第5章 売却後|売却後の手続き
不動産売却の確定申告:相続した家の期限・書類・保険料
相続した家を売った翌年の2月16日から3月15日に、確定申告をします。3,000万円控除を使う場合は、税額が0円でも申告が必要です。
- 申告期間は、家を売った年の翌年の2月16日から3月15日です。期限日が日曜日や祝日のときは、翌日が期限になります。
- 空き家の3,000万円控除や取得費加算を使うには、確定申告が条件です。控除で税額が0円になっても、申告しないと適用されません。
- 売却益は、翌年度の国民健康保険料や介護保険料の計算に入ることがあります。特別控除の前後どちらの金額を使うかは自治体ごとに違うため、売る前に役所へ確認します。
最終更新:2026年10月17日。法令の基準日は、国税庁タックスアンサーの令和8年(2026年)4月1日現在です。
この記事は一般的な制度の説明です。個別の税額や申告の要否は、税務署または税理士にご確認ください。
相続した家を売ったら、確定申告はいつまでにしますか?
相続した家を売った場合の確定申告は、売った年の翌年の2月16日から3月15日までに行います。申告と納付の期限は、原則として3月15日です(国税庁 No.2020)。
期限日が日曜日・国民の祝日・その他の休日に当たるときは、その翌日が期限とみなされます(国税通則法10条2項)。土曜日と12月29日〜31日も、政令でこの扱いの対象です(国税通則法施行令2条2項)。
| 売った年 | 申告期間 | 3月15日の曜日 | 申告・納付の期限 |
|---|---|---|---|
| 2025年(令和7年) | 2026年2月16日〜3月15日 | 日曜日 | 2026年3月16日(月) |
| 2026年(令和8年) | 2027年2月16日〜3月15日 | 月曜日 | 2027年3月15日(月) |
| 2027年(令和9年) | 2028年2月16日〜3月15日 | 水曜日 | 2028年3月15日(水) |
曜日は暦から算出しました。実際の期限は、毎年の国税庁の案内で確認してください。
3,000万円控除で税額が0円でも、申告は必要ですか?
必要です。空き家の3,000万円特別控除は、確定申告書に適用を受ける旨を記載し、計算の明細書などを添付した場合に限って適用されます(租税特別措置法35条12項)。
取得費加算の特例も同じです。確定申告書か修正申告書に、適用を受ける旨の記載と、計算の明細書の添付が必要です(同39条2項)。
申告を忘れた場合に、やむを得ない事情があれば救済される定めもあります(同35条13項、39条3項)。ただし、税務署長が認めた場合に限られます。期限に遅れたときの扱いは、早めに税務署へ相談してください。
申告が必要かどうか迷うのは、どんなときですか?
次のような場合は、申告が必要かどうかを税務署または税理士に確認してください。
- 売却益が出たが、3,000万円控除で課税所得が0円になる見込みのとき(申告が適用の条件です)
- 売却益が出ず、損失になったとき
- 相続人が複数で、誰がいくらで売ったかが決まっていないとき
売却益の見込みは、相続した家の売却手取り計算や、空き家の3,000万円控除 判定ツールで計算できます。
確定申告に必要な書類は何ですか?
