第6章 持ち続ける|ツール

空き家の保有コスト計算:固定資産税・管理費を年と10年で

課税明細書の評価額を入れると、空き家の保有コストを年と10年で計算できます。勧告を受けた場合と更地にした場合の税額も比べられます。

  • 税額は、評価額・土地の面積・住宅用地の特例から計算します。見本の土地では、通常年84,000円です。
  • 勧告で特例が外れると、見本では10年間の税が1,030,000円〜1,285,000円増えます。更地にすると税は690,000円〜945,000円増え、別に解体費がかかります。
  • 結果は、国土交通省の調査の分布(10万〜20万円未満が最多)と照らして読みます。

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課税明細書の評価額を入れると、空き家の保有コストを年と10年で計算できます。勧告を受けた場合と更地にした場合の税額も比べられます。

更新日:2026年(令和8年)10月17日。税率と制度は2026年10月時点の条文にもとづきます。

空き家の保有コスト計算では、何がわかりますか。

保有コストとは、空き家を持ち続けるために毎年かかる税金と管理費の合計です。このツールは、通常の場合、勧告を受けた場合、解体して更地にした場合の3つを、年と10年で並べて計算します。

空き家の保有コスト計算では、何がわかりますか。
比べるもの 内容
通常(現状) 住宅用地の特例を受けた税と、保険・光熱費・管理費
勧告で特例が外れた場合 土地の特例が外れ、最初の年から税が上がる。家屋の税は続く
解体して更地にした場合 家屋の税がなくなり、土地の特例が外れて最初の年から税が上がる。解体費を入れる

「勧告」とは、管理不全空家等・特定空家等の所有者に、市町村長が必要な措置をとるよう求めるものです(空家法13条2項、22条2項)。仕組みは持ち続けるコストとリスクで説明しています。

何を入力すればよいですか。

入力するのは、毎年5月ごろ(自治体により異なります)に届く課税明細書または納税通知書の数字と、契約中の保険・光熱費です。見つからない欄は、空欄で計算できます。

何を入力すればよいですか。
入力項目 見つける場所・考え方
土地の固定資産税評価額(価格) 課税明細書の土地の「価格」または「評価額」
土地の面積(㎡) 課税明細書の「地積」
家屋の固定資産税評価額 課税明細書の家屋の「価格」または「評価額」
都市計画税の有無・税率 課税明細書に都市計画税の欄があれば「あり」。税率は上限0.3%(自治体ごとに異なる)
固定資産税の税率 標準は1.4%(自治体により異なる場合がある)
火災保険(年) 保険証券。公的な統計や目安は公表されていません
光熱費の基本料金(年) 電気・水道などの契約内容。休止や解約の可否は事業者ごとに違う
管理サービス(月額) 契約中の金額。参考:日本郵便は月4,280円(税込、月1回訪問)
草刈り・修繕・交通費(年) 実績の金額
解体費用(任意) 見積書の金額。目安は解体の記事(木造で坪3万〜5万円)

結果はどう読めばよいですか。

結果は、年の合計と10年の合計で見ます。通常の年額を、国土交通省の調査の区分に当てはめて、全国の傾向と比べられます。

国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」の年間の維持管理費用の分布(税金を含む)は、次のとおりです。

結果はどう読めばよいですか。
年間の費用 割合
費用はかかっていない 12.1%
1万円未満 10.6%
1万〜3万円未満 14.1%
3万〜5万円未満 11.0%
5万〜10万円未満 15.6%
10万〜20万円未満 16.7%
20万〜30万円未満 8.5%
30万円以上 8.5%
不明 2.9%

勧告時と更地は、特例が外れた最初の年から税が上がり、価格が変わらなければ2年目以降も同じ額が続くため、年を追って通常との差が開きます。更地の場合は、解体費を足した合計と、通常の合計がどの年で逆転するかも確認してください。

