第4章 実行|活かす
空き家の借上げ3方式の比較表:マイホーム借上げ制度・サブリース・管理委託
空き家の借上げ方式は、マイホーム借上げ制度、サブリース、管理委託の3つで、家賃の決まり方・減額・解約が違います。管理委託は借上げではありません。
- 3方式は、入居者に貸す人が違います。マイホーム借上げ制度はJTI、サブリースは事業者、管理委託は所有者本人です。家賃の減額と解約のしやすさも、この違いで変わります。
- サブリースの家賃は、契約の条件にかかわらず減額を請求される場合があります(借地借家法32条)。最高裁判所は、サブリース契約にも32条1項が適用されると判断しています(平成15年10月21日)。
- どの方式でも、相続した家を貸すと3,000万円控除の要件(貸し付けたことがない)を満たさなくなります。売る予定があるなら、貸す前に期限と要件を確かめます。
更新日:2026年(令和8年)10月25日。制度の内容は、2026年10月25日に確認した公式資料の時点です。
空き家を借り上げてもらう方法は、どの3つに分かれますか?
空き家を借り上げてもらう方法は、マイホーム借上げ制度、サブリース(特定賃貸借契約)、管理委託の3つに整理できます。このうち、所有者から家を借りるのは前の2つで、管理委託は借上げではありません。
借上げとは、所有者から家を借りた人が、その家を入居者に貸し直す(転貸する)ことです。サブリースとは、事業者が所有者から建物を借り上げて入居者に転貸する仕組みです。賃貸住宅管理業法は、これを目的とする契約を「特定賃貸借契約」と定義しています(2条4項)。
管理委託とは、所有者が貸主のまま、入居者の募集や建物の維持保全などを事業者に任せる契約です(同法2条2項)。サブリースとの違いは、入居者と賃貸借契約を結ぶのが所有者か事業者か、という点です。
| 項目 | マイホーム借上げ制度 | サブリース | 管理委託(参考) |
|---|---|---|---|
| 運営する者 | 一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)。JTIは国の支援を受けた非営利法人と説明 | 民間のサブリース事業者(特定転貸事業者) | 賃貸住宅の管理会社など |
| 入居者に貸す人 | JTIが貸主として転貸 | 事業者が転貸 | 所有者本人 |
| 所有者との契約 | JTIとの建物賃貸借契約。期間は3年以上の定期借家で、貸し出す期間は所有者が決める | 事業者との賃貸借契約(マスターリース契約)。期間・条件は契約で定める | 事業者との管理委託契約 |
| 家賃の決まり方 | JTI協賛会社などが賃料を査定し、JTIが承認。査定時の賃料は実際と異なる場合がある | 契約で定める。見直し条項の有無・内容は契約ごと | 所有者が入居者と決める(募集賃料は管理会社に相談) |
| 家賃の減額 | 空室時保証賃料は原則として毎年見直し、変更時のみ書面で通知 | 契約の条件にかかわらず、減額の請求がありうる(借地借家法32条) | 入居者との賃料の合意・請求による |
| 空室のとき | 1人目の入居者が決まった後は、空室でも規定の賃料を支払うとJTIは説明 | 契約で定める。支払いが免除される期間があるか、書面で確かめる | 家賃収入は入らない |
| 所有者からの解約 | 戻る・親族が住む・売却のとき、中途解約できる。入居者がいれば転貸借の終了と同時 | 借地借家法28条の正当の事由が必要になる場合がある(国土交通省) | 管理委託契約の解約は契約による。入居者との賃貸借は所有者が貸主 |
| 空き家でも使えるか | 現在住んでいる必要はない。50歳未満は相続・贈与で取得した家などの条件あり | 事業者ごとの基準。公的な基準はない | 管理会社ごとの基準 |
| 所有者の主な費用 | 申込手数料18,700円(税込)、建物診断、必要な耐震補強、火災保険 | 契約で定める。公的な統計はない | 管理委託料。公的な統計はなく、見積で確かめる |
| 根拠 | JTIの「ご利用ガイド」 | 賃貸住宅管理業法28条〜31条 | 同法2条2項(管理業務の定義) |
JTIの欄は、JTIの公式ページ(ご利用ガイドとあらまし)に書かれた内容です。サブリースと管理委託の欄は、法令と国土交通省の資料で言える範囲にとどめました。家賃の割合や管理委託料の率には、公的な統計がありません。
マイホーム借上げ制度とは何で、相続した空き家でも使えますか?
