第4章 実行|解体
空き家を解体して売るか、古家付きで売るか:更地の固定資産税と損益分岐
古家付きで売るか解体して売るかは、更地にして上がる売却価格が解体費を超えるかで決まります。更地にすると固定資産税の特例が外れ、税は年々上がります。
- 解体して売るほうが手元に残るのは、更地にして上がる価格が解体費(税の軽減分を除く)を超えるときです。見本では、解体費120万円に対して、上がる額が約118.5万円以上なら有利です。
- 更地にすると住宅用地の特例が外れます。見本の土地では、土地の税は年50,000円から、翌年度にほぼ一気に年153,000円〜178,500円(市町村の平均の負担水準が60%〜70%の場合)になります(地方税法附則18条の3)。
- 解体費用の相場と補助金は、姉妹サイトのふれあいの丘で調べられます。この記事では判断に必要な目安だけを示します。
古家付きで売るか解体して売るかは、更地にして上がる売却価格が解体費を超えるかで決まります。更地にすると固定資産税の特例が外れ、税は年々上がります。
更新日:2026年(令和8年)10月17日。
解体して売るか、古家付きのまま売るかは、何で決まりますか。
解体して売るか古家付きのまま売るかは、建物の状態、更地にして上がる売却価格、解体費、更地にした後の固定資産税の4点で決まります。解体が向くのは、傷みが大きく、使う予定がなく、更地のほうが売りやすい場合です。
状況ごとの向き不向きは、次のとおりです。
| 状況 | 解体 | 理由・参照 |
|---|---|---|
| 傾きや倒壊のおそれがあり、使う予定がない | 向く | 放置の責任とコストが続く(持ち続けるリスク) |
| 相続土地国庫帰属制度を使いたい | 向く(前提) | 建物がある土地は申請できない(国庫帰属) |
| 更地のほうが高く売れる見込みがある | 条件次第 | 上がる価格が解体費を超えるか比べる(次の2つの節) |
| 建て替えできない土地(再建築不可) | 向かない | 更地にしても建築できない(建築基準法43条、再建築不可) |
| 売却を急ぎ、買主が解体してもよい | 向かない | 古家付きで売れる。3,000万円控除の適用も可能な場合がある |
| 貸して収入を得たい | 向かない | 建物があるうちに貸す(貸す・活用する) |
| 売却先も使う予定もない | 慎重に | 更地にすると土地の税が増える |
全体の順番は、相続した空き家の最初にやることにまとめています。
判断のために、解体費はいくらを見込めばよいですか。
木造の解体費は、民間大手の公開値で坪3万〜5万円が目安です。30坪の木造なら90万〜150万円で、公的な実勢単価は確認できていません。
出典は三井のリハウス「解体費用の相場」(2025年5月14日公開、2026年10月17日確認)です。構造別の坪単価、費用が高くなる要因、補助金の探し方は、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)が家の解体費用の相場と空き家の解体補助金 完全ガイドで詳しく扱っています。見積書では、坪数が延床面積か敷地面積かを確認してください。
解体して売るのと、古家付きのまま売るのでは、どちらが手元に残りますか。
解体して売るのが得になるのは、更地にして上がる売却価格が、解体費を超える場合です。税の計算では、解体費は譲渡費用として差し引けるため、損益分岐は解体費よりやや低くなります。
損益分岐はどう計算しますか。
売却益の計算で、売るために直接かかった費用は譲渡費用に入れられます。建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用も含みます(国税庁タックスアンサーNo.3202)。
次の見本は、仮定の数字です。更地にして売却価格が150万円上がると仮定し、長期譲渡所得の税率20.315%(所得税15%+復興特別所得税〈所得税額の2.1%〉+住民税5%)、概算取得費は売却価格の5%、仲介手数料などは除きました。
| 項目 | 古家付きで売る | 解体して売る |
|---|---|---|
| 売却価格(仮定) | 1,200万円 | 1,350万円 |
| 概算取得費(5%) | 60万円 | 67.5万円 |
| 譲渡費用(解体費、仮定) | 0円 | 120万円 |
| 譲渡所得 | 1,140万円 | 1,162.5万円 |
| 譲渡所得税(20.315%) | 2,315,910円 | 2,361,619円 |
| 解体費の支出 | 0円 | 1,200,000円 |
| 税引後の手元(上記の範囲) | 9,684,090円 | 9,938,381円 |