計算例:見本の土地では、通常・勧告時・更地の保有コストはいくらですか。

見本の土地(土地の評価額1,500万円、家屋の評価額200万円)では、10年間の総額は、通常が1,353,600円、勧告で特例が外れた場合が2,383,600円〜2,638,600円、解体して更地にした場合が2,730,000円〜2,985,000円(解体費120万円を含む)です。実在の物件の数字ではありません。

入力の例(モデルケース:見本の数字)
入力項目 入力の例
土地の固定資産税評価額 1,500万円
土地の面積 150㎡
家屋の固定資産税評価額 200万円
都市計画税 あり(税率0.3%、市街化区域内)
固定資産税の税率 1.4%
管理サービス 月4,280円(年51,360円)
保険・光熱費・草刈りなど 0円
解体費(更地の場合) 120万円(仮定)
特例が外れた後の平均的な負担水準 60%の場合と70%の場合
評価額 10年間変わらない
途中の計算(通常の年額の税)(モデルケース:見本の数字)
項目 計算 年額
土地の固定資産税 1,500万円 × 1/6(150㎡は200㎡以下) × 1.4% 35,000円
土地の都市計画税 1,500万円 × 1/3 × 0.3% 15,000円
家屋の固定資産税 200万円 × 1.4% 28,000円
家屋の都市計画税 200万円 × 0.3% 6,000円
通常の年額の税 上の4つの合計 84,000円

勧告で特例が外れた場合と更地にした場合は、特例が外れた最初の年から、土地の課税標準額が市町村内の平均的な負担水準まで上がります。地方税法附則18条の3が、前年度は住宅用地で当年度に住宅用地以外になった土地の前年度課税標準額を、前年度の価格に、市町村内で前年度も住宅用地以外だった土地の平均的な負担水準を掛けた額とみなすと定めているためです(都市計画税は附則25条の3)。

平均の数値は、公表資料では確認できていません。市町村の資産税課に確認してください。見本は、平均が60%の場合と70%の場合の2通りで示し、固定資産税と都市計画税で同じ割合としました。60%以上70%以下は据え置かれるため、価格が変わらなければ2年目以降も同額です。

途中の計算(特例が外れた後の土地の税)(モデルケース:見本の数字)
平均的な負担水準 固定資産税の課税標準額 都市計画税の課税標準額 土地の税(固定資産税1.4%+都市計画税0.3%)
60% 1,500万円×60%=900万円 900万円 126,000円+27,000円=153,000円
70% 1,500万円×70%=1,050万円 1,050万円 147,000円+31,500円=178,500円
結果(10年間の税と総額)(モデルケース:見本の数字)
項目 通常(現状) 勧告・平均60% 勧告・平均70% 更地・平均60% 更地・平均70%
毎年の税(1年目から同額) 84,000円 187,000円 212,500円 153,000円 178,500円
10年間の税の合計 840,000円 1,870,000円 2,125,000円 1,530,000円 1,785,000円
管理サービス(年51,360円)の10年合計 513,600円 513,600円 513,600円 0円 0円
解体費(仮に120万円) 0円 0円 0円 1,200,000円 1,200,000円
10年間の総額 1,353,600円 2,383,600円 2,638,600円 2,730,000円 2,985,000円

勧告時の税は、土地の税に、変わらない家屋の税34,000円(28,000円+6,000円)を足した額です。たとえば平均60%の場合は、153,000円+34,000円=187,000円です。更地の10年総額が最も大きいのは、解体費が先にかかるためです。更地は毎年の税が通常の年間コスト(135,360円)より高いため、更地の累計が通常の累計以下になる年は、10年以内にはありません。持ち続けない出口を取る場合は、10年分の税を払い続ける必要がありません。出口は解体・貸す・活用する・売却・国庫帰属で比べられます。