マイホーム借上げ制度とは、JTIが所有者から住宅を借り上げ、JTIが貸主となって入居者に転貸する制度です。JTIは、使わなくなった持ち家を家賃収入に変える仕組みと説明しています。相続した空き家も、条件を満たせば使えます。
条件は年齢で分かれます。50歳以上は、現在住んでいる必要はありません。50歳未満は、次のような条件のいずれかを満たす必要があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢 | 日本に居住する50歳以上など。50歳未満は条件のいずれかを満たす |
| 50歳未満の条件(相続) | 相続や生前贈与で取得した家で、申込み時点ですでに空き家であること。すでに名義が子供になっている場合に適用(JTIの記載) |
| 建物の診断 | 築後25年を経過した物件は建物診断が必要(所有者の負担)。築25年以内は簡易の外観調査(無料) |
| 耐震 | 建築確認の日付が1981年(昭和56年)5月31日以前なら耐震診断のうえ、必要に応じて補強工事。1981年6月1日以降で大きな増改築がなければ耐震診断は不要 |
| 対象でない住宅 | 事業用の建物、当初から賃貸のために建てられた住宅。共有の場合は共有者全員の承諾が必要 |
| 地域 | 賃貸市場があれば全国どこでも対応可能とJTIは説明 |
共有の家は、登記簿に記載された共有者全員の承諾が要ります。相続登記が未了なら、先に売る前の相続登記の手順を読んでください。
契約の期間と費用は、次のとおりです。
- 所有者とJTIの契約は、原則として所有者と同居者が亡くなるまでの終身借上げです。戻る時期が決まっていれば、期間を指定できます(原則5年以上)。
- JTIから入居者への転貸は、原則3年の定期借家契約です。JTIは、利用をやめても最長3年待てば家を取り戻せると説明しています。
- 家賃は、1人目の入居者が入居した日から支払われます。申込みと同時に賃料が保証されるわけではありません。
- 申込手数料は18,700円(税込)です。建物診断、必要な耐震補強、火災保険は所有者の負担です。
- JTIは、支払う家賃に国の基金による債務保証があると説明しています。
JTIの公式資料には、家賃が市場の賃料の何割か、JTI側の手数料の率は書かれていません。査定の結果を見て、手取りを計算してから申し込みます。
途中で自分が使いたくなったら、いつ解約できますか?
戻る事情、親族が住む、売却のときは、中途解約が認められます。ただし、入居者がいる場合は、入居者との転貸借が終わった時点で契約が終わります。
| 解約の通知を出したとき | 契約が終わる時期 |
|---|---|
| 入居者がいない | JTIが通知を受け取った時点 |
| 入居者がいて、転貸借の満了まで6か月以上ある | 入居者との転貸借が終了した時点 |
| 入居者がいて、転貸借の満了まで6か月に満たない | JTIが入居者に告知してから6か月が過ぎるまで待つ |
| 解約が権利の濫用とJTIが判断する場合 | 借地借家法に基づき、正当の事由がなければ応じないことがある |
おまかせ借上げ(改修をJTIが代行し、費用を家賃の一部から回収する型)は、10年以上の定期借家で、中途解約できません。
サブリースの家賃は、なぜ下がることがあるのですか?
