第3章 判断|最初にやること
相続した実家の家族会議シート(エクセル無料):売る・貸す・持ち続けるを家族で決める
相続した実家の家族会議は、基本情報、一人ずつの希望、7つの出口の比較、決めたこと、期限の順に進めます。入力できる無料エクセルを用意しました。
- 家族会議は、基本情報の確認、一人ずつの希望、7つの出口の比較、決めたこと・次にやること、期限の確認の5つを、この順に進めます。5枚のシートに、それぞれ対応しています。
- 期限は4つです。相続放棄は知った日から3か月、相続税の申告は10か月、相続登記は3年、3,000万円控除は相続開始から3年目の年末と2027年12月31日の早い日です。
- 意見が分かれたら、決めない理由を整理して、次の会議の日を決めます。決めない間も、固定資産税と期限は進みます。
このシートは、何のためのものですか?
家族会議シートは、相続した実家をどうするかを、家族が同じ紙の上で決めるための表です。当サイトの完全ガイドブックの付録(p.30)にある、書き込み式の家族会議シートを、エクセルで入力できる形にしたものです。
ガイドブックの付録は、印刷して手で書き込みます。エクセルの版は、次の点が違います。
| 違い | エクセルの版 |
|---|---|
| 希望の集計 | 一人ずつの希望を選ぶと、人数が自動で集計され、全員の希望が同じかが出る |
| 期限の計算 | 亡くなった日を入れると、4つの期限の日付と曜日、残り日数が出る |
| 出口の比較 | 7つの出口に、制度のルール(期限・費用)の要点をあらかじめ載せてある |
| 決めたことの管理 | 担当・期限・状況(未着手・進行中・済)を選べて、済の数が出る |
| シート | 内容 |
|---|---|
| 1. 基本情報 | 所在地、名義、登記の状況、相続人の人数、建築年、固定資産税、現況など18項目 |
| 2. 一人ずつの希望 | 住みたい・売りたい・貸したい・まだ決めない・その他の選択、理由・条件、負担できる費用 |
| 3. 7つの出口の比較 | 売る・買取・貸す・活用・解体・国庫帰属・持ち続けるの費用・期間・手間・家族の意見 |
| 4. 決めたこと・次にやること | 議題ごとの決定、次の作業、担当、期限、状況 |
| 5. 期限の早見 | 相続放棄・相続税・相続登記・3,000万円控除の日付 |
全シートがA4で印刷できます。1枚目の上に、出典と作成日を入れています。
家族会議は、どの順番で進めますか?
家族会議は、資料を集める準備、基本情報の確認、一人ずつの希望、出口の比較、決めたことの確認の順に進めます。希望を言い合う前に、事実をそろえると、話が感情に流れにくくなります。
| 順番 | することと使うシート |
|---|---|
| 準備 | 課税明細書、登記事項証明書(法務局)、遺言書の有無を集める。全員に日時を知らせる |
| 1. 基本情報 | 「1.基本情報」を埋める。わからない欄は、確認先を宿題にする |
| 2. 希望 | 「2.一人ずつの希望」を、会議の前に各自が書いておく。当日は、全員の分を並べて読む |
| 3. 出口の比較 | 「3.7つの出口の比較」で、見積りや査定が取れた出口から埋める。取れていない出口は、取る人と期限を決める |
| 4. 決める | 「4.決めたこと」に、決めたこと・担当・期限を書き、読み上げて確かめる |
| 5. 期限 | 「5.期限の早見」で日付を確かめ、期限までに決めることを逆算する |
名義人が複数になる場合は、全員の同意が必要になる場面があります。共有物に変更を加えるには、他の共有者の同意が要ります(民法251条1項)。実家全体を売る場合の同意は、共有名義の実家を売るで扱っています。会議の前に、名義と登記の状況(相続登記が済んでいるか)を確かめます。登記の期限は売る前の相続登記に整理しています。
シートの各欄には、何を書きますか?
各欄には、わかる範囲の事実と、一人ずつの希望を書きます。最も差が出るのは、「基本情報」と「7つの出口の比較」です。
基本情報には、何を確かめておきますか?
