第6章 持ち続ける|持ち続ける

空き家を持ち続けるコスト:固定資産税・特定空家・管理の費用

空き家の維持費は国交省の調査で年10万〜20万円未満が最多です。管理不全空家等・特定空家等の勧告を受けると、土地の固定資産税の特例が外れます。

  • 国土交通省の調査(令和6年)では、年間の維持管理費用は10万〜20万円未満が約17%で最多です。5万円未満が約5割で、税金も含みます。
  • 管理不全空家等・特定空家等として市町村の勧告を受けると、住宅用地の特例が外れます。命令に従わないと、50万円以下の過料です。
  • 持ち続けてよいのは、使う予定があるか、管理を続けられる場合です。そうでなければ、出口を比べます。

公開 /更新 /執筆・編集:実家の手引き 編集部(運営者情報)

空き家の維持費は国交省の調査で年10万〜20万円未満が最多です。管理不全空家等・特定空家等の勧告を受けると、土地の固定資産税の特例が外れます。

更新日:2026年(令和8年)10月17日。

空き家を持ち続けると、毎年いくらかかりますか。

国土交通省の調査では、年間の維持管理費用は「10万〜20万円未満」が約17%で最も多く、5万円未満が合わせて約5割です。この費用には固定資産税などの税金を含みます。

維持管理費用の公的な調査結果は、どうなっていますか。

維持管理費用とは、国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」の定義で、建物と敷地の維持管理に要する年間の費用です。管理委託料、電話・ガス・水道等の契約費用、空き家までの交通費、税金などを含みます。

年間の維持管理費用の分布(対象約138万戸、令和7年8月公表)は、次のとおりです。

維持管理費用の公的な調査結果は、どうなっていますか。
年間の費用 割合
費用はかかっていない 12.1%
1万円未満 10.6%
1万〜3万円未満 14.1%
3万〜5万円未満 11.0%
5万〜10万円未満 15.6%
10万〜20万円未満 16.7%
20万〜30万円未満 8.5%
30万円以上 8.5%
不明 2.9%

出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」図表4-74。5万円未満の合計は47.8%です。

同じ調査で、空き家の取得方法は「相続」が約58%でした。建築時期が1950年以前の空き家では、相続が約79%です。相続した家の維持費は、多くの人にとって身近な問題です。

費用の内訳は何ですか。

費用の内訳は、税、管理、保険・光熱費、修繕に分かれます。公的な代表値があるのは税の計算式と、一部の管理サービスの料金です。

費用の内訳は何ですか。
項目 金額の考え方 根拠・出典
固定資産税・都市計画税 課税明細書の評価額から計算(次の節) 地方税法
管理サービス 日本郵便「郵便局の空き家みまもり」は月4,280円(税込)、年51,360円。月1回訪問、写真付き報告(2026年10月17日確認) 日本郵便
火災保険 公的な統計や目安は公表されていません。契約中の保険料で確認します —
光熱費の基本料金 公的な統計や目安は公表されていません。契約内容で確認します —
修繕・草刈りなど 家の状態と立地で大きく違い、公的な統計はありません。実績や見積りで確認します —

自分の数字は、保有コストの試算に課税明細書の金額と、契約中の保険・光熱費を入れて、年と10年の合計を確認できます。

空き家の固定資産税・都市計画税は、いくらですか。

固定資産税は「課税標準額×1.4%」で、住宅用地は特例で課税標準額が小さくなります。評価額1,500万円の土地と200万円の家屋(市街化区域内)の見本では、年84,000円です。

どう計算しますか。

税の仕組みは、次のとおりです。

どう計算しますか。
項目 内容 根拠
固定資産税の標準税率 1.4% 地方税法350条1項
都市計画税 税率の上限は0.3%。原則、市街化区域内の土地・家屋 地方税法702条の4、702条
賦課期日 毎年1月1日 同359条
免税点 土地30万円、家屋20万円(同じ市町村内の合計の課税標準額)。固定資産税が免税点未満のものには、都市計画税もかからない 同351条、702条の2第2項、和歌山県の案内
小規模住宅用地(200㎡以下の部分) 固定資産税は価格の6分の1、都市計画税は3分の1 同349条の3の2第2項、702条の3
一般住宅用地(200㎡を超える部分) 固定資産税は価格の3分の1、都市計画税は3分の2 同349条の3の2第1項、702条の3

モデルケース(見本の数字)

