第4章 実行|活かす

空き家の活用:貸す・土地活用の向き不向きと収支の見方

空き家は、建物の傷み・立地・法規制を確認すれば貸せるかを判断できます。貸すと売却時の3,000万円控除の対象外になる点に注意が必要です。

  • 貸す・活用するのは、傷みが軽く、借り手がいる立地で、法規制に当たらない家に向きます。
  • 相続した家を貸すと、売却時の3,000万円特別控除は使えなくなる可能性があります。
  • 民営借家(木造)の全国平均家賃は月54,409円です。あなたの家の収支は診断で計算できます。

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空き家は、建物の傷み・立地・法規制を確認すれば貸せるかを判断できます。貸すと売却時の3,000万円控除の対象外になる点に注意が必要です。

更新日:2026年(令和8年)10月17日。数字の時点は各表の注に書きました。

空き家の活用とは何ですか。どんな選択肢がありますか。

空き家の活用とは、家や土地を売らずに持ったまま、貸す・自分や家族が使う・更地にして土地として使うなどで、価値を得ることです。売る場合は売却のページを参照してください。

選択肢は、次の5つに整理できます。

空き家の活用とは何ですか。どんな選択肢がありますか。
選択肢 内容 向く人 主な注意点
貸す(普通借家) 家を直接、借り手に貸す 家の傷みが軽い人 返してもらいにくい。3,000万円控除の対象外
貸す(サブリース) 事業者が借り上げて転貸する 管理の手間を減らしたい人 契約条件の確認が必要
自分・家族が使う 住む・セカンドハウス 使う予定が具体的な人 維持費は続く
解体して土地を使う 駐車場・賃貸住宅など 需要が見込める土地の持ち主 固定資産税が上がる
活用しない 売る・手放す・持ち続ける 活用の条件に合わない人 売却・国庫帰属・保有を比較する

国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」(令和7年8月公表)では、今後5年程度の利用意向は「空き家として所有しておく」が約32%、「売却する」が約20%でした(対象は現在も空き家の約103万世帯)。活用に踏み出す人ばかりではありません。

貸せる空き家と、貸すのに向かない空き家の違いは何ですか。

貸せるかどうかは、建物の傷み・周辺の借り手・残された家財・法規制の4点で決まります。先に傷みと家財を確認すると、費用の見通しが立ちます。

同じ調査で、今後5年程度に賃貸または売却する意向の世帯(約25万世帯)が挙げた課題は、次のとおりです(複数回答)。

貸せる空き家と、貸すのに向かない空き家の違いは何ですか。
課題 割合(約)
住宅の傷み 43%
借り手・買い手の少なさ 40%
家財などの処理 37%

出典:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)。

自分の家に当てはめる確認表を示します。

貸せる空き家と、貸すのに向かない空き家の違いは何ですか。
確認項目 向く状態 向かない・要注意の状態
建物の傷み 雨漏り・傾きがなく、設備が使える 大きな修繕が必要で、費用が家賃収入を上回る見込み
借り手 周辺で賃貸の募集が出ている 周辺に賃貸需要が見えない
家財・残置物 片付け済み 家財が残り、処分の費用と時間がかかる
道路との関係 敷地が道路に2m以上接している(建築基準法43条) 接していない。建て替えができず、活用の幅が狭い
市街化調整区域 現状の住居として貸す 建築物の改築や用途変更を伴う場合は、都道府県知事の許可が必要(都市計画法43条)

家財の片付けは、姉妹サイトふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)で手順と業者の選び方を扱っています。建て替えができない家の扱いは再建築不可のページを参照してください。

空き家を貸すと、年間いくらの収支になりますか。

民営借家(木造)の全国平均家賃は月54,409円で、年に約65万円です。ここから空室、管理費、税、保険、修繕を引いたものが収支です。

家賃の参考値はいくらですか。

総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月1日時点)の借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は、次のとおりです。

家賃の参考値はいくらですか。
種類 1か月当たり家賃
借家(専用住宅)全体 59,656円
民営借家(木造) 54,409円
民営借家(非木造) 68,548円
公営の借家 24,961円
都市再生機構(UR)・公社の借家 71,831円

これは全国の借家全体の平均です。築年数・間取り・地域は反映されていません。一戸建ての都道府県別の家賃は、e-Statの統計表で取得できます。あなたの家の家賃は、同じ地域の募集賃料を不動産会社で確認してください。

収支はどう計算しますか。

収支(税引前)は、次の式で計算します。

年間の収支 = 年間家賃 ×(1 − 空室率)− 管理委託料 − 固定資産税・都市計画税 − 保険 − 修繕積立

空室率・管理委託料の率・保険・修繕費に、公的な代表値は確認できていません。次のモデルケースは、仮定の値で計算しています。

モデルケース(見本の数字)

