第4章 実行|売る

空き家・田舎の土地が売れないときの対処:順番と費用

空き家や田舎の土地が売れないときは、値下げと売り出しの見直し、買取、隣地、寄付、国庫帰属、相続放棄の順に検討します。国庫帰属は建物があると申請できません。

  • 売れない原因は、価格、建物の状態、土地の条件、権利関係、地目のどれかに分かれます。原因によって、次に試す出口が変わります。
  • 手元にお金が入る出口は、仲介での値下げ、買取、隣地への売却です。寄付、国庫帰属、相続放棄は、お金が入らないか、費用を払う出口です。
  • 国庫帰属は建物を解体してからで、手数料14,000円と負担金(原則20万円)がかかります。相続放棄は、土地だけを選べません。あなたのケースは診断で確かめてください。

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空き家や田舎の土地が売れないのは、なぜですか?

売れない原因は、価格、建物の状態、土地の条件、権利関係、地目のどれかであることが多いです。まず原因を見分けると、次に試す出口を絞れます。

負動産とは、持っていても売れず、固定資産税や管理の負担だけが続く不動産を指す通称です。法律や公的資料で定義された用語ではありません。

空き家や田舎の土地が売れないのは、なぜですか?
確かめること 売れない原因の例 次に読む記事
査定額と売り出し価格の差 売り出し価格が、査定額や周辺の売り出し例より高い 本記事(値下げ)
問い合わせ・内覧の数 問い合わせが少ない:情報の出し方や立地。内覧はあるが決まらない:建物の状態や条件 本記事
建物の状態 老朽化、残置物、雨漏り 買取、解体
前の道と間口 道路に2m以上接していない(再建築不可) 再建築不可
権利関係 借地、共有、名義が亡くなった方のまま 借地権、共有名義、売る前の相続登記
地目 農地、山林 農地、山林

売れないとき、どの順番で、どの出口を検討しますか?

手元にお金が入る出口を先に試し、入らない出口は費用を比べてから選びます。値下げ、買取、隣地、寄付、国庫帰属、相続放棄の順に条件と費用を並べると、次の表のとおりです。

売れないとき、どの順番で、どの出口を検討しますか?
順 出口 お金 主な費用 主な条件 期間の目安
1 値下げ・売り出し方の見直し(仲介) 入る 仲介手数料の上限(税別):400万円超は代金×3%+6万円。800万円以下の空家等は30万円 買主が見つかること 専任・専属専任の媒介契約は有効期間3か月まで
2 買取業者に売る 入る(仲介より低い傾向) 仲介手数料は不要な場合が多い 業者が対象とする物件であること 仲介より早い傾向
3 隣地の所有者に売る 入る(交渉で決まる) 測量・登記の費用など 隣地側に需要があること 交渉次第
4 寄付(自治体・個人・法人) 入らない 登記の登録免許税(評価額の2%)など 受け取る側が承諾すること 名古屋市は申込から約1か月で可否を連絡
5 相続土地国庫帰属制度 入らない(払う) 審査手数料14,000円+負担金(原則20万円〜)。解体費は別 建物がない土地であること、却下・不承認の要件に当たらないこと 標準処理期間8か月
6 相続放棄 入らない 収入印紙800円と郵便切手 全財産の放棄。3か月以内 3か月以内に申述
— 持ち続ける 入らない 固定資産税、管理費 — —

値下げ・買取・隣地は、どう進めますか?

仲介で売る場合は、不動産会社に査定の根拠を聞き、媒介契約の期間ごとに価格を見直します。それでも売れなければ、買取業者や隣地の所有者に相談します。

値下げと売り出し方は、いつ見直しますか?

専任媒介契約と専属専任媒介契約の有効期間は、3か月が上限です。更新も、更新の時から3か月までです(宅地建物取引業法34条の2第3項・4項)。この3か月が、価格と売り出し方を見直す区切りになります。

不動産会社は、価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければなりません(同条2項)。査定額の理由を複数社に聞いて比べます。

仲介手数料の上限は、売買代金が800万円以下の低廉な空家等では30万円(税別)です(国土交通省、令和6年(2024年)7月1日施行)。媒介契約の前に、報酬額の説明を受けて合意する必要があります(国土交通省)。不動産会社の選び方も参考にしてください。

売り出し先を広げる方法として、自治体の空き家・空き地バンクがあります。国土交通省は、各自治体の情報を横断して探せる全国版を案内しています。掲載には、所有者の同意が必要です(国土交通省)。窓口は、物件のある市区町村です。

モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。 売り出し価格400万円、年間の保有コスト15万円(固定資産税と管理費の仮定)の場合、10%の値下げ幅は40万円で、保有コストの約2.7年分です。値下げで売れる時期が2.7年以上早まるなら、保有コストの面では値下げが有利です。実際の保有コストは保有コストで確認してください。

買取と隣地は、どう使い分けますか?

