や期間を短くする特約を結ぶ例もあるため、契約書の該当箇所を必ず読みます。

売るのにかかる費用はいくらですか?

主な費用は、仲介手数料、印紙税、相続登記の登録免許税、司法書士報酬、必要に応じた片付けや解体の費用です。金額が決まっているのは仲介手数料の上限、印紙税、登録免許税です。

売るのにかかる費用はいくらですか?
費用 金額・ルール 根拠
仲介手数料(上限) 売買代金のうち200万円以下の部分に5%、200万円超400万円以下の部分に4%、400万円超の部分に3%を乗じた合計(それぞれ税別)。400万円超なら「代金×3%+6万円」の速算式で求められる。消費税10%を加えた税込の率は5.5%・4.4%・3.3% 宅地建物取引業法46条、昭和45年建設省告示第1552号 第2
同(代金800万円以下の低廉な空家等の特例) 上限は30万円(税別。税込33万円)。令和6年(2024年)7月1日施行 同告示 第7
印紙税(売買契約書) 500万円超1,000万円以下は5,000円、1,000万円超5,000万円以下は1万円。令和9年3月31日までに作る契約書の軽減後の額 国税庁 No.7108
登録免許税(相続登記) 固定資産税評価額の0.4%。土地の評価額が100万円以下なら令和9年3月31日まで免税 登録免許税法、租税特別措置法84条の2の2
司法書士報酬・抵当権抹消 公的な統計や目安は公表されていません。事務所や登記の内容で大きく異なるため、見積りで確認します —
片付け・解体・測量 個別の見積り。売るための取壊し費用・測量費は譲渡費用になる 国税庁 No.3202

仲介手数料の上限は、1,200万円で売ると、税別42万円(税込46.2万円)です。内訳は、200万円×5%=10万円、200万円×4%=8万円、800万円×3%=24万円で、合計42万円です。速算式の1,200万円×3%+6万円でも、同じ42万円になります。実際の額は媒介契約書で確認します。

解体して売るか、古家付きで売るかは解体の記事で扱っています。自治体の解体補助金は、前述のふれあいの丘の自治体データベースで探せます。

売ったあと、手取りはいくらになりますか?

手取りは、売却価格から譲渡費用と譲渡所得税を引いた額です。次のモデルケースでは、1,200万円で売ると、3,000万円控除なしで930.8万円、控除ありで1,152.8万円になります。

手取りの考え方は次のとおりです。

  • 譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用
  • 取得費が不明なときは、売却価格の5%を概算取得費にできる(国税庁 No.3258)
  • 長期譲渡所得(被相続人の取得日から数えて、売った年の1月1日時点で所有期間が5年超)の税率は、所得税15%+復興特別所得税(所得税額の2.1%)+住民税5%で、合計20.315%(国税庁 No.3208)

モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。

条件:取得費不明(概算取得費5%を使用)、長期、仲介手数料は上限額、解体なし、住宅ローンなし。

売ったあと、手取りはいくらになりますか?
項目 1,200万円で売る 600万円で売る(低廉特例の上限を使用)
仲介手数料(上限、税込) 46.2万円 33万円
印紙税 1万円 0.5万円
概算取得費(5%) 60万円 30万円
譲渡所得 1,092.8万円 536.5万円
譲渡所得税(実効20.315%、控除なし) 222.0万円 109.0万円
手取り(控除なし) 930.8万円 457.5万円
手取り(3,000万円控除あり) 1,152.8万円 566.5万円

手取りは、売却価格から手数料・印紙税・税額を引いた額です。相続登記の費用、片付け、固定資産税の精算は含めていません。

控除が使えるかどうかは、昭和56年5月31日以前の建築、被相続人の一人暮らしなど多くの要件で決まります。要件は3,000万円控除の記事と判定ツールで確認できます。最終判断は税理士・税務署へ相談してください。

売却の期限はいつまでですか?