条件は、家賃を民営借家(木造)の全国平均54,409円、管理委託料を家賃収入の5%、固定資産税・都市計画税を年84,000円、火災保険を年30,000円、修繕積立を年100,000円としました。管理委託料・保険・修繕は仮定です。固定資産税の84,000円は、保有コストの試算のモデル(土地評価額1,500万円・家屋200万円・市街化区域内)の通常時の額です。

モデルケース:見本の数字|モデルケース(見本の数字)
空室率(仮定) 家賃収入(年) 年間の収支(税引前)
0% 652,908円 406,263円
10% 587,617円 344,236円
20% 522,326円 282,210円
30% 457,036円 220,184円

リフォームに費用をかけた場合の回収年数は、空室率10%の収支(年344,236円)で次のとおりです。

モデルケース:見本の数字|モデルケース(見本の数字)
リフォーム費(仮定) 回収年数
100万円 約2.9年
200万円 約5.8年
300万円 約8.7年
500万円 約14.5年

この表には、所得税・住民税(不動産所得への課税)と、借り手が替わるたびの原状回復費を入れていません。実際の手取りはこれより少なくなります。税額は税理士・税務署に確認してください。

空き家を貸すと、税金や契約で何が変わりますか。

貸すと、売却時の3,000万円特別控除が使えなくなる可能性があり、貸した家を自由に返してもらえなくなる場合があります。貸す前に、この2点を確認してください。

貸すと3,000万円特別控除は使えなくなりますか。

被相続人居住用財産(空き家)の3,000万円特別控除は、相続開始から譲渡の時まで、事業・貸付・居住の用に供していないことが要件の一つです(租税特別措置法35条3項、国税庁タックスアンサーNo.3306)。相続後に貸し付けると、この特例の対象外になるおそれがあります。

売る期限は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までで、かつ制度の対象は令和9年(2027年)12月31日までの譲渡です(国税庁タックスアンサーNo.3306、2026年10月17日確認)。いずれ売る可能性があるなら、貸す前に3,000万円控除の解説で期限と要件を確認してください。個別の適用の可否は、税理士・税務署にご確認ください。

貸した家を、自分で使いたくなったら返してもらえますか。

普通の賃貸借(普通借家)では、貸主から契約の更新を拒む通知や解約の申入れをするには、正当の事由が必要です(借地借家法28条)。貸主が使いたいという事情だけでは、認められない場合があります。

期間を決めて確実に終わらせたいときは、定期建物賃貸借(定期借家)があります。公正証書などの書面で契約し(借地借家法38条1項)、あらかじめ「更新がなく期間満了で終了する」旨を書面で説明する必要があります(同条3項)。この説明をしないと、更新しない旨の定めは無効です(同条5項)。

サブリース(借上げ)は何に注意すればよいですか。

サブリースとは、事業者が所有者から建物を借り上げて第三者に転貸する仕組みです。賃貸住宅管理業法は、これを目的とする契約を「特定賃貸借契約」と定義し、誇大広告などを規制しています。

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(令和2年法律第60号)の主な規定は、次のとおりです。

サブリース(借上げ)は何に注意すればよいですか。
条文 内容
2条4項 転貸を目的とする賃貸借契約を「特定賃貸借契約」と定義する
28条 家賃や解除に関する事項について、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく有利と誤認させる表示を禁止する
29条 重要な事項について、故意に事実を告げない、または不実を告げる勧誘を禁止する
30条 契約を締結するまでに、契約内容を書面で交付して説明することを義務づける

管理委託(賃貸人から委託を受けて維持保全などを行う事業、同法2条2項)と、サブリースは別の仕組みです。契約前に、次の点を書面で確認してください。これは一般的な確認項目で、法令が個別に定める内容ではありません。

  • 事業者が支払う家賃が固定か、見直されるか。見直しの条件と時期
  • 所有者側から解約できるか。解約までの期間と費用
  • 空室の期間に、事業者が家賃を支払うか
  • リフォームや修繕の費用を誰が負担するか
  • 契約終了時の原状回復と、借り手との関係の引継ぎ

借上げは、条件が合う場合に管理の手間を減らせます。家賃の見直し条項がある契約では、見直された後の金額でも収支が成り立つかを確認してください。

土地を活かすには、どんな種類があり、どんな土地に向きますか。

土地の活用は、駐車場・トランクルーム・賃貸住宅(アパートなど)・貸地に分かれます。どれも「建物がない更地にすると固定資産税の特例が外れる」「法規制で使えない土地がある」という点が共通です。