条件は、土地150㎡、固定資産税評価額(価格)1,500万円、家屋の評価額200万円、市街化区域内、固定資産税率1.4%、都市計画税率0.3%としました。実在の物件の数字ではありません。

モデルケース:見本の数字|モデルケース(見本の数字)
項目 計算 年額
土地の固定資産税 1,500万円 × 1/6 × 1.4% 35,000円
土地の都市計画税 1,500万円 × 1/3 × 0.3% 15,000円
家屋の固定資産税 200万円 × 1.4% 28,000円
家屋の都市計画税 200万円 × 0.3% 6,000円
合計 84,000円

これに管理サービス(年51,360円)を加えると、年135,360円です。国土交通省の調査では、10万〜20万円未満の区分に入ります。見本の数字は、調査の最多帯と近い水準です。

管理不全空家等・特定空家等とは何ですか。どう違いますか。

特定空家等とは、倒壊の危険や衛生上の有害などがある空家等です。管理不全空家等とは、放置すれば特定空家等になるおそれがある空家等です。どちらも空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法、国土交通省・総務省所管)が定めます。

空家等とは、建築物またはこれに附属する工作物で、居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの、およびその敷地です(空家法2条1項)。

管理不全空家等・特定空家等とは何ですか。どう違いますか。
区分 定義 条文
特定空家等 倒壊等著しく保安上危険となるおそれ、著しく衛生上有害となるおそれ、適切な管理が行われていないことによる著しい景観の阻害、その他周辺の生活環境の保全のために放置が不適切な状態 2条2項
管理不全空家等 適切な管理が行われていないことで、そのまま放置すれば特定空家等に該当するおそれのある状態の空家等 13条1項

2023年(令和5年)12月13日に施行された改正空家法で、管理不全空家等への指導・勧告が加わりました(国土交通省資料)。

勧告から代執行までの流れはどうなっていますか。

手順は、指導(管理不全空家等)または助言・指導(特定空家等)、勧告、命令、代執行です。命令と代執行は特定空家等だけが対象です。

勧告から代執行までの流れはどうなっていますか。
段階 管理不全空家等 特定空家等
助言・指導 指導(13条1項) 助言・指導(22条1項)
勧告 指導後も改善されず、特定空家等になるおそれが大きいとき(13条2項) 助言・指導後も改善されないとき(22条2項)
命令 なし 勧告に従わないとき、特に必要がある場合(22条3項)
代執行 なし 命令を履行しない場合など(22条9項、行政代執行法)

命令に違反した者は、50万円以下の過料です(空家法30条1項)。代執行は、行政代執行法に従って市町村が行います(空家法22条9項)。過失なく所有者が分からない場合は、市町村が命令対象者の負担で措置を行う手続きがあり(同条10項)、費用の徴収には行政代執行法5条・6条が準用されます(同条12項)。

所有者には、周辺の生活環境に悪影響を及ぼさないよう空家等の適切な管理に努める責務があります(空家法5条)。

勧告を受けると、固定資産税はいくらになりますか。

勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地は、住宅用地から除かれ、特例が外れます(地方税法349条の3の2第1項)。見本の土地では、土地の税が年50,000円から、特例が外れた最初の年に153,000円〜178,500円になります。

特例が外れる仕組みは何ですか。

地方税法349条の3の2第1項は、空家法13条2項の勧告を受けた管理不全空家等と、同法22条2項の勧告を受けた特定空家等の敷地を、住宅用地から除くと定めています。1月1日現在の状態で課税が決まります(同359条)。

勧告がなくても、賦課期日に「居住の用に供するために必要な管理を怠っている」などで、今後人が住む見込みがないと客観的に認められる家屋の敷地は、住宅用地の特例の対象になりません。総務省の通知(平成27年5月26日)に基づく扱いで、国土交通省・総務省の事務連絡(令和3年3月30日)が、運用する市町村の例を紹介しています。

見本で、10年間の税額はどう変わりますか。

特例が外れた最初の年は、前年度課税標準額が、前年度の価格に、市町村内で前年度も住宅用地以外だった土地の平均的な負担水準を掛けた額とみなされます(地方税法附則18条の3)。そのため、税額は最初の年から、その平均の水準まで一気に上がります。