基本情報で確かめるのは、名義、亡くなった日、建築年、固定資産税、現況の5点です。この5点で、使える特例と、かかる費用の見通しが変わります。
| 項目 | 確かめる理由 | 確認先 |
|---|---|---|
| 亡くなった日 | 期限の起算に使う | 戸籍、死亡診断書の控え |
| 名義の登記の状況 | 売る・国庫帰属の前提。相続登記は3年以内の義務 | 登記事項証明書(法務局) |
| 建築年 | 3,000万円控除は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家屋が要件の一つ | 登記事項証明書(建物) |
| 固定資産税・都市計画税 | 持ち続ける費用の基準 | 毎年の課税明細書 |
| 現況(空き家・貸している) | 貸している場合、3,000万円控除の要件を満たさなくなる | 現地・家族 |
| 相続人の人数 | 3人以上のとき、控除は1人あたり2,000万円まで(2024年1月1日以後の譲渡) | 戸籍 |
3,000万円控除のほかの要件は、区分所有建物でないこと、相続開始の直前に亡くなった方以外に住んでいた人がいないこと、売却代金が1億円以下であること、親子や夫婦などに売ったものでないことです(国税庁 No.3306)。あなたの家が対象かは、3,000万円控除の判定ツールで確かめられます。
7つの出口の比較には、何を書きますか?
7つの出口の比較には、出口ごとの費用・期間・手間・家族の意見を書きます。費用は、売る場合は税と費用を引いた手取り、持ち続ける場合は10年の維持費など、同じ基準で書きます。
| 出口 | 向くとき | 期限・費用の要点 |
|---|---|---|
| 売る(仲介) | 買い手が見込め、市場の価格で売りたい | 3,000万円控除を使うなら、売る期限がある。800万円以下の低廉な空家等は、仲介手数料が30万円(税別)まで |
| 買取業者に売る | 早く、現状のまま手放したい | 仲介より価格は低くなる傾向。複数社の査定を同じ条件で比べる |
| 貸す | 傷みが軽く、借り手が見込める | 3,000万円控除は使えなくなる。収支は貸す収支シミュレーション |
| 活用する | 土地の需要を確かめた | 公的な収益の統計はない。複数のプランで比べる |
| 解体する | 建物に価値がなく、更地が売れる | 住宅用地の特例が外れ、土地の固定資産税が上がる(地方税法349条の3の2) |
| 国庫帰属 | 売れない・使わない土地を手放したい | 審査手数料1筆14,000円、負担金は原則20万円。建物がある土地は申請できない。共有の土地は全員で申請 |
| 持ち続ける | 使う予定がある、決めるまで時間が要る | 固定資産税と管理費が続く。勧告を受けると敷地の特例が外れる(空家法13条・22条) |
標準処理期間は、国庫帰属が8か月です(法務省)。あなたのケースで比べるには、診断が使えます。
期限は、いつまでですか?
期限は、相続放棄が知った日から3か月、相続税の申告が10か月、相続登記が3年、3,000万円控除が相続開始から3年目の年末と2027年12月31日の早い日です。亡くなった日を入れると、シートが日付を出します。
| 期限 | 数え方 | 根拠 |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内 | 民法915条1項 |
| 相続税の申告 | 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内 | 相続税法27条1項 |
| 相続登記 | 相続で取得したことを知った日から3年以内。2024年(令和6年)4月1日より前に知った未登記の不動産は、2027年(令和9年)3月31日まで。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料 | 不動産登記法76条の2・164条、法務省 |
| 3,000万円控除 | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日と、制度の適用期間の終わり(2027年12月31日)の早い日 | 租税特別措置法35条3項、国税庁 No.3306 |
モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。 2026年8月20日に亡くなり、その日にすべて知った場合です。
| 期限 | 日付 | 計算 |
|---|---|---|
| 相続放棄 | 2026年11月20日(金) | 8月20日の3か月後 |
| 相続税の申告 | 2027年6月21日(月) | 10か月後は6月20日(日)で、国税は翌日 |
| 相続登記 | 2029年8月20日(月) | 3年後 |
| 3,000万円控除 | 2027年12月31日(金) | 3年目の年末は2029年12月31日だが、制度の期限が先 |
シートの計算は、祝日を考慮しません。相続税の申告のように、土曜・日曜・祝日に当たると翌日以後の最初の平日になる期限(国税通則法10条2項)は、曜日が「日」「土」と出たときに注意します。相続放棄と相続登記の休日の扱い、取得費加算などは、期限カレンダーで確かめてください。3,000万円控除の延長は、2028年以降は決まっていません。
相続登記が3年以内に間に合わないときは、相続人申告登記という簡易な方法があります。申出をした相続人だけが、相続登記の義務を果たしたとみなされます(不動産登記法76条の3、法務省)。売るときは、改めて相続登記が要ります。
意見がまとまらないときは、どう考えますか?