売却の期限は、相続開始日で決まります。3,000万円控除は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日と、制度期限の令和9年(2027年)12月31日の、早いほうまでに売る必要があります。

売却の期限はいつまでですか?
期限 内容 根拠
相続登記 相続による取得を知った日から3年以内。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料。令和6年(2024年)4月1日より前の相続は令和9年(2027年)3月31日まで 不動産登記法76条の2・164条
相続税の申告 死亡を知った日の翌日から10か月 国税庁 No.4205
取得費加算の特例 相続税の申告期限の翌日から3年以内に売った場合。3,000万円控除とは併用できない 租税特別措置法39条
3,000万円控除 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。かつ令和9年12月31日まで 租税特別措置法35条3項
確定申告 売った年の翌年2月16日〜3月15日が原則。期限が土日祝の場合は翌日 国税庁 No.2020、国税通則法10条2項
長期・短期の判定 譲渡年の1月1日で所有期間5年超かどうか。相続は被相続人の取得日から数える 国税庁 No.3202

3,000万円控除の期限は、相続開始日によって3通りに分かれます(2026年10月17日時点の計算例)。

売却の期限はいつまでですか?
相続開始日(例) 3年を経過する日の属する年の12月31日 実質の売却期限
2023年(令和5年)11月20日 2026年12月31日 2026年12月31日(年末まで約2か月半)
2024年(令和6年)6月10日 2027年12月31日 2027年12月31日
2025年(令和7年)9月5日 2028年12月31日 2027年12月31日(制度期限が先に来る)

令和10年(2028年)以降の延長は、2026年10月17日時点の国税庁 No.3306には書かれておらず、決まっていません。取得費加算と3,000万円控除は併用できず、選択になります。期限の自動計算は期限カレンダーで行えます。

売れないとき、または売りたくないときはどうしますか?

売れないときは、状態に合う別の出口を選びます。再建築不可、借地権、共有名義、立地や状態の問題は、それぞれ専用の記事があります。

売れないとき、または売りたくないときはどうしますか?
状況 次の選択肢 読む記事
買い手が付かない、急いで現金化したい 不動産会社に直接買い取ってもらう 買取と仲介の違い
接道が足りず建て替えできない 隣地・買取・国庫帰属 再建築不可
土地が借地で地主の承諾が要る 地主への売却、承諾、裁判所の許可 借地権
兄弟姉妹などと共有で意見が割れる 持分だけ売る、共有物の分割 共有名義
建物が古く、更地のほうが売りやすそう 解体して売る 解体
売らずに使いたい 貸す・土地活用 活かす
建物がなく、土地だけを手放したい 相続土地国庫帰属制度 国庫帰属
いったん持ち続ける 保有コストとリスクの確認 持ち続ける

売ることに向かないケースもあります。

  • 貸す予定がある場合。相続後に貸し付けると、3,000万円控除が使えなくなります(租税特別措置法35条3項、国税庁 No.3306)。
  • 家族の意見が割れている場合。共有物全体は、共有者全員の同意がないと売れません。
  • 持ち続けるコストが小さく、利用や思い入れがある場合。売る前に保有コストを計算します。
  • 売却益が大きく出る見込みで、控除の要件に当たらない場合。時期や方法で税額が変わるため、税理士に確認します。

物件が新潟県にある場合は、地域の情報を姉妹サイトの新潟 実家じまいナビ(運営:株式会社Kogera)が扱っています。

あなたのケースでは、売るべきですか?どう確かめますか?

売るかどうかは、期限、手取り、家族の合意の3点で決まります。まず期限と手取りを計算し、売る方向なら複数社の査定を比べます。

確かめる手順は次のとおりです。

  1. 相続開始日から、期限を期限カレンダーで出す。
  2. 売却価格を仮定して、手取り計算で控除あり・なしを比べる。
  3. 出口が分からなければ、診断で7つの出口を絞る(最初にやることに置いています)。
  1. 売る方向なら、複数の不動産会社の査定額と根拠を比べる。

査定の依頼と媒介契約は別です。媒介契約を結ぶまでは、売却を依頼したことにはなりません。

次のような人には、査定の依頼は向きません。

  • 売るかどうか決めておらず、家族との話し合いがこれからの人。
  • 共有者の同意が取れておらず、名義も整っていない人。
  • 買取業者への直接売却や、国庫帰属など、別の出口を先に確かめたい人。

売る方向で、複数社の査定を比べたい人向けに、無料の一括問い合わせ窓口があります。提携先の条件はサービスごとに異なるため、申込み前に各社の案内を読んでください。

この記事で使える計算ツール

計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。

よくある質問

相続登記をしないまま売れますか?