負担水準とは、前年度課税標準額を今年度の価格で割った割合です。みなされた額をもとに、次の負担調整に入ります(附則18条、堺市・横浜市の案内)。

モデルケース:見本の数字|見本で、10年間の税額はどう変わりますか。
負担水準 今年度の課税標準額
70%超 価格の70%
60%以上70%以下 前年度と同額(据え置き)
60%未満 前年度の額+価格の5%(上限は価格の60%)

市町村内の平均の数値は、公表資料では確認できていません。市町村の資産税課に確認してください。見本は、平均が60%の場合と70%の場合の2通りで示します。条例で上限を70%未満にしている市町村では、70%の列より低くなります(附則21条)。

前のモデルケースと同じ条件で、評価額は10年間変わらないとしました。実在の物件の数字ではありません。固定資産税と都市計画税の割合は、同じとしています。

モデルケース:見本の数字|見本で、10年間の税額はどう変わりますか。
年 通常(特例あり) 勧告で特例が外れた場合(平均60%) 勧告で特例が外れた場合(平均70%)
勧告後1年目 84,000円 187,000円 212,500円
2年目以降 84,000円 187,000円 212,500円
10年間の合計 840,000円 1,870,000円 2,125,000円

10年間で1,030,000円〜1,285,000円の差です。内訳は、土地の固定資産税と都市計画税が、50,000円から153,000円(平均60%)または178,500円(平均70%)に上がる分です。家屋の税34,000円は変わりません。2年目以降は、価格が変わらなければ、負担水準が60%〜70%の間にあるため据え置かれます。評価替えで価格が変わると、額も動きます。

「特定空家の固定資産税は6倍」という表現は、6分の1の課税標準が価格の本則に戻るという比較です。課税標準は価格の70%が上限のため、見本では土地の税が約3.1倍〜3.6倍です。更地にした場合の計算は、更地にすると固定資産税はいくら上がる?にあります。

勧告を受ける前に、修繕や草木の伐採を行い、市町村の指導に対応してください。勧告が撤回された場合の特例の扱いは、自治体ごとに運用が異なる場合があるため、市町村の固定資産税担当課に確認してください。

空き家が原因で被害が出たら、誰が責任を負いますか。

土地の工作物の設置または保存に瑕疵があって他人に損害を生じたときは、まず占有者が賠償します。占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者が賠償しなければなりません(民法717条1項)。

つまり、占有者が注意を尽くしていても、所有者は責任を免れません。外壁や屋根の落下、塀の倒壊などが考えられます。樹木の場合も同様に、竹木の栽植または支持に瑕疵があるときに、この責任が準用されます(同条2項)。

損害の原因について他に責任を負う者がいるときは、占有者または所有者は、その者に求償できます(同条3項)。

空き家を持ち続けてよいのは、どんなときですか。管理はどうしますか。

持ち続けてよいのは、使う予定が具体的にあるか、管理と費用を続けられる場合です。国土交通省の調査では、今後5年程度の利用意向で「空き家として所有しておく」が約32%と最も多くなっています。

空き家を持ち続けてよいのは、どんなときですか。管理はどうしますか。
持ち続けてよいケース 持ち続けるのが向かないケース
家族が住む・セカンドハウスなど、使う予定が具体的にある 使う予定がなく、管理のたびに遠方から通う
売却や活用の準備中で、期限(3,000万円控除など)に余裕がある 傾きや雨漏りなど、傷みが進んでいる
近くの家族や管理サービスで、月1回程度の管理を続けられる 税と管理費が負担になっている
税と管理費が、年間の収入と貯蓄で無理なく払える 勧告や指導を受けた

同じ調査で、管理をする上での課題は「管理の作業が大変」が約32%、「利用する予定がないので管理しても無駄になる」が約27%でした。管理者がいる空き家では、月1回以上管理している世帯が約7割です。

管理の基本は、次の4つです。

  1. 換気・通水・郵便物の確認を、月1回を目安に行います。
  2. 屋根・外壁・塀・樹木の状態を見て、写真を残します。
  3. 草木を伐採し、ごみの不法投棄を防ぎます。
  4. 管理サービスを使う場合は、訪問頻度と報告内容、費用を確認します。

相続した家は、相続登記も必要です。所有権の取得を知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の2、164条)。

3,000万円控除の期限は、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日で、制度の適用は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です。期限の計算は期限カレンダー、要件は3,000万円控除の解説で確認できます。持ち続ける間に期限が過ぎないよう、日付を控えてください。

