第3章 判断|ツール
空き家の3,000万円控除 判定ツール
空き家の3,000万円控除が使えるかを、建築年・居住状況・売却期限・相続人の数などの質問で判定します。控除後の税額と、取得費加算との比較も表示するツールです。
- 使えるかどうかを、建築年・居住状況・売り方・期限・売却代金・売る相手の6つの観点で判定し、「対象」「対象外」「要確認」と理由を表示します。
- 相続人が3人以上のときは、令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡で上限が1人2,000万円になります。人数から自動で切り替えます。
- 取得費加算の特例とは併用できません。相続税額などを入れると、同じ条件で税額を並べます。
最終更新:2026年10月17日。判定ルールの基準は、国税庁タックスアンサーの令和8年(2026年)4月1日現在と、現行の租税特別措置法です。
このツールは一般的な制度にもとづく概算です。税理士法の制限のため、個別の税務相談や申告書の作成には対応しません。最終の判断は、税務署または税理士にご確認ください。
このツールで何がわかり、どんな質問に答えますか?
空き家の3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例、租税特別措置法35条3項)が使えるかどうか、売る期限、控除後の税額、取得費加算との税額の比較が、この判定ツールでわかります。
答える質問は、次の表のとおりです。登記事項証明書と、相続開始日が分かるものを手元に用意してください。
| 段階 | 質問 | 根拠 |
|---|---|---|
| 家の条件 | 売る人は、相続または遺贈で家と敷地を取得した相続人か | 租特法35条3項 |
| 家の条件 | 昭和56年(1981年)5月31日以前の建築か。区分所有建物でないか | 同35条5項1号・2号 |
| 家の条件 | 相続の直前、被相続人は一人暮らしだったか。老人ホーム等に入所していたか | 同35条5項3号、国税庁 No.3307 |
| 使い方 | 相続後、売るまで、事業・貸付け・居住に使っていないか。売る相手は親族など「特別の関係がある人」か | 国税庁 No.3306 |
| 売り方 | 家を残す、取り壊して敷地を売る、売ったあとに耐震化・取壊しをする、のどれか | 租特法35条3項各号 |
| 期限・金額 | 相続開始日と売却日、売却代金(他の相続人の売却分を含め1億円以下か)、相続人の数、他の特例の使用 | 同35条3項・4項・6〜7項 |
| 金額 | 売却価格、取得費、譲渡費用、自分の持分、被相続人の取得日 | 国税庁 No.3202、No.3258 |
判定は、どのような基準で「対象」「対象外」「要確認」になりますか?
判定は、各要件を個別に確認して決めます。1つでも満たさない要件があれば「対象外」、すべて満たし、確認できない要件がなければ「対象」、確認できない要件が残れば「要確認」です。
| 結果 | 条件 |
|---|---|
| 対象 | 全要件を満たすと入力された。控除額、期限、税額、確認書・申告書類の案内を表示する |
| 対象外 | 1つ以上の要件を満たさない。満たさない要件と、見直す点(後の節)を表示する |
| 要確認 | 「不明」の回答、または買主が売却後に工事をする場合。確認先(登記事項証明書、市区町村、税務署)と理由を表示する |
売ったあとの工事について、条文は、売った日から翌年2月15日までに耐震基準に適合した場合、または全部の取壊しがされた場合と定め(租税特別措置法35条3項)、工事をする人を限定していません。国税庁 No.3306 は工事をする人を明記せず、国土交通省の特例の解説ページは、買主が解体する場合に「譲渡後の買主の協力が不可欠」と説明しています。そのため、ツールは「要確認」とし、売買契約書への工事の明記と、税務署・市区町村への事前確認を案内します。
期限は、どう計算しますか?
空き家特例は、次の2つの期限を、どちらも満たす売却が対象です。1つ目は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日です。2つ目は、制度の適用期間の終わりである2027年(令和9年)12月31日です(租税特別措置法35条3項)。
| 相続開始日(例) | 1つ目の期限 | 2つ目の期限 | 実際の最後の日 |
|---|---|---|---|
| 2023年8月10日 | 2026年12月31日 | 2027年12月31日 | 2026年12月31日 |
| 2024年5月10日 | 2027年12月31日 | 2027年12月31日 | 2027年12月31日 |
| 2025年3月1日 | 2028年12月31日 | 2027年12月31日 | 2027年12月31日 |
表の日付は見本で、1つ目の期限は相続開始年の3年後の12月31日として算出しています。売却日が2027年12月1日なら、2023年8月10日の相続は期限後(対象外)、ほかの2つは期限内です。2027年12月31日より後への延長は、2026年10月17日時点の現行条文からは確認できていません。国土交通省は、令和9年度税制改正要望(令和8年8月)で令和13年12月31日までの4年延長などを求めていますが、決まった内容ではありません。
譲渡の日は、原則として引渡しがあった日で、納税者の選択により契約の効力発生日にもできます(所得税基本通達36-12)。空き家特例の期限判定にどちらを使えるかは国税庁 No.3306 に記載がないため、年末に近い売却では税務署に確認してください。
控除額と税額は、どう計算しますか?
控除額は、上限額と、その家と敷地の譲渡所得の金額のうち、小さいほうです。上限は、相続人が1〜2人なら3,000万円、3人以上なら2,000万円です(令和6年1月1日以後の譲渡、租税特別措置法35条4項)。
譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用
控除額 = min(上限額、譲渡所得)
課税所得 = 譲渡所得 − 控除額
税額 = 課税所得 × 税率(長期20.315%、短期39.63%)
取得費が分からない場合や、実際の取得費が売った金額の5%を下回る場合は、5%を取得費にします(国税庁 No.3258)。税率の内訳は、長期が所得税15%・復興特別所得税(所得税額の2.1%)・住民税5%、短期が所得税30%・復興特別所得税・住民税9%です(国税庁 No.3208、No.3211)。2027年(令和9年)1月1日以後に生ずる所得は、復興特別所得税が1.1%、防衛特別所得税が1%に分かれますが、合計は同じ2.1%です(国税庁)。
計算例:売却5,000万円の家を1人で相続したとき、税額はいくらになりますか?