買取業者は、仲介より早く現金化できる一方、価格は仲介より低い傾向があります。割合と選び方は買取と仲介で扱っています。

隣地の所有者には、敷地が広がる、または接道を確保できる利点があります。登記事項証明書で所有者を確認し、書面で相談します。値段は交渉で決まります。

農地を農地のまま売買するには、原則として農業委員会の許可が必要で、許可を受けていない契約は無効です(農林水産省、農地法3条)。農地と山林は、専用の記事で扱います。

土地や建物を寄付(贈与)することはできますか?

寄付は、相手が受け入れて初めて成立します。自治体、個人、法人のいずれも、受け入れる義務はありません。処分が容易と見込まれることを基準にする自治体もあり、売れない土地は受け入れられにくい場合があります。

寄付は、法律上は贈与です。贈与は、一方が無償で財産を与える意思を示し、相手が受諾することで効力が生じます(民法549条)。

土地や建物を寄付(贈与)することはできますか?
相手 受け入れの目安 税金・費用
自治体 自治体ごとの基準による。名古屋市は、市の事業に利用できる土地で処分が容易と見込まれるものが基準 登記の登録免許税。負担者は取り決め次第
個人(隣地の所有者など) 相手の意思次第 受け取る個人に贈与税がかかる場合がある(国税庁 No.4402)
法人 相手の意思次第 法人への贈与は、その時の価額で譲渡したものとみなされ、あげた側の譲渡所得の計算に入る(所得税法59条1項1号)

登記の登録免許税は、贈与による土地の所有権移転では、不動産の価額の1,000分の20です(国税庁 No.7191)。

名古屋市の案内では、次の土地は受け付けません(2026年10月17日確認)。

  • 隣地との境界が未確定の土地。抵当権など所有権以外の権利が設定されている土地。
  • 市が経費を負担することが条件の寄附。
  • 維持管理が困難な土地(土壌汚染や不法投棄物が残る土地、崖崩れのおそれがある土地など)。

建物付きの土地は、相談が必要とされています。受け入れられる土地の範囲は自治体ごとに異なり、全国の受入れ件数を示す公的な統計は確認できませんでした。まず、土地のある市区町村の財産管理を担当する課に、受け入れの基準を問い合わせます。

費用を払って土地を引き取る民間事業者もありますが、料金の公的な相場は確認できませんでした。契約前に、費用の内訳と追加請求の有無を書面で確認します。

国庫帰属は使えますか?費用は持ち続けるのと比べてどうですか?

建物がある土地は、相続土地国庫帰属制度を申請できません。建物を解体して更地にし、他の要件も満たせば、手数料14,000円と負担金(原則20万円)で国に引き渡せます。

相続土地国庫帰属制度とは、相続等により取得した土地を、一定の要件で国に引き取ってもらう制度です(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律、法務省)。

国庫帰属は使えますか?費用は持ち続けるのと比べてどうですか?
項目 内容 根拠
建物がある土地 申請できない。建物の登記がなくても却下される 法2条3項1号、法務省Q&A
審査手数料 1筆14,000円。却下・不承認・取下げでも返還されない 法務省Q&A
負担金 原則20万円。市街化区域の宅地、農地、森林は面積で算定 施行令5条
標準処理期間 8か月 法務省Q&A
相談先 土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局(予約制) 法務省Q&A

面積で算定する例として、市街化区域の宅地150㎡では、150×2,450円+303,000円=670,500円、千円未満切捨てで67.0万円です(施行令5条1項1号)。

モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。

条件:建物がなく、負担金が原則の20万円に当たる土地。年間の固定資産税を3万円と仮定。測量、草刈り、書類取得の費用は含めない。

国庫帰属は使えますか?費用は持ち続けるのと比べてどうですか?
項目 金額
国庫帰属の費用(14,000円+20万円) 21.4万円
持ち続けた場合の固定資産税(10年) 30万円
費用が並ぶまでの年数 約7.1年(21.4万円÷3万円)

建物の解体費は含めていません。解体費は別にかかり、解体すると住宅用地の特例が外れて固定資産税が上がる場合があります(解体)。申請前に国庫帰属の判定ツールで要件を確かめ、要件や費用の詳細は国庫帰属の記事で確認してください。

相続放棄で、土地だけを手放すことはできますか?

相続放棄では、土地だけを手放せません。相続放棄をした人は、その相続に関して初めから相続人にならなかったものとみなされるため、預貯金など他の財産も受け取れなくなります(民法939条)。

相続放棄で、土地だけを手放すことはできますか?
項目 内容 根拠
期限 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内。家庭裁判所に期間の伸長を請求できる 民法915条
申述先と費用 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所。収入印紙800円(1人)と郵便切手 裁判所
放棄後の保存義務 放棄の時に財産を現に占有している人は、引き渡すまで自己の財産と同一の注意で保存する 民法940条1項
放棄と処分 相続財産の全部または一部を処分すると、単純承認したものとみなされる 民法921条1号

相続人が相続放棄をすると、次の順位の人(被相続人の直系尊属、兄弟姉妹など)が相続人になる場合があります(民法889条)。空き家の鍵を持っているなど、占有している場合は、放棄後も保存義務が残ります。

相続放棄が向かない人もいます。

  • 預貯金や売れる不動産など、受け取りたい財産が他にある人。
  • 相続の開始を知ってから3か月を過ぎている人、遺産の一部をすでに処分した人。家庭裁判所や専門家に確認します。

手続きの詳細は相続放棄の記事で扱います。

あなたのケースでは、どの順番で試しますか?

