第6章 持ち続ける|持ち続ける
空き家の火災保険:住宅物件と一般物件の違い・入れない場合
空き家は住宅向けの火災保険で引き受けない保険会社があります。その場合は一般物件向けなどの契約を確認します。地震保険は居住の用に供する建物が対象です。
- 保険会社の公開FAQには、空家は住宅向けの火災保険で引き受けない、と書くものがあります。例外は、別荘や一時的な空き家などです。
- 親が亡くなったら、契約名義の変更が必要です。居住の用に供されなくなったときは、保険会社への連絡が求められる契約があります。
- 地震保険は居住の用に供する建物が対象です。他人への賠償は、建物の火災保険とは別の補償で備えます。
更新日:2026年(令和8年)10月17日。この記事は保険の募集や商品の推奨ではありません。契約の可否と保険料は、保険会社・取扱代理店に確認してください。
空き家の火災保険は、住宅物件と一般物件で何が違いますか。
住宅物件とは、損害保険料率算出機構の区分で、住居としてのみ使用する建物です。一般物件とは、オフィスビルや学校など、住宅・工場・倉庫のいずれにも当たらない建物です。
損害保険料率算出機構は、火災保険の参考純率を、住宅物件・一般物件・工場物件・倉庫物件の4区分で算出しています。住居として使っていない空き家が、住宅物件と一般物件のどちらで引き受けられるかは、保険会社の引受基準で決まります。公表資料に、空き家の区分を定めた記載は見当たりません。
| 項目 | 住宅物件向けの火災保険 | 一般物件向けの火災保険 |
|---|---|---|
| 対象の例 | 住居として使う建物 | 事務所・店舗・学校など |
| 空き家の引受 | 保険会社の公開FAQでは、引き受けないと書くものがある(次の節) | 民間の解説には、空き家を一般物件として扱う例が多い。引受は保険会社ごと |
| 地震保険 | 居住の用に供する建物は、火災保険に付帯できる | 居住の用に供しない建物は対象外(地震保険に関する法律2条) |
| 保険料 | 各社が決める。公表された統一の料金表はない | 同左 |
参考純率とは、料率算出団体が算出する純保険料率で、使用義務のない参考数値です(損害保険料率算出機構)。保険会社は、これを使っても、修正しても、使わず独自に算出してもかまいません。会社ごとに保険料が違う理由の1つです。
空き家は、なぜ火災保険に入れない、または断られることがありますか。
住宅向けの火災保険が、住居として使用される建物を対象としているためです。保険会社の公開FAQには、空家は引き受けない、と書くものがあります。
次の表は、3社の公開FAQの記載です。特定の商品の比較や推奨ではありません。最新の条件は、各社・代理店で確認してください。
| 保険会社(FAQの対象商品) | 空き家の扱い | 例外として挙げられている建物 |
|---|---|---|
| 東京海上日動(トータルアシスト住まいの保険) | 空家は引き受けできない | 別荘等の季節的に住居として使用される建物で、家財が常時備えられているもの |
| 三井住友海上(GK すまいの保険、同グランド) | 住居として使用される建物が対象のため、空家は契約できない | 別荘など。空き家の期間が一時的なもの(自分が住む予定、転勤中、賃貸の入居者を募集中など) |
| あいおいニッセイ同和損保(タフ・すまいの保険) | 空家を対象とするのは一部の火災保険商品。詳細は代理店へ | 別荘など季節的に住居として使用され、家財が常時備えられている建物 |
日本損害保険協会の火災保険標準例は、居住用建物に空家(売却用を除く)を含めています。常時居住の用に供しうる状態の別荘も含まれます。商品によって、空き家の扱いは違います。
入れないと言われたら、どう進めますか。
次の順で、事実を正確に伝えて確認します。
相続した空き家の火災保険は、名義変更や通知をどうすればよいですか。
契約者が亡くなったら、相続人への契約名義の変更手続きが必要です。東京海上日動と三井住友海上のFAQが、そう案内しています。保険を解約する場合も、先に名義変更が必要とされています。
名義変更は、不動産の相続登記とは別の、保険会社への手続きです。相続登記には期限があります。最初にやることで順番を確認できます。
| 場面 | 必要になること | 根拠 |
|---|---|---|
| 契約者が亡くなった | 相続人から取扱代理店に連絡し、契約名義を変更する。代理店は保険証券や更新案内に載っている | 東京海上日動・三井住友海上のFAQ |
| 契約するとき | 建物の構造・用途・所在地など、告知事項を正確に知らせる(告知義務) | 日本損害保険協会 Q&A問59 |
| 構造・用法・所在地を変えたとき | 遅滞なく通知する(通知義務)。通知がないと、契約の解除や保険金の不払いになりうる | 同上、標準例 |