この例では、解体して売るほうが254,291円多くなります。損益分岐は、更地にして上がる価格が約118.5万円です。解体費が120万円なので、税の軽減分だけ解体費より小さい額になります。
譲渡所得が3,000万円特別控除などで0になる場合、税の軽減はありません。更地にして上がる価格が、解体費そのものを超える必要があります。更地と古家付きの売却価格の差を示す公的な統計はなく、地域や物件で大きく異なります。売却の相談先に、両方の想定価格を出してもらってください。手取りは売却手取り計算で確認できます。
3,000万円控除と解体は、どう関係しますか。
被相続人居住用財産の3,000万円特別控除(租税特別措置法35条3項)には、解体に関係する売り方が2つあります。どちらも、昭和56年5月31日以前の建築などの要件を満たす必要があります。
| パターン | 内容 | 注意 |
|---|---|---|
| 取り壊して敷地を売る | 家屋を取り壊し、敷地を売る。取壊しから譲渡まで、建物や構築物の敷地にしない | 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る |
| 古家付きで売り、買主が解体・耐震改修 | 令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡で、譲渡の翌年2月15日までに耐震基準に適合させる、または全部を取り壊す | 契約書に工事を明記する。税務署・市区町村に事前に確認する |
売る期限は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までで、かつ制度の対象は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です。譲渡対価は1億円以下で、相続人が3人以上の場合は、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡で1人2,000万円までです(国税庁タックスアンサーNo.3306、2026年10月17日確認)。取得費加算の特例とは併用できません。要件の全体は3,000万円控除の解説と判定ツールで確認できます。個別の適用は、税理士・税務署にご確認ください。
解体後に売れ残ると、翌年1月1日にも特例なしの土地の税がかかります。解体前に、売却の見通しを確認してください。売却全体の流れは売却のページです。
空き家を解体すると、固定資産税はいくらになりますか。
建物を壊すと土地の住宅用地の特例が外れ、土地の税は年を追って上がります。見本の土地(評価額1,500万円)では、土地の税が年50,000円から、1年目62,750円、9年目以降153,000円になります。
住宅用地の特例とは何ですか。
住宅用地の特例とは、住宅が建つ土地の固定資産税・都市計画税の課税標準を、価格より小さくする制度です。地方税法349条の3の2と702条の3が定めています。
| 区分 | 固定資産税の課税標準 | 都市計画税の課税標準 |
|---|---|---|
| 小規模住宅用地(200㎡以下の部分) | 価格の6分の1 | 価格の3分の1 |
| 一般住宅用地(200㎡を超える部分) | 価格の3分の1 | 価格の3分の2 |
| 住宅用地でない土地(更地など) | 原則、価格 | 原則、価格 |
建物を壊し、1月1日(賦課期日、地方税法359条)に家屋がなければ、その土地は住宅用地になりません。国土交通省・総務省の事務連絡(令和3年3月30日)は、住宅用地かどうかを賦課期日の家屋の使用・管理の状況で判断する、と説明しています。
「固定資産税が6倍になる」と言われるのは、小規模住宅用地の6分の1が、特例なしで1に戻るという比較です。実際の課税標準は価格の60%〜70%程度で、6倍にはなりません。ただし、特例が外れた最初の年に、その水準までほぼ一気に上がります(地方税法附則18条の3)。
更地にすると、税は毎年どう変わりますか。
更地などの土地は、課税標準額が前年から価格の5%ずつ上がり、価格の60%を上限とします。前年の水準が60%以上70%以下なら据え置き、70%を超えると70%まで下がります(横浜市「土地の負担調整措置」令和8年度、固定資産税・都市計画税の両方に適用)。
条件は、土地150㎡、固定資産税評価額(価格)1,500万円、家屋の評価額200万円、市街化区域内、固定資産税率1.4%、都市計画税率0.3%、評価額は10年間変わらないとしました。実在の物件の数字ではありません。前年の課税標準額は、住宅用地の特例を受けた額と仮定しています(実際の扱いは自治体の運用で異なる場合があります)。
| 年 | 土地の固定資産税 | 土地の都市計画税 | 土地の合計 | 更地の年間合計(家屋なし) |