サブリースの家賃は、契約で決めた金額でも、減額を請求される場合があります。借地借家法32条は、借賃が近傍同種の建物と比べて不相当になったときなどに、契約の条件にかかわらず、将来に向かって増減を請求できると定めているためです。
条文は、請求できるのが「当事者」であると書いています。事業者だけでなく、所有者も増額を請求できます。
最高裁判所第三小法廷は、平成15年10月21日の判決で、サブリース契約にも32条1項が適用されると判断しました(平成12年(受)第573号、民集57巻9号1213頁)。
減額の請求の当否と相当な賃料額は、次の事情を総合して判断される、とされています。賃料が決まった経緯、近隣の相場との関係、転貸事業の収支予測などです。
例外があります。定期借家契約で、借賃の改定に係る特約がある場合は、32条は適用されません(借地借家法38条9項)。契約書に、定期借家か普通借家か、家賃改定の特約があるかを確かめます。
国土交通省は、賃貸住宅管理業法29条の説明として、次の事項を故意に伝えない勧誘を、事実不告知の例に挙げています。
- 将来の家賃減額のリスクがあること
- 契約期間中でも、事業者から契約を解除される可能性があること
- 所有者からの解約には、借地借家法の正当の事由が必要になること
- 維持保全、原状回復、大規模修繕などの費用を、所有者が負担する場合があること
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 2条4項 | 転貸を目的とする賃貸借契約を「特定賃貸借契約」と定義する |
| 28条 | 家賃や解除に関する事項で、著しく事実に相違する表示や、実際より著しく有利と誤認させる表示を禁止する |
| 29条 | 重要な事項について、故意に事実を告げない、または不実のことを告げる勧誘を禁止する |
| 30条 | 契約を締結するまでに、契約内容を書面で交付して説明することを義務づける |
| 31条 | 契約を締結したときに、家賃・維持保全の方法・契約期間・更新や解除などを記載した書面を交付することを義務づける |
国土交通省は、重要事項の説明から契約締結まで、1週間程度の期間をおくことが理想的としています。契約書を持ち帰って確かめる時間を取ります。
家賃が下がると、年間の収支はどれだけ変わりますか?
家賃が10%下がると、固定の支出が変わらない前提では、年間の収支は約15%減ります。支出が固定だからです。
モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。
条件:家賃を民営借家(木造)の全国平均、月54,409円(総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」、2023年10月1日時点)とします。所有者が負担する支出は、空き家の活用のモデルと同じ仮定で、固定資産税・都市計画税84,000円、火災保険30,000円、修繕積立100,000円(年額の合計214,000円)とします。サブリースでは管理委託料がかからないと仮定し、空室は事業者が負担する前提です。所得税・住民税は入れていません。
| 家賃の減額 | 年間の家賃収入 | 支出(年) | 年間の収支(税引前) | 減額前との差 |
|---|---|---|---|---|
| 0%(減額なし) | 652,908円 | 214,000円 | 438,908円 | 0円 |
| 10%減 | 587,617円 | 214,000円 | 373,617円 | 65,291円減(約15%減) |
| 20%減 | 522,326円 | 214,000円 | 308,326円 | 130,582円減(約30%減) |
| 30%減 | 457,036円 | 214,000円 | 243,036円 | 195,872円減(約45%減) |
計算式は、年間の家賃収入(月54,409円×12か月×(1−減額率))から、年214,000円を引いたものです。減額後の家賃でも、支出を賄って収支が成り立つかを、契約前に確かめます。家賃は築年数・間取り・地域で変わります。全国平均は目安です。
管理委託は、借上げと何が違いますか?
管理委託は、所有者が貸主のまま、管理を任せる契約です。入居者と賃貸借契約を結ぶのは所有者なので、家賃は入居者から入った分が収入になり、空室の間は収入が入りません。
管理委託の費用は、管理委託料です。率に公的な統計はなく、管理会社の見積で確かめます。サブリースのように家賃を事業者から受け取る形ではない点が、借上げとの違いです。
普通借家で貸すと、所有者から更新を拒む通知や解約を申し入れるには、借地借家法28条の正当の事由が必要です。期間を決めて確実に終わらせたいときは、定期借家があります(同法38条)。契約の種類は、空き家の活用にも書きました。
借り上げてもらうとき、3方式に共通する注意は何ですか?
3方式に共通する注意は3つです。貸すと3,000万円控除が使えなくなること、貸す前に傷みと家財を確かめること、借り手が見込めない家は対象外になりうることです。
貸すと3,000万円控除が使えなくなります。 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は、相続の時から譲渡の時まで、事業・貸付け・居住に使われたことがないことが要件の一つです(国税庁 No.3306)。売る可能性があるなら、貸す前に3,000万円控除の判定ツールで確かめます。個別の適用は、税理士・税務署に確認してください。
貸す前の準備が要ります。 JTIは、現在オーナー以外が住んでいる場合は申込み時点で明け渡しが済んでいること、火災保険をかけることを条件にしています。家財の片付けは、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)で手順を扱っています。火災保険は空き家の火災保険も読んでください。
借り手が見込めない家は断られます。 JTIのおまかせ借上げは、改修後に入居者を見込める地域であることが条件です。サブリースの借上げ基準は事業者ごとに違い、公的な基準はありません。物件が新潟県にある場合は、姉妹サイトの新潟 実家じまいナビ(運営:株式会社Kogera)が県内の情報をまとめています。
あなたの空き家には、どの方式が向きますか?