売却価格5,000万円、取得費が不明、譲渡費用300万円の家を、1人で相続して長期で売り、要件を満たす場合、3,000万円控除で税額は9,040,175円から2,945,675円に下がります。数字はすべて見本で、端数処理は省略しています。
入力の例は、次のとおりです。
| 入力項目 | 入力の例 |
|---|---|
| 売る人・家 | 相続人1人。昭和53年(1978年)築、区分所有でない。被相続人が一人で居住し、相続後は空き家のまま。取り壊して敷地を売り、売る相手は親族以外 |
| 日付 | 相続開始日 2024年5月10日、売却日 2026年12月10日、所有期間は長期 |
| 金額 | 売却価格5,000万円、取得費は不明(概算5%)、譲渡費用300万円(取壊し費用などの見本) |
途中の計算は、次のとおりです。
| 順 | 項目 | 計算 | 結果(円) |
|---|---|---|---|
| 1 | 期限の確認 | 1つ目=2027年12月31日、2つ目=2027年12月31日 | 売却日は期限内 |
| 2 | 取得費(概算) | 50,000,000×5% | 2,500,000 |
| 3 | 譲渡所得 | 50,000,000−2,500,000−3,000,000 | 44,500,000 |
| 4 | 控除額 | min(30,000,000、44,500,000) | 30,000,000 |
| 5 | 課税所得 | 44,500,000−30,000,000 | 14,500,000 |
| 6 | 所得税・復興特別所得税・住民税 | 14,500,000×15%=2,175,000、その2.1%=45,675、14,500,000×5%=725,000 | 2,945,675 |
結果は、次のとおりです。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 判定 | 対象(期限内、1億円以下、相続人1人) |
| 税額 | 控除あり2,945,675円、控除なし9,040,175円(44,500,000×20.315%)。差は6,094,500円(30,000,000×20.315%) |
相続人が3人以上の見本は、売却7,500万円・3人で均等のとき、1人あたりの譲渡所得2,300万円から上限2,000万円を引いた300万円が課税され、税額は609,450円(控除なしは4,672,450円)です。詳しい計算は、相続した家を売る税金に載せています。
取得費加算との比較は、どう表示しますか?
取得費加算の特例とは、相続した財産を一定の期間内に売ったとき、納めた相続税のうち、売った財産に対応する部分を取得費に加えられる特例です(租税特別措置法39条、国税庁 No.3267)。空き家特例とは、同じ家と敷地について併用できません。
取得費加算が使えるのは、相続税が課税され、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売る場合です(国税庁 No.3267)。ツールは、相続税額などを入力すると、特例なし・空き家特例・取得費加算の3つの税額を並べて表示します。加算額は、次の式で求めます。上限は、特例を使わない場合の譲渡益です。
加算額 = 相続人の相続税額 × (売った財産の相続税評価額 ÷ 相続人の取得財産の価額などの合計)
ツールが示すのは、計算上、税額が最も小さい案です。特例の選択の助言ではないため、税務署または税理士に確認してください。
結果が「対象外」「要確認」のとき、何を見直しますか?
「対象外」と出た場合、満たさなかった要件ごとに、次の点を確認します。見直せる点と、見直せない点があります。
- 建築時期、他の居住者、相続後の貸付け・居住は、あとから変えられません。取得費加算が使えるか(相続税の有無)を確認します。
- 売却代金が1億円を超える場合は、分割して売った分も合算されます(35条6〜7項)。売る相手が親族などの場合は、相手を見直します。
- 期限を過ぎそうな場合は、2つの期限を再計算し、売却日を見直します。
- 耐震基準に適合しない場合は、取り壊して敷地を売る、または売ったあとの工事を契約に入れる方法があります。
計算フォーム
計算フォームは、本文の後に置く追加機能です。入力欄が動かない環境でも、本文の説明と静的な計算例で内容を確認できます。
よくある質問
相続人が3人以上のとき、控除の上限は1人いくらですか?
令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡では、1人2,000万円です。家屋と敷地を取得した相続人の数で決まります。
取得費加算と空き家の3,000万円控除は、併用できますか?
同じ家と敷地については併用できません。租税特別措置法35条3項が、39条の適用を受けるものを除いています。
ツールの判定が「対象」なら、控除を必ず受けられますか?
受けられるとは限りません。確定申告に、市区町村が交付する確認書などを添付し、税務署が適用を判断します。
この記事の根拠
- 国税庁 No.3306 空き家を売ったときの特例(確認日 )
- 国税庁 No.3307 老人ホーム等に入所していた場合(確認日 )
- 国税庁 No.3267 相続財産の取得費の特例(確認日 )
- 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算(確認日 )
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額(確認日 )
- 国税庁 No.3211 短期譲渡所得の税額(確認日 )
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき(確認日 )
- 国税庁 No.4205 相続税の申告と納税(確認日 )
- 租税特別措置法35条・39条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 国土交通省 空き家の3,000万円特別控除(特例の解説)(確認日 )
- 国土交通省 令和9年度税制改正要望事項(令和8年8月)(確認日 )
- 国税庁 所得税基本通達36-12(確認日 )
- 国税庁 防衛特別所得税のあらまし(令和9年1月以後)(確認日 )
確認日はすべて2026年10月17日です。
見本の数字は、出典の税率と条文から算出した値です。計算結果は概算です。