第2章 相続直後|最初にやること
空き家を相続したら最初にやること:期限の順番と7つの出口
空き家を相続したら、まず相続放棄の3か月、相続税の10か月、相続登記の3年、3,000万円控除の年末期限を確認し、その順に動きます。
- 最初に確認するのは、期限の順番です。相続放棄は3か月、相続税の申告は10か月、相続登記は3年、3,000万円控除は相続開始から3年目の年末までです。
- 3,000万円控除は、制度が令和9年(2027年)12月31日までの売却に限られます。2025年以降に相続した場合は、相続開始から3年目の年末より、この日が先に来ます。
- 売るか、貸すか、手放すかを決める前に、空き家を壊さず、貸し出さず、現状を保つ方が選択肢を残せます。あなたのケースの日付は、期限カレンダーと診断で確認できます。
空き家を相続したら、最初に何をしますか?
最初にするのは、各手続きの期限の日付を出すことです。起算日が違うため、同じ日に相続しても、期限の日は手続きごとに異なります。
不動産に関わる期限は、次の4つが中心です(2026年10月17日時点)。
| 期限 | 期間 | 起算日 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 相続放棄・限定承認 | 3か月以内 | 自己のために相続の開始があったことを知った時 | 民法915条1項 |
| 相続税の申告・納税 | 10か月以内 | 相続の開始があったことを知った日の翌日(通常は死亡日の翌日) | 相続税法27条、国税庁No.4205 |
| 相続登記の申請 | 3年以内 | 相続で不動産を取得したことを知った日 | 不動産登記法76条の2第1項 |
| 3,000万円控除を使う売却 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで。かつ令和9年12月31日まで | 相続開始日 | 租税特別措置法35条3項、国税庁No.3306 |
死亡届や年金など、死亡後の一般的な手続きは、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)で調べられます。
期限はいつまでで、何が起きますか?
空き家を相続したときの期限は、相続放棄が3か月、相続税の申告が10か月、相続登記が3年、3,000万円控除を使う売却が相続開始から3年目の年末までです。手続きごとに、起算日と、過ぎたときに起きることが違います。
相続放棄は、いつまでにできますか?
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所に申述します(民法915条1項)。通常は、被相続人の死亡を知った日が起算日です。
期間の数え方は、初日を入れず、翌日から数えます(民法140条)。8月20日に知った場合、最終日は11月20日です(民法143条2項)。
- 財産を調べても、承認と放棄の判断ができないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます(民法915条1項ただし書、裁判所のページ)。
- 相続の承認か放棄をする前でも、財産の調査はできます(民法915条2項)。
- 費用は、収入印紙800円(申述人1人)と、裁判所ごとに異なる郵便料です(裁判所のページ)。
- 特定の土地だけの放棄はできません。放棄した人は、初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。
放棄の時に財産を現に占有している人は、相続人や相続財産の清算人に引き渡すまで、その財産を保存する義務があります(民法940条1項)。空き家の鍵を持っている場合などが当たります。
相続税の申告は、いつまでですか?
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です(相続税法27条、国税庁No.4205)。1月6日に亡くなった場合の期限は、11月6日です。期限が土曜日、日曜日、祝日などに当たるときは、その翌日が期限とみなされます(国税通則法10条2項)。
申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。相続人の住所地の税務署ではありません(国税庁No.4205)。相続税が実際にかかるかどうかは、個別の判断になります。税理士・税務署にご確認ください。
相続登記は、いつまでにしますか?
相続登記は、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請します(不動産登記法76条の2第1項)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料が科される場合があります(同法164条1項)。
令和6年(2024年)4月1日より前に相続した不動産で登記が済んでいない場合は、令和9年(2027年)3月31日までに登記します(法務省)。
- 遺産分割で法定相続分を超えて取得した場合は、遺産分割の日から3年以内に登記します(同法76条の2第2項)。
- 遺産分割が決まらないときは、相続人申告登記を申し出れば、3年の義務を果たしたものとみなされます(同法76条の3第2項)。ただし、売却には遺産分割に基づく相続登記が別に必要です。
3,000万円控除は、いつまでの売却が対象ですか?
被相続人居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除とは、相続した空き家や敷地を売ったとき、譲渡所得から最高3,000万円を差し引ける特例です(租税特別措置法35条3項、国税庁No.3306)。売却は、次の2つの期限の早い方までに行います。
| 期限 | 内容 |
|---|---|
| 相続開始から3年目の年末 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 制度の期限 | 平成28年4月1日から令和9年12月31日までの譲渡 |
令和10年(2028年)以降への延長は、2026年10月17日時点で決まっていません。国土交通省は、令和9年度税制改正要望(令和8年8月)で、適用期限を令和13年12月31日まで4年間延ばすことなどを求めています。
そのほかの主な要件は、次のとおりです。詳細は相続した家を売るときの税金と判定ツールで解説しています。
- 昭和56年5月31日以前に建築された、区分所有でない家で、相続の直前に被相続人が一人で住んでいた(老人ホーム入所の特例あり)。
- 売却代金が1億円以下で、相続後に事業・貸付・居住に使っていない。
- 令和6年1月1日以後の譲渡で、家屋と敷地を取得した相続人が3人以上のときは、1人2,000万円まで。
- 取得費加算の特例とは併用できない(国税庁No.3306)。
取得費加算の期限はいつですか?