どの方式が向くかは、戻る予定、売る予定、借り手の見込みで変わります。下の表は、状況ごとに確かめる方式の目安です。個別の契約の判断は、契約書を見て、弁護士や宅地建物取引業者に確認してください。
| あなたの状況 | 確かめる方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 50歳未満で相続した、すでに空き家の家。賃貸の需要がある | マイホーム借上げ制度 | 相続した空き家は、50歳未満の条件の一つになっている |
| 数年のうちに自分や家族が戻る、または売る可能性がある | マイホーム借上げ制度、または定期借家 | 中途解約の条件が公式資料に書かれている。3,000万円控除は使えなくなる |
| 家賃の収入を安定させたい | サブリース | 家賃の減額・解除・免責期間を書面で確かめる。減額の請求がありうる |
| 入居者を自分で選びたい、家賃を自分で決めたい | 管理委託 | 貸主は所有者のまま。空室の間は収入が入らない |
| 傷みが大きい、借り手が見えない | 借上げより別の出口 | 売る・解体する・国庫帰属を比べる |
| 3,000万円控除を使う予定がある | 貸さない | 貸付けに使うと要件を満たさない |
土地だけを活かす場合は、土地活用は「やらない」も選択肢のページを先に確認してください。貸すか決めきれないときは、保有コストの試算で、持ち続ける年間の費用を計算します。
借上げ(サブリース)の提案を取るのは、どの段階がよいですか?
建物の傷みと3,000万円控除の扱いを確認し、貸す方針が固まった段階で、複数の事業者の提案を同じ条件で比べます。1社の提案だけで決めず、契約前に書面で、家賃の見直しの条件、解約の条件、免責期間、修繕費の負担を確かめます。
借上げ(サブリース)の提案を扱う会社に、相談を申し込める窓口があります。物件・地域によっては対象外です。売る予定が固まっている人、貸した後に自分で使う予定がある人、家賃の減額リスクを避けたい人には向きません。申込み前に、各社の案内を読んでください。
よくある質問
サブリースの家賃は、契約したら変わりませんか?
変わらないとは限りません。借地借家法32条により、契約の条件にかかわらず減額を請求される場合があり、最高裁判所はサブリースにも32条1項が適用されると判断しています。
借り上げてもらった家は、売るときに3,000万円控除が使えますか?
使えなくなる可能性があります。相続の時から譲渡の時まで、貸付けに使われたことがないことが要件の一つです(国税庁 No.3306)。個別の判断は税理士・税務署にご確認ください。
契約の前に、書面で何を確かめればよいですか?
家賃の見直しの条件、所有者からの解約の条件、空室時の家賃の扱い、修繕費と原状回復の負担の4点です。サブリース事業者には、契約前の書面の交付と説明が法律で義務づけられています(賃貸住宅管理業法30条)。
この記事の根拠
- 一般社団法人移住・住みかえ支援機構(JTI)「マイホーム借上げ制度のあらまし」(ページ表示の更新日 2026-04-24)(確認日 )
- JTI「マイホーム借上げ制度 ご利用ガイド」(ページ表示の更新日 2026-04-24)(確認日 )
- 国土交通省「サブリース(賃貸住宅管理業法の適正化のための措置)」(確認日 )
- 賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年法律第60号)2条・28条・29条・30条・31条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 借地借家法(平成3年法律第90号)28条・32条・38条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 最高裁判所第三小法廷 平成15年10月21日判決(平成12年(受)第573号、民集57巻9号1213頁)(確認日 )
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(借家の家賃)(確認日 )
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(確認日 )
最終更新:2026年10月25日。制度の内容は2026年10月25日に確認した公式資料の時点です。
- JTIの「マイホーム借上げ制度のあらまし」と「ご利用ガイド」(ページ表示の更新日は2026年4月24日)
- 賃貸住宅管理業法・借地借家法(e-Gov法令検索)、国土交通省のサブリースの案内
- 最高裁判所 平成15年10月21日判決、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」、国税庁 No.3306
この記事は一般的な情報です。個別の契約は弁護士・宅地建物取引業者に、税額は税務署・税理士にご確認ください。