|---|---|---|---|---|
| 現状(特例あり) | 35,000円 | 15,000円 | 50,000円 | 84,000円(家屋の税34,000円を含む) |
| 解体後1年目 | 45,500円 | 17,250円 | 62,750円 | 62,750円 |
| 2年目 | 56,000円 | 19,500円 | 75,500円 | 75,500円 |
| 3年目 | 66,500円 | 21,750円 | 88,250円 | 88,250円 |
| 5年目 | 87,500円 | 26,250円 | 113,750円 | 113,750円 |
| 9年目以降 | 126,000円 | 27,000円 | 153,000円 | 153,000円 |
10年間の合計は、現状のまま持つと840,000円、解体して更地にすると1,153,750円です。差は313,750円で、解体費用が別にかかります。
1年目の更地の税(62,750円)が現状(84,000円)より低いのは、家屋の税が消えるためです。2年目以降は、毎年上がります。自分の土地の数字は、保有コストの試算に課税明細書の評価額を入れて確認できます。
解体の前後に、どんな手続きが必要ですか。
主な手続きは、工事の届出、アスベストの事前調査、建物滅失登記の3つです。滅失登記を怠ると過料の対象になります。
| 手続き | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 工事の届出 | 床面積の合計が80㎡以上の建築物の解体は、発注者が工事着手の7日前までに都道府県知事へ届け出る | 建設リサイクル法10条1項、同法施行令2条1項1号 |
| アスベストの事前調査 | 元請業者が調査し、結果を書面で発注者に説明する。解体部分の床面積の合計が80㎡以上の工事は、結果を元請業者が報告する(環境省)。発注者は調査費用の適正な負担など、協力する義務がある | 大気汚染防止法18条の15 |
| 建物滅失登記 | 建物が滅失したときは、滅失の日から1か月以内に申請する。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料 | 不動産登記法57条、164条1項 |
80㎡は約24.2坪です。30坪の家(約99㎡)は対象になります。届出の実務は業者が代行する場合もあるため、見積もりの段階で確認してください。
建物滅失登記は、所有権の登記名義人が申請します。名義が亡くなった方のままの場合は、相続を証明する書類を添えて申請する案内が法務局にあります(鳥取地方法務局のチェックリスト)。進め方は管轄の法務局で確認してください。相続登記は、所有権の取得を知った日から3年以内の申請が義務です(不動産登記法76条の2)。
解体を選ぶ場合、見積もりは何をそろえて比べますか。
解体の見積もりは、複数の業者から取り、内訳をそろえて比べます。総額だけでなく、何が含まれているかで差が出ます。
- 坪数の基準が延床面積か、敷地面積か。
- 内訳に、本体の解体、廃棄物の運搬・処分、整地、付帯工事が含まれるか。
- アスベストの事前調査費用と、見つかった場合の追加費用の扱い。
- 地中の埋設物が見つかった場合の費用と、判断のルール。
- 残置物の処分が含まれるか、別か。
- 届出・滅失登記の代行の有無と費用。
解体の見積もりを、条件をそろえて複数社から集めると、相場から外れた金額に気づきやすくなります。解体を決めていない段階でも、費用を把握するために使えます。
この記事で使える計算ツール
計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。
よくある質問
解体してから売るのと、古家付きのまま売るのは、どちらが得ですか。
更地にして上がる売却価格が、解体費を超えるかで決まります。見本(解体費120万円)では、上がる額が約118.5万円以上なら、解体して売るほうが手元に残ります。更地と古家付きの価格差を示す公的な統計はありません。
空き家を解体すると固定資産税は何倍になりますか。
土地の課税標準が価格の6分の1から本則の価格に戻る比較が「6倍」です。実際は価格の60%〜70%程度が課税標準になり、特例が外れた最初の年にほぼ一気に上がります(地方税法附則18条の3)。見本の土地では、土地の税が年50,000円から年153,000円〜178,500円になります。
空き家を解体する時期は、年内と年明けのどちらがよいですか。
固定資産税は、1月1日の状態を基準に課されます(地方税法359条)。12月31日までに壊すと、翌1月1日に家屋がなく、土地が住宅用地として扱われない場合があります。時期による税の違いは、自治体の税務課に確認してください。