取得費加算の特例とは、相続税を払った人が相続した財産を売るとき、払った相続税の一部を取得費に足せる特例です(租税特別措置法39条)。売却は、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに行います(国税庁No.3267)。相続開始からおよそ3年10か月が目安です。相続税が課されていない場合は、使えません。
自分の場合の期限は、いつになりますか?
死亡日が分かれば、各期限の日付を計算できます。次の表は、本サイトの計算によるモデルケース(見本の数字)です。
ケースA:令和8年(2026年)8月20日に亡くなり、その日に知った。売却は2027年9月30日を予定。
| 期限 | 日付 | 計算 |
|---|---|---|
| 相続放棄の申述 | 2026年11月20日(金) | 8月20日の3か月後 |
| 相続税の申告・納税 | 2027年6月21日(月) | 10か月後は6月20日(日)。日曜のため翌日 |
| 相続登記 | 2029年8月20日(月) | 3年後 |
| 3,000万円控除の売却期限 | 2027年12月31日(金) | 年末の期限は2029年12月31日だが、制度の期限が先 |
| 取得費加算の売却期限 | 2030年6月21日(金) | 申告期限6月21日の3年後 |
| 売却翌年の確定申告 | 2028年2月16日〜3月15日 | 国税庁No.2020 |
ケースB:令和5年(2023年)8月20日に亡くなり、その日に知った。登記は未了。売却は2026年11月30日を予定。
| 期限 | 日付 | 計算 |
|---|---|---|
| 相続登記 | 2027年3月31日(水) | 令和6年4月1日より前の相続の経過措置 |
| 3,000万円控除の売却期限 | 2026年12月31日(木) | 相続開始から3年目の年末。制度の期限より先 |
| 相続放棄 | 2023年11月20日(月)で終了 | すでに過ぎている |
ケースBは、2026年10月17日時点で、3,000万円控除の期限まで75日です。譲渡所得の収入の計上時期は、原則として引渡しがあった日で、納税者の選択により契約の効力発生日にもできます(所得税基本通達36-12)。空き家特例の期限判定への当てはめは国税庁No.3306に記載がないため、期限が近い場合は税務署に確認します。
あなたの日付は、相続した家の期限カレンダーで計算できます。
売るまでの間、空き家の管理は何をしますか?
売る・貸す・手放すを決めるまでの間は、空き家を壊さず、貸し出さず、現状を保つ方が、選択肢が残ります。3,000万円控除は、相続後に貸付や事業に使うと対象外になります(国税庁No.3306)。
- 固定資産税:毎年1月1日時点の所有者に、1年分が課税されます。年の途中で売却しても、その年の納税義務は残ります(名古屋市のFAQ)。
- 更地にする場合:家屋がなくなると、住宅用地の特例が外れます。特例は、200㎡以下の部分が課税標準の6分の1、超える部分が3分の1です(地方税法349条の3の2)。特例が外れた最初の年に、税額はほぼ一気に上がります(地方税法附則18条の3)。詳しくは更地にしたときの固定資産税で計算しています。
- 管理不全空家・特定空家:市区町村の勧告を受けると、その敷地は住宅用地の特例の対象外になります(地方税法349条の3の2)。
年間の維持管理費は、国土交通省の「空き家所有者実態調査」(令和6年版)で次のとおりです(対象:全国の空き家、N=1,381千戸)。調査の用語の説明では、維持管理に要する費用に、管理委託料、電気・ガス・水道などの契約費用、空き家までの交通費、税金などが含まれます。
| 年間の維持管理費用 | 割合 |
|---|---|
| かかっていない | 12.1% |
| 1万円未満 | 10.6% |
| 1〜3万円 | 14.1% |
| 3〜5万円 | 11.0% |
| 5〜10万円 | 15.6% |
| 10〜20万円 | 16.7% |
| 20〜30万円 | 8.5% |
| 30万円以上 | 8.5% |
| 不明 | 2.9% |
5万円未満の合計は47.8%、中央値の区分は5〜10万円です(本サイト算出)。空き家の火災保険の条件や保険料について、公的な統計はありません。契約中の保険会社に確認してください。
空き家の出口は、どんな選択肢がありますか?