土地を活かすには、どんな種類があり、どんな土地に向きますか。
活用の種類 前提となる確認 向かない土地
駐車場・コインパーキング 周辺の駐車需要(現地で確認)。出入口を確保できること 周辺に駐車需要がない土地
トランクルーム・資材置き場 周辺の需要。用途地域などの規制 需要が見えない土地
賃貸住宅(アパートなど) 建築費と借入。接道(建築基準法43条)。市街化調整区域は許可(都市計画法43条) 接道がない土地。人口が減る地域で借り手が見込めない土地
貸地(借地として貸す) 貸している間は、自分で売る・使うことが難しくなる。借地権の扱いは借地権のページを参照 将来売る可能性が高い土地
農地のまま貸す・農地以外にする 農地を農地以外にするには許可が必要(農地法4条)。農地を転用目的で売買・貸借する場合も許可が必要(同5条) 許可が下りにくい農地

建物を壊して更地にすると、住宅用地の特例(固定資産税の課税標準が、200㎡以下の部分は価格の6分の1、超える部分は3分の1。地方税法349条の3の2)が外れます。駐車場などで収入が入っても、税負担は増えます。税額は保有コストの試算で、更地にした場合の目安を確認できます。

土地活用の収益や建築費を示す公的な統計はありません。金額は、複数の事業者のプラン(見積もり)で比べるのが確実です。「やらない」判断の材料は、土地活用はやらないも選択肢のページにまとめました。

活かさず、売る・解体する・手放すほうがよいのはどんなときですか。

傷みが大きい、借り手が見えない、活用に使う予定も費用もない場合は、貸さずに別の出口を選ぶほうが負担を抑えられます。活用と他の出口は、費用と期限で比べてください。

活かさず、売る・解体する・手放すほうがよいのはどんなときですか。
状況 検討する出口 参照
修繕費が家賃収入を大きく上回る 売る(古家付き・買取) 売却
建物が古く、使う予定がない 解体して更地にする 解体
利用予定も売却先もない土地 国庫帰属を検討する 国庫帰属
当面は決められない 保有コストを把握して持ち続ける 保有
どれが自分に合うか分からない 診断で比べる 最初にやること

新潟県内の家や土地は、地域に特化した姉妹サイト新潟 実家じまいナビ(運営:株式会社Kogera)もあわせて確認してください。

活用の見積もりを取るのは、どの段階がよいですか。

建物の傷みと法規制を確認し、貸す・活用する方針が固まった段階で、複数の事業者のプランを比べるのが効率的です。事業者ごとに提案の内容が違うため、1社で決めないでください。

下の見積もりは、土地活用のプラン比較と、借上げ(サブリース)の相談の2種類です。売却を考えている人は、先に売却のページを確認してください。

この記事で使える計算ツール

計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。

よくある質問

空き家を貸すといくらで貸せますか。

民営借家(木造)の全国平均は月54,409円です(令和5年住宅・土地統計調査)。実際の家賃は、築年数・間取り・地域で変わります。同じ地域の募集賃料を、不動産会社で確認してください。

空き家を貸しても、3,000万円控除は使えますか。

相続開始から譲渡の時まで貸付の用に供していないことが、要件の一つです(租税特別措置法35条3項)。相続後に貸すと、対象外になるおそれがあります。個別の判断は、税理士・税務署にご確認ください。

サブリースと管理委託は何が違いますか。

管理委託は、賃貸人から委託を受けて維持保全などを行う事業です。サブリースは、事業者が建物を借りて第三者に転貸する仕組みで、「特定賃貸借契約」と呼ばれます(賃貸住宅管理業法2条)。

借り手がつかないときはどうなりますか。

賃貸や売却を考える世帯の約40%が「借り手・買い手の少なさ」を課題に挙げています(令和6年空き家所有者実態調査)。借り手が見つからない場合は、売却・解体・国庫帰属を比べてください。

この記事の根拠

  1. 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(令和6年9月25日公表)(確認日 )
  2. 国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)(確認日 )
  3. 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)2条・28条・29条・30条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  4. 借地借家法(平成3年法律第90号)28条・38条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  5. 建築基準法43条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  6. 都市計画法43条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  7. 農地法4条・5条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  8. 地方税法349条の3の2(住宅用地の特例)(e-Gov法令検索)(確認日 )
  9. 国税庁タックスアンサーNo.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(売却期限と適用期間を再確認)(確認日 )
この記事の根拠
資料 内容 確認日
総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 基本集計」(令和6年9月25日公表) 借家の1か月当たり家賃 2026-10-17
国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月) 利用意向、賃貸・売却の課題 2026-10-17
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律2条・28条・29条・30条 サブリース(特定賃貸借契約)の定義と規制 2026-10-17
借地借家法28条・38条 正当の事由、定期建物賃貸借 2026-10-17
建築基準法43条、都市計画法43条、農地法4条・5条 接道、市街化調整区域、農地転用 2026-10-17
地方税法349条の3の2 住宅用地の特例 2026-10-17
国税庁タックスアンサーNo.3306 3,000万円特別控除の要件 2026-10-16

この記事は、公表資料と法令にもとづく一般的な情報です。個別の税務判断は税理士・税務署に、不動産の取引は宅地建物取引業者に確認してください。