建物の有無と、地目、権利関係で、試す順番が変わります。まず原因を見分け、手元にお金が入る出口から試します。

あなたのケースでは、どの順番で試しますか?
あなたの状況 試す順番の目安
建物付きで、価格を下げれば売れそう 値下げ→買取→(解体の費用を試算して)国庫帰属との比較
土地だけで、買い手が付かない 隣地への打診→買取業者の確認→国庫帰属の要件確認
農地・山林 専用記事(農地、山林)→国庫帰属の面積式の確認
再建築不可、借地、共有 専用記事(再建築不可、借地権、共有名義)
すぐに決められない 保有コストと土地活用をしない選択も含めて比べる

どの出口も、1つだけで決めず、複数の見積りや相談を取ります。期限の全体は最初にやることで確かめられます。

価格を最優先する人、時間に余裕があり値下げを重ねられる人、家族で売るかどうかが決まっていない人は、買取の申込みを急ぐ必要はありません。

売れない家や土地の買取査定を申し込める窓口があります。提携先は全国対応をうたっていますが、物件によっては買取の対象外になる場合があります。申込み前に、各社の案内を読んでください。

この記事で使える計算ツール

計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。

よくある質問

空き家が売れないのは、なぜですか?

価格、建物の状態、土地の条件(接道など)、権利関係(借地・共有・名義)、地目のどれかが原因であることが多いです。原因ごとに試す出口が変わります。

田舎の土地は、寄付できますか?

受け取る側の承諾が必要です。自治体は、基準を満たす土地に限って受け入れる例があり(名古屋市は境界未確定や維持管理が困難な土地を受け付けません)、受け入れ範囲は自治体ごとに違います。

負動産とは何ですか?

持っていても売れず、固定資産税や管理の負担だけが続く不動産を指す通称です。法律上の用語ではありません。

売れない土地を国に引き取ってもらう費用はいくらですか?

審査手数料が1筆14,000円、負担金が原則20万円です。市街化区域の宅地などは面積で算定します。建物がある土地は申請できません。

相続放棄をすれば、土地だけ手放せますか?

手放せません。相続放棄は全財産が対象で、期限は相続の開始を知った時から3か月以内です(民法915条・939条)。

この記事の根拠

  1. 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)34条の2 媒介契約(有効期間3か月・価額の意見の根拠)(確認日 )
  2. 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(低廉な空家等は30万円×1.1が上限。令和6年7月1日施行)(確認日 )
  3. 国土交通省 空き家・空き地バンク総合情報ページ(全国版は所有者の同意が必要)(確認日 )
  4. 農林水産省「農地の権利を取得するための手続き」(農地の売買は農業委員会の許可が必要。許可のない契約は無効)(確認日 )
  5. 名古屋市「土地の寄附について」(受け付ける土地・受け付けない土地・事前相談)(確認日 )
  6. 民法(e-Gov法令検索)549条 贈与、915条・921条・939条・940条(確認日 )
  7. 所得税法(e-Gov法令検索)59条 贈与等の場合の譲渡所得等の特例(法人への贈与は時価で譲渡したものとみなす)(確認日 )
  8. 国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合(個人から個人への贈与は贈与税)(確認日 )
  9. 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表(贈与による土地の所有権移転は1,000分の20)(確認日 )
  10. 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(e-Gov法令検索)2条(確認日 )
  11. 同法施行令(e-Gov法令検索)5条 負担金の算定(確認日 )
  12. 法務省 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A(令和7年9月1日現在。手数料14,000円・建物がある土地は申請不可・標準処理期間8か月)(確認日 )
  13. 法務省 相続土地国庫帰属制度の統計(令和8年8月31日現在)(確認日 )
  14. 裁判所「相続の放棄の申述」(3か月以内、収入印紙800円)(確認日 )

最終更新:2026年10月17日。制度の数字は2026年10月時点の公表情報です。

  • 宅地建物取引業法34条の2、民法549条・889条・915条・921条・939条・940条、所得税法59条、国庫帰属法・同施行令(e-Gov法令検索)
  • 国土交通省の媒介報酬規制の見直し・空き家バンクの案内、農林水産省「農地の権利を取得するための手続き」、名古屋市「土地の寄附について」、裁判所「相続の放棄の申述」
  • 国税庁 No.4402・No.7191(令和8年4月1日現在法令等)、法務省の国庫帰属Q&A(令和7年9月1日現在)

いずれも2026年10月17日に確認しました。

この記事は一般的な情報です。個別の税額や手続きの可否は、税理士・法務局・家庭裁判所・自治体の窓口にご確認ください。