持ち続けるのをやめるなら、どんな出口がありますか。

出口は、売る、貸す・活用する、解体する、国に引き渡す、の4つです。費用と期限で比べます。

持ち続けるのをやめるなら、どんな出口がありますか。
出口 向く状況 参照
売る 買い手が見つかり、手取りが確認できる 売却
貸す・活用する 傷みが軽く、借り手が見込める 貸す・活用する
解体して更地にする 倒壊のおそれがある、国庫帰属の前提 解体
相続土地国庫帰属制度 売れない土地で、要件を満たす 国庫帰属

どれが自分に合うかは、診断で比較できます。全体の順番は相続した空き家の最初にやることにまとめています。

新潟県内の家は、地域に特化した姉妹サイト新潟 実家じまいナビ(運営:株式会社Kogera)もご覧ください。

この記事で使える計算ツール

計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。

よくある質問

空き家の維持費は年間いくらですか。

国土交通省の調査(令和6年)では、年10万〜20万円未満が約17%で最多、5万円未満が約5割です。固定資産税などの税金を含みます。

特定空家に指定されると、固定資産税はどうなりますか。

勧告を受けた特定空家等の敷地は、住宅用地の特例が外れます(地方税法349条の3の2)。見本の土地では、土地の税が年50,000円から、特例が外れた最初の年に153,000円〜178,500円になります。市町村内の平均的な負担水準が60%の場合と70%の場合の2通りです。

管理不全空家とは何ですか。

放置すると特定空家等になるおそれのある空家等です(空家法13条1項)。2023年12月13日施行の改正で加わり、勧告を受けると敷地の特例が外れます。

空き家を放置して命令を無視するとどうなりますか。

特定空家等の命令に違反すると、50万円以下の過料です(空家法30条1項)。命令を履行しない場合などは、市町村が行政代執行法に従って代執行を行えます(空家法22条9項)。

空き家の管理は自分でしなければいけませんか。

法律上、所有者等は適切な管理に努める責務があります(空家法5条)。管理は自分で行っても、管理サービスに委託してもかまいません。委託しても、所有者としての責任は残ります。

この記事の根拠

  1. 国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)(確認日 )
  2. 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(令和6年9月25日公表)(確認日 )
  3. 空家等対策の推進に関する特別措置法(平成26年法律第127号)2条・5条・13条・22条・30条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  4. 地方税法349条の3の2・350条・351条・359条・702条の2・附則17条・18条・18条の3・21条・25条の3(e-Gov法令検索)(確認日 )
  5. 横浜市「土地の負担調整措置(令和8年度)」(確認日 )
  6. 堺市「宅地の負担調整措置」(確認日 )
  7. 神戸市「空き家の敷地にかかる固定資産税」(確認日 )
  8. 国土交通省 住宅局「空家法と2023改正空家法」資料(確認日 )
  9. 国土交通省・総務省 事務連絡「空き家対策の推進を目的とした固定資産税の住宅用地特例に関する取組について」(令和3年3月30日)(確認日 )
  10. 民法717条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  11. 不動産登記法76条の2・164条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  12. 日本郵便「郵便局の空き家みまもり」(確認日 )
  13. 和歌山県「都市計画税」(固定資産税が免税点未満のものは都市計画税もかからない)(確認日 )
この記事の根拠
資料 内容 確認日
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月) 維持管理費用の定義と分布、取得方法、利用意向、管理の課題 2026-10-17
空家等対策の推進に関する特別措置法2条・5条・13条・22条・30条 定義、責務、勧告・命令・代執行、過料 2026-10-17
地方税法349条の3の2・350条・351条・359条・702条の2、附則18条・18条の3・21条 住宅用地の特例と勧告による除外、税率、免税点、賦課期日、特例が外れた年の前年度課税標準額と負担調整 2026-10-17
横浜市「土地の負担調整措置」令和8年度、堺市「宅地の負担調整措置」、神戸市「空き家の敷地にかかる固定資産税」 負担調整措置、用途変更があった土地の注記、特例解除後の税額の例 2026-10-17
国土交通省資料、国土交通省・総務省 事務連絡(令和3年3月30日) 改正空家法の施行日、住宅用地の認定 2026-10-17
民法717条、不動産登記法76条の2・164条 工作物責任、相続登記の義務と過料 2026-10-17
日本郵便「郵便局の空き家みまもり」 管理サービスの料金 2026-10-17

この記事は、公表資料と法令にもとづく一般的な情報です。個別の税務判断は税理士・税務署に、不動産の取引は宅地建物取引業者に確認してください。