売るには、名義を相続人に移す相続登記が事実上必要です。相続人申告登記だけでは売却や担保設定はできません(法務省)。

3,000万円控除はいつまでに売れば使えますか?

相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日と、令和9年(2027年)12月31日の早いほうまでです。ほかに建築時期などの要件があります。

仲介手数料はいくらですか?

上限は、売買代金の200万円以下の部分に5%、200万円超400万円以下に4%、400万円超に3%(それぞれ税別)です。代金が800万円以下の空家等は、上限が30万円(税別。税込33万円)です。

売って利益が出なければ、確定申告は不要ですか?

譲渡所得がなくても、3,000万円控除などの特例を受けるには確定申告が必要です。最終判断は税務署・税理士へ相談してください。

実家が売れないときはどうしますか?

買取、隣地への売却、解体、国庫帰属、貸す、持ち続けるの中から、状態に合う出口を選びます。上の「売れないとき」の表から、該当する記事へ進めます。

この記事の根拠

  1. 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)34条の2 媒介契約(確認日 )
  2. 宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索)15条の10 指定流通機構への登録期間(確認日 )
  3. 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年国土交通省告示第949号による改正後。大阪府の掲載ページで本文を確認)(確認日 )
  4. 国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」(仲介手数料の上限の計算例と低廉な空家等の特例。税込の率5.5%・4.4%・3.3%、特例は30万円×1.1)(確認日 )
  5. 国土交通省 標準媒介契約約款(平成2年建設省告示第115号、令和4年国土交通省告示第583号による最終改正。一般媒介契約約款8条、専任媒介契約約款7条の有効期間)(確認日 )
  6. 国税庁 No.7108 印紙税額の一覧表(第1号の1文書 不動産の譲渡に関する契約書。令和8年4月1日現在法令等)(確認日 )
  7. 民法(e-Gov法令検索)566条・572条(確認日 )
  8. 租税特別措置法(e-Gov法令検索)35条3項(確認日 )
  9. 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(売却期限と令和9年12月31日までの適用期間を再確認)(確認日 )
  10. 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしくみ(確認日 )
  11. 国税庁 No.3208 譲渡所得の税率(長期)(確認日 )
  12. 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき(概算取得費5%)(確認日 )
  13. 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税(確認日 )
  14. 国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(確認日 )
  15. 国税庁 No.2020 確定申告(申告期間は原則2月16日〜3月15日)(確認日 )
  16. 不動産登記法(e-Gov法令検索)76条の2・76条の3、登録免許税法 別表第一(確認日 )
  17. 法務省 相続登記の申請義務化(確認日 )

最終更新:2026年10月17日。制度の数字は2026年10月時点の公表情報です。

  • 宅地建物取引業法34条の2、同法施行規則15条の10(e-Gov法令検索、2026年10月17日確認)
  • 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号。令和6年6月21日国土交通省告示第949号による改正、同年7月1日施行。2026年10月17日確認)
  • 国税庁 No.7108 印紙税額の一覧表(令和8年4月1日現在、2026年10月17日確認)
  • 民法566条・572条(e-Gov法令検索、2026年10月17日確認)
  • 租税特別措置法35条3項・39条、国税庁 No.3306・3267・3202・3208・3258・4205・2020(2026年10月16日確認)
  • 不動産登記法76条の2・76条の3、登録免許税法、法務省「相続登記の申請義務化」(2026年10月16日確認)

この記事は一般的な情報です。個別の税額や特例の可否は、税理士・税務署にご確認ください。