意見がまとまらないときは、まとまらない理由を「お金」「手間」「思い出」「公平さ」のどれかに分けて書き、次の会議の日を決めます。決めることを、期限があるものから順に絞ります。
- 期限があるものを先に決める:相続放棄の判断と、相続登記を誰が進めるかです。売る期限がある場合は、その日から逆算します。
- 現状を保つ選択がある:売る・貸す・手放すを決めるまでは、壊さず、貸さず、現状を保つほうが選択肢が残ります。貸すと3,000万円控除は使えず、壊すと土地の固定資産税が上がります。
- 決めない間のコストを数字で見る:固定資産税や管理費は、毎年かかります。保有コストの試算で、年と10年の合計を見ます。
- 見回りの分担を決める:持ち続ける間は、見回りを誰がするか決めます。管理チェックリストを共有できます。
国庫帰属は、共有の土地では共有者全員で申請します。共有者のうち誰かの同意が得られない場合、その土地は申請できません(相続土地国庫帰属法2条2項、法務省)。遺産分割協議そのものや、相続手続き全般の進め方は、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)が扱っています。売って代金を分ける方法は、換価分割に整理しています。
会議のあとは、何をしますか?
会議のあとは、決めたことを全員に共有し、担当ごとに期限までに動きます。口頭の約束だけで終わらせず、シートの「決めたこと」を全員に送ります。
- 「4.決めたこと・次にやること」を全員に送り、内容に違いがないか確かめてもらう。
- 担当ごとに、期限と状況(未着手・進行中・済)を更新する。
- 次の会議の日に、状況が「済」になった数を確かめる。
- 方向が決まったら、出口ごとの記事に進む。相続直後の全体の順番は相続したら最初にやることにあります。
この記事で使える計算ツール
ご自分の数字で、記事の内容を計算できます。入力した数字は、どこにも送信しません。
よくある質問
相続した実家の家族会議は、何を決めればよいですか?
家の方向(売る・貸す・持ち続けるなど)、窓口になる人、期限までの作業の分担、費用の負担の4つです。期限が先に来るものから決めます。
実家の相続で、期限が過ぎたらどうなりますか?
手続きにより異なります。相続登記は、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法164条1項)。3,000万円控除は、期限後の売却では使えません。相続放棄は、家庭裁判所・専門家にご確認ください。
兄弟で意見が割れたまま、実家を貸したり壊したりしてよいですか?
共有物に変更を加えるには、他の共有者の同意が要ります(民法251条1項)。貸す・壊すは、3,000万円控除や固定資産税にも影響するため、決める前に全員で確かめます。
ガイドブックの家族会議シートとの違いは何ですか?
ガイドブックの付録(p.30)は、印刷して手で書く版です。このエクセルは、希望の集計、期限の自動計算、7つの出口の制度のルールの要点が加わった、入力できる版です。
この記事の根拠
- 民法251条(共有物の変更)・915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 相続税法27条(相続税の申告書)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 不動産登記法76条の2・76条の3・164条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(確認日 )
- 国税通則法10条(期間の計算及び期限の特例)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 租税特別措置法35条(居住用財産の譲渡所得の特別控除)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(確認日 )
- 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律2条・10条、同法施行令3条・5条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 法務省「相続土地国庫帰属制度に関するQ&A」(審査手数料、負担金、標準処理期間、共有地、建物がある土地)(確認日 )
- 地方税法349条の3の2(住宅用地の特例)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 空家等対策の推進に関する特別措置法13条・22条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(800万円以下の低廉な空家等の特例)(確認日 )
最終更新:2026年10月25日。制度の内容は2026年10月時点の法令と公表資料です。
- 民法、相続税法、不動産登記法、相続土地国庫帰属法と同施行令、地方税法、空家法(e-Gov法令検索)、法務省の相続登記・国庫帰属のQ&A、国税庁 No.3306、国土交通省の媒介報酬の資料(2026年10月25日確認)
見本の数字は、実在の事例ではありません。この記事は一般的な情報です。個別の事案は、司法書士・税理士・弁護士・税務署にご確認ください。