解体をしないで売ることはできますか。
できます。古家付きの土地として売り、買主が解体する方法です。令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡では、買主が翌年2月15日までに耐震改修か取壊しをすれば、3,000万円控除の対象になる場合があります。
解体費用の相場や補助金は、どこで調べますか。
木造の解体費は、民間大手の公開値で坪3万〜5万円が目安です(三井のリハウス、2025年5月公開)。構造別の相場と自治体の補助金は、姉妹サイトのふれあいの丘で調べられます。補助金は、解体の契約前に申請が必要な場合があります。
この記事の根拠
- 三井のリハウス「解体費用の相場」(公開2025-05-14)(確認日 )
- 地方税法349条の3の2・350条・359条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 横浜市「土地の負担調整措置(令和8年度)」(確認日 )
- 国土交通省・総務省 事務連絡「空き家対策の推進を目的とした固定資産税の住宅用地特例に関する取組について」(令和3年3月30日)(確認日 )
- 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 9条・10条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行令 2条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 大気汚染防止法 18条の15(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 環境省「石綿事前調査結果の報告について」(解体工事は床面積の合計80㎡以上が報告の対象)(確認日 )
- 不動産登記法 57条・76条の2・164条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 鳥取地方法務局「申請書提出前のチェックリスト(建物滅失用)」(登記されている所有者が死亡している場合は相続を証明する書類を添付)(確認日 )
- 建築基準法 43条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 国税庁タックスアンサーNo.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(売却期限、令和9年12月31日までの適用期間、譲渡後の耐震改修・取壊しの要件を再確認)(確認日 )
- 国税庁タックスアンサーNo.3202・No.3258(確認日 )
- 国土交通省「被相続人居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」令和6年改正(確認日 )
- ふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)家の解体費用の相場(解体費用の詳細はこちらが担当)(確認日 )
- ふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)空き家の解体補助金 完全ガイド(自治体別の補助金はこちらが担当)(確認日 )
| 資料 | 内容 | 確認日 |
|---|---|---|
| 三井のリハウス「解体費用の相場」 | 木造の坪単価の目安(判断用の1行のみ) | 2026-10-17 |
| 地方税法349条の3の2・350条・359条 | 住宅用地の特例、税率、賦課期日 | 2026-10-17 |
| 横浜市「土地の負担調整措置」令和8年度 | 更地等の負担調整 | 2026-10-17 |
| 国土交通省・総務省 事務連絡(令和3年3月30日) | 住宅用地の認定は賦課期日の状況で判断 | 2026-10-17 |
| 建設リサイクル法9条・10条、同施行令2条、大気汚染防止法18条の15、環境省「石綿事前調査結果の報告について」、不動産登記法57条・164条、鳥取地方法務局のチェックリスト | 解体の届出、石綿調査と報告、滅失登記 | 2026-10-17 |
| 国税庁タックスアンサーNo.3306 | 3,000万円控除の期限・要件 | 2026-10-17 |
| 国税庁タックスアンサーNo.3202・No.3258、国土交通省資料(令和6年改正) | 譲渡費用、概算取得費、3,000万円控除 | 2026-10-16 |
この記事は、公表資料と法令にもとづく一般的な情報です。個別の税務判断は税理士・税務署に、不動産の取引は宅地建物取引業者に確認してください。