| 建物が居住の用に供されるものでなくなったとき | 標準例では、引受の継続ができないため、解約または解除になる。他の商品で引き受けられる場合は、新たに契約できる | 標準例 |
| 建物を売却・譲渡するとき | 直ちに通知する | 標準例 |
故意または重大な過失で告知や通知をしなかった場合は、契約が解除され、保険金が支払われないことがあります。告知しなかった事実と損害に因果関係がないときは、支払われるとされています(日本損害保険協会)。
標準例は、建物が居住の用に供されるものでなくなった場合を、遅滞なく通知するその他の事項に挙げています。連絡の時期と内容は、契約している保険会社の約款で確認してください。
空き家の火災保険料は、いくらかかりますか。
公表資料に、空き家の火災保険料の平均や相場は見当たりません。保険料は保険会社が決めるため、金額は見積りで確認します。
保険会社は、参考純率を使う場合も、事業経費などに当たる付加保険料率を独自に算出します(損害保険料率算出機構)。参考純率の数値は、実際に契約者へ適用される保険料とは異なるため、開示されていません。
民間の記事には、空き家になって保険料が約2倍や3倍になった、と書くものがあります。公表資料で確認できないため、この記事では数字を採用しません。
見積額が出たときの、年額と10年間の目安を表にします。金額は見本の数字で、実際の保険料ではありません。固定資産税等は、持ち続けるコストの見本(年84,000円)を使いました。
| 見積額(年額・仮の金額) | 10年間の保険料 | 見本の固定資産税等(年84,000円)と合わせた年額 |
|---|---|---|
| 30,000円 | 300,000円 | 114,000円 |
| 60,000円 | 600,000円 | 144,000円 |
| 90,000円 | 900,000円 | 174,000円 |
自分の数字は、保有コストの試算に、見積額と課税明細書の金額を入れて、年と10年の合計を確認できます。
空き家の所有者の賠償責任には、保険でどう備えますか。
所有者が負う賠償責任(民法717条)は、建物の損害を補う火災保険とは別の補償で備えます。補償の対象は、商品と特約で違います。
民法717条は、土地の工作物の設置または保存に瑕疵があり、他人に損害を生じたときの責任を定めています。まず占有者が賠償し、占有者が必要な注意をしたときは、所有者が賠償しなければなりません。外壁の落下や塀の倒壊が例です。
隣家への延焼は、別の法律が関わります。失火ノ責任ニ関スル法律は、民法709条の責任を失火には適用しないと定め、失火者に重大な過失があるときは例外としています。重大な過失かどうかは、事案ごとの判断です。
| 補償の種類 | 公表資料にある内容 | 空き家で確認すること |
|---|---|---|
| 個人賠償責任の特約(日常生活賠償) | 日常生活や、住宅の所有・使用・管理に起因する偶然な事故で、法律上の賠償責任を負った場合を補償(東京海上日動の特約のFAQは「居住に使用する住宅」、あいおいニッセイ同和損保のFAQは「別荘を含む住宅」と記載) | 住んでいない空き家が、対象の「住宅」に当たるか |
| 施設賠償責任保険 | 施設の安全性の維持・管理の不備や構造上の欠陥による対人・対物事故を補償。事故例に「施設の壁が倒壊し、通行人にケガをさせた」。東京海上日動の案内は法人向け | 個人が所有する空き家に使えるか |
| 空家管理事業者向けの賠償責任保険(一例) | 2017年に発売。所有者が空家を原因とする事故(民法717条)で負う賠償責任も対象。対象の空家は居住の用に供していない住宅で、別荘・賃貸用・売却用は除く | 現在も販売されているかは、公表資料では確認できていません。保険会社・代理店に確認してください。 |
どの補償が空き家の事故に使えるかは、保険証券と約款の「被保険者」「住宅」「施設」の定義で決まります。保険会社に、空き家の事故が対象かを確認してください。
保険に入っていても、事故を防ぐ注意は所有者に残ります。屋根・外壁・塀・樹木の点検は、持ち続けるコストの管理の基本を参照してください。
地震保険は、空き家にも付けられますか。
地震保険は、居住の用に供する建物と生活用動産だけが対象で、火災保険に付帯して契約します。住む予定のない空き家は、付けられないことがあります。
地震保険に関する法律2条2項は、地震保険契約の要件を次のように定めています。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 保険の目的 | 居住の用に供する建物または生活用動産のみ(1号) |
| 契約の形 | 特定の損害保険契約に附帯して締結する(3号) |
| 保険金額 | 付帯される契約の保険金額の30%以上50%以下。政令の金額が上限(4号) |
財務省の資料では、空き家や別荘は、常時、居住のために使用する状態であれば対象になります。事務所や店舗のみの建物は対象外です。限度額は、建物5,000万円、家財1,000万円です。地震・噴火・津波による火災や損壊は、通常の火災保険では補償されません。
モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。 火災保険の保険金額が1,500万円なら、付帯できる地震保険の保険金額は450万円から750万円です。計算は1,500万円×30%〜50%です。
地震保険を付けられない空き家では、地震による損壊と火災の損害は、火災保険でも補償されません。この点を踏まえて、持ち続けるか、売るかを比べます。
空き家の火災保険は、いつ見直せばよいですか。
空き家になったとき、名義が変わるとき、更新・満期、売却や賃貸や解体を決めたときに、保険会社に連絡して契約内容を確認します。
| タイミング | 確認すること |
|---|---|
| 住まなくなる予定が決まった | 通知が必要か。住宅向けの契約を続けられるか、一時的な空き家と扱われるか |
| 契約者が亡くなった、相続した | 契約名義の変更。取扱代理店の連絡先 |
| 更新・満期 | 見積りを取り、保険金額、地震保険、賠償責任、保険料を比べる |
| 売却・譲渡が決まった | 標準例では、直ちに通知する。売却用の空き家の扱いも確認する |
| 貸す、店舗や事務所など使い方を変える | 建物の用法の変更は、標準例の通知事項に当たる |
| 解体する | 解約の手続き。解約返戻金は、原則として未経過期間分より少なくなる(標準例) |
保険料は、持ち続けるコストの一部です。使う予定がない場合は、固定資産税や管理費とあわせて年と10年の合計を出し、出口と比べます。全体は持ち続けるコストとリスクに、更地にしたときの税は更地の固定資産税にあります。
この記事で使える計算ツール
計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。
よくある質問
空き家でも火災保険に入れますか。
入れる場合があります。ただし、住宅向けの商品では空家を引き受けない会社があります。別荘や一時的な空き家は例外とされる例があるため、保険会社に状態を伝えて確認します。
空き家になると、火災保険料は高くなりますか。
公表資料では確認できません。保険料は保険会社が決めるため、同じ建物でも会社や商品で違います。見積りで比べてください。
親が亡くなったあと、火災保険はそのままでよいですか。
契約者が亡くなったら、相続人への契約名義の変更手続きが必要です。保険を解約する場合も、先に名義変更が必要とされています。取扱代理店は保険証券で分かります。
空き家に地震保険は付けられますか。
地震保険は居住の用に供する建物が対象です(地震保険に関する法律2条)。空き家は、常時居住のために使用する状態であれば対象になります(財務省)。住む予定がない空き家は、付けられないことがあります。
この記事の根拠
- 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率」(確認日 )
- 日本損害保険協会「火災保険標準例」(確認日 )
- 日本損害保険協会「損害保険Q&A 問59」(確認日 )
- 東京海上日動 公式FAQ「空家でも契約できますか」(確認日 )
- 三井住友海上 公式FAQ「空家でも契約できますか」(確認日 )
- あいおいニッセイ同和損保 公式FAQ「空家に火災保険を掛けられますか」(確認日 )
- 東京海上日動 公式FAQ「契約者が亡くなりました」(確認日 )
- 三井住友海上 公式FAQ「契約者が亡くなった場合の手続」(確認日 )
- 地震保険に関する法律 2条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 財務省「地震保険制度」(確認日 )
- 民法 717条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 失火ノ責任ニ関スル法律(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 東京海上日動 公式FAQ「個人賠償責任補償特約」(確認日 )
- あいおいニッセイ同和損保 公式FAQ「他人に損害を与えた場合の特約」(確認日 )
- 東京海上日動「施設賠償責任保険」(確認日 )
- 三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保 ニュースリリース(2017年1月10日)(確認日 )
最終更新:2026年10月17日。確認日は出典ごとに2026年10月17日です。
この記事は、公表資料にもとづく一般的な情報です。保険の募集や、特定の保険会社・商品の推奨ではありません。契約の可否、保険料、補償の範囲は、保険会社・取扱代理店にご確認ください。個別の法的判断は弁護士に、税の判断は税理士・税務署にご確認ください。