出口は7つあります。仲介売却、買取、賃貸、土地活用、解体して更地、国庫帰属、相続放棄または持ち続ける、です。どれを選ぶかは、物件の状態と、手放したい時期で変わります。あなたのケースは診断で確認できます。
| 出口 | 向くケース | 期限・費用の要点 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| ① 仲介で売る | 買主が見込める | 3,000万円控除は2027年12月31日までの売却が対象。仲介手数料に上限あり | 売る |
| ② 買取業者に売る | 早く現状のまま手放したい | 価格は仲介より低くなる傾向 | 買取と仲介 |
| ③ 貸す | 立地と需要がある | 貸付を始めると、3,000万円控除は使えない | 活かす |
| ④ 土地活用 | 土地に需要がある | 収支の前提を確認する | 活かす |
| ⑤ 解体して更地 | 建物の価値がない | 住宅用地の特例が外れる。解体費は譲渡費用になる場合がある | 解体 |
| ⑥ 国庫帰属 | 売れない土地 | 手数料1筆14,000円+負担金。建物があると不可 | 国庫帰属 |
| ⑦ 相続放棄・持ち続ける | 相続しない/当面持つ | 放棄は3か月。持つ場合は固定資産税・管理費 | 保有コスト |
物件が新潟県にある場合は、姉妹サイトの新潟 実家じまいナビ(運営:株式会社Kogera)が、地域の情報をまとめています。
相続人が複数いるとき、何を決めますか?
相続人が複数いる場合は、誰が名義人になり、誰が売るかを先に決めます。共有物の変更には他の共有者の同意が必要で(民法251条1項)、全体を売るには共有者全員の同意が原則です。詳しくは共有名義の実家を売るで解説します。
- 売却の前提:遺産分割に基づく相続登記が必要です。分割が決まらない間は、相続人申告登記で3年の義務を果たせます。
- 売って分ける方法:不動産を売って代金を相続人で分けます(換価分割)。誰が名義人で売るかで、3,000万円控除を使える人数が変わる場合があります。進める前に税理士に確認してください。
- 確認書:3,000万円控除を使うには、市区町村が交付する確認書が必要です。共有の場合は相続人ごとに申請します(被相続人居住用家屋等確認書)。
税額や控除の使い方は、個別の事情で変わります。最終判断は、税理士・税務署にご確認ください。
この記事で使える計算ツール
計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。
よくある質問
空き家を相続したら、最初に何をすればいいですか?
期限の日付を出すことです。相続放棄は知った時から3か月、相続税の申告は知った日の翌日から10か月、相続登記は取得を知った日から3年です。3,000万円控除を使うなら、売却は2027年12月31日までです。
相続放棄の3か月を過ぎたら、もう放棄できませんか?
原則として、できません。3か月以内に判断できないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます(民法915条1項ただし書)。個別の事情は、家庭裁判所・専門家にご確認ください。
相続登記をしないと、どうなりますか?
正当な理由なく期限内に申請しないと、10万円以下の過料が科される場合があります(不動産登記法164条1項)。また、登記をしないと、売却などの手続きが進みません。
空き家を相続して売らずに持っていると、何がかかりますか?
固定資産税と、管理のための費用がかかります。維持管理費の公的調査では、5万円未満が47.8%、5〜10万円が15.6%でした(国土交通省、令和6年版)。
実家が遠くて管理できないときは、どうしますか?
この記事の根拠
- 民法(明治29年法律第89号)140条・143条・251条・915条・939条・940条(確認日 )
- 裁判所:相続の放棄の申述(確認日 )
- 国税庁タックスアンサー No.4205 相続税の申告と納税(確認日 )
- 国税通則法10条(期間の計算及び期限の特例)(確認日 )
- 不動産登記法76条の2・76条の3・164条(確認日 )
- 法務省:相続登記の申請義務化に関するQ&A(確認日 )
- 国税庁タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(確認日 )
- 国税庁タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(確認日 )
- 租税特別措置法35条・39条(確認日 )
- 国税庁タックスアンサー No.2020 確定申告(確認日 )
- 地方税法349条の3の2・359条(住宅用地の特例・賦課期日)(確認日 )
- 国土交通省:空き家所有者実態調査(令和6年版)図表4-74・用語の説明(確認日 )
- 法務省:相続土地国庫帰属制度の概要(確認日 )
- 国土交通省 令和9年度税制改正要望事項(令和8年8月)(確認日 )
- 国税庁 所得税基本通達36-12(山林所得又は譲渡所得の総収入金額の収入すべき時期)(確認日 )
日付の計算例は、本サイトによる計算です。国税庁の記載は令和8年4月1日現在法令等、民法などの条文はe-Gov法令検索の現行条文です。地方税法と空き家所有者実態調査は、2026年10月16日にも確認しました。出典は上の一覧のとおりです。
この記事は一般的な情報です。個別の税務相談や、不動産取引の判断に代わるものではありません。更新日:2026年10月17日。