この計算の前提と限界は何ですか。

保有コスト計算は、条文と自治体の資料にもとづく簡易な試算です。実際の税額は、納税通知書で確認してください。

  • 評価額は3年ごとに見直されます。次回の評価替えは令和9年度です。計算は評価額を10年間同じとしています。
  • 負担調整措置の運用は自治体で異なる場合があります。特例が外れた最初の年の課税標準額は、市町村内の平均的な負担水準が60%または70%と仮定しています。平均が60%未満なら価格の5%ずつ上がり、70%を超えるなら価格の70%です。条例による減額(附則21条)は考慮していません。
  • 免税点(土地30万円、家屋20万円)は、同じ市町村内の同じ人の分の合計で判定されます。固定資産税が免税点未満なら、都市計画税もかかりません(地方税法702条の2第2項)。このツールは、入力した物件だけで判定します。
  • 農地・山林、市街化調整区域の土地は、評価と税の仕組みが違う場合があります。課税明細書で確認してください。
  • 火災保険と光熱費は、公的な統計や目安が公表されていません。契約中の金額を入れてください。
  • 個別の税務判断は、税理士・税務署にご確認ください。

計算フォーム

計算フォームは、本文の後に置く追加機能です。入力欄が動かない環境でも、本文の説明と静的な計算例で内容を確認できます。

よくある質問

空き家の固定資産税は、どこを見れば分かりますか。

毎年届く納税通知書と課税明細書で分かります。土地と家屋の評価額、課税標準額、税額が書かれています。税の基準日は毎年1月1日です(地方税法359条)。

勧告を受けると、いつから税が上がりますか。

勧告を受けた管理不全空家等・特定空家等の敷地は、住宅用地から除かれます(地方税法349条の3の2)。課税は1月1日の状態を基準にします。勧告後のどの年度の課税から反映されるかは、市町村の運用を確認してください。

更地にすると、税は6倍になりますか。

課税標準が価格の6分の1から本則の価格に戻る比較が「6倍」です。実際は、課税標準は価格の70%が上限で、見本の土地では土地の税が年50,000円から、特例が外れた最初の年に153,000円〜178,500円(約3.1倍〜3.6倍)になります。

解体費を入れると、持ち続けるより高くなりますか。

見本では、10年間の総額は更地が2,730,000円〜2,985,000円、通常が1,353,600円です。ただし、売却や国庫帰属などで10年持ち続けない場合は、比べ方が変わります。出口ごとに比べてください。

この記事の根拠

  1. 地方税法349条の3の2・350条・351条・359条・702条の2・702条の3・702条の4・附則17条・18条・18条の3・21条・25条の3(e-Gov法令検索)(確認日 )
  2. 横浜市「土地の負担調整措置(令和8年度)」(確認日 )
  3. 堺市「宅地の負担調整措置」(確認日 )
  4. 神戸市「空き家の敷地にかかる固定資産税」(確認日 )
  5. 空家等対策の推進に関する特別措置法13条・22条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  6. 国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)(確認日 )
  7. 日本郵便「郵便局の空き家みまもり」(確認日 )
  8. 和歌山県「都市計画税」(固定資産税が免税点未満のものは都市計画税もかからない)(確認日 )
  9. 三井のリハウス「解体費用の相場」(公開2025-05-14)(確認日 )
この記事の根拠
資料 内容 確認日
地方税法349条の3の2・350条・351条・359条・702条の2〜702条の4、附則18条・18条の3・21条・25条の3 住宅用地の特例、税率、免税点(都市計画税にも適用)、賦課期日、特例が外れた年の前年度課税標準額と負担調整 2026-10-17
横浜市「土地の負担調整措置」令和8年度、堺市「宅地の負担調整措置」、神戸市「空き家の敷地にかかる固定資産税」 負担調整措置、用途変更があった土地の注記、特例解除後の税額の例 2026-10-17
空家等対策の推進に関する特別措置法13条・22条 勧告 2026-10-17
国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」 維持管理費用の分布 2026-10-17
日本郵便「郵便局の空き家みまもり」 管理サービスの料金 2026-10-17

この記事は、公表資料と法令にもとづく一般的な情報です。個別の税務判断は税理士・税務署に確認してください。