土地や建物を売った場合は、申告書の第一表・第二表に加えて、分離課税用の第三表と、譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]を使います(国税庁 No.2020、No.3306)。
空き家特例を使う場合の添付書類は、売り方で変わります(国税庁 No.3306)。
| 書類 | 家を残して売る | 取り壊して敷地を売る | 売ったあとに耐震化・取壊し |
|---|---|---|---|
| 譲渡所得の内訳書[土地・建物用] | 必要 | 必要 | 必要 |
| 登記事項証明書等(取得、昭和56年5月31日以前の建築、区分所有でないこと) | 必要(※1) | 必要(※1) | 必要(※1) |
| 被相続人居住用家屋等確認書 | 必要 | 必要 | 必要 |
| 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し | 必要(譲渡の日前2年以内) | 不要 | 工事完了後のもの(※2) |
| 売買契約書の写しなど(売却代金が1億円以下であることが分かるもの) | 必要 | 必要 | 必要 |
| 取壊し・耐震化の完了を示す書類 | 不要 | 不要 | 必要(※2) |
※1 登記事項証明書は、不動産番号などを記載した明細書を提出すれば、添付を省略できます。 ※2 売った日から、その年の翌年2月15日までに工事を完了した場合です。耐震基準適合証明書などは工事完了の日から申告書の提出日までに調査が終了したもの、取壊しは登記事項証明書などで取壊しを示すものです。令和6年(2024年)1月1日以後の譲渡に限ります。
取得費加算を使う場合は、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」と譲渡所得の内訳書を添付します(国税庁 No.3267)。
取得費や譲渡費用の金額が分かる領収書や請求書も、手元に用意してください。法令上の添付書類ではありませんが、内訳書の記入に使います。
被相続人居住用家屋等確認書は、いつまでに取りますか?
確定申告の期間に入る前に、市区町村から交付を受けておく必要があります。交付までの日数は、自治体によって約1週間から3週間まで幅があり、2月〜3月は長引くことがあります。
取り方は、被相続人居住用家屋等確認書の取り方で自治体別の日数と必要書類を整理しています。
売却益は、翌年度の住民税・保険料・扶養にどう影響しますか?
売却益は、翌年度の住民税や国民健康保険料、介護保険料などの計算に入ることがあります。ただし、3,000万円控除などの特別控除を差し引いた後の金額を使うか、前の金額を使うかは、制度や自治体で違います。
制度ごとに、分かっている範囲を整理します。
| 項目 | 売却益の扱い | 特別控除の扱い | 根拠・確認先 |
|---|---|---|---|
| 住民税(所得割) | 前年の所得で算定する | 長期の住民税率は5% | 地方税法313条1項、国税庁 No.3208 |
| 国民健康保険料 | 所得割の算定に土地・建物の譲渡所得(分離課税)が入る | 川崎市は「特別控除の適用がある場合は、特別控除後の所得を用います」と案内 | 川崎市FAQ(更新2025年1月1日) |
| 国保料の軽減判定 | 軽減の判定にも譲渡所得が使われる | 岡山市は、軽減の判定には特別控除前の譲渡所得が適用され、軽減が受けられないことがあると案内(ページ表示日2012年1月1日、5,000万円控除の例) | 岡山市のページ |
| 介護保険料(65歳以上) | 保険料の段階を決める「合計所得金額」に入る | 2016年の厚生労働省の部会資料は、合計所得金額には特別控除が控除されていないと整理 | 厚生労働省資料(平成28年2月17日)。現在の取扱いは自治体に確認 |
| 扶養控除・配偶者控除 | 扶養される人の合計所得金額が基準以下であることが要件 | 国税庁の用語集は、長(短)期譲渡所得を特別控除前の金額で合計所得金額に加えると説明 | 国税庁 No.1180、専門用語集 |
| 後期高齢者医療・高額療養費 | 保険料や自己負担の区分に所得が使われる | 保険者ごとに異なり、公的な資料で一律には示されていない | 広域連合・加入する医療保険に確認 |
扶養の基準は、扶養親族の合計所得金額が58万円以下(令和7年分)、令和8年分からは62万円以下です(国税庁 No.1180)。
同じ売却益でも、見る金額が変わるのはなぜですか?
制度ごとに、所得の定義が違うためです。次は、相続した家を売る税金の見本A(譲渡所得1,800万円、3,000万円控除で課税所得0円)に当てはめた、見方の違いの例です。見本の数字であり、実在の事例ではありません。
| 見方 | 使われる金額(見本) | 説明 |
|---|---|---|
| 所得税・住民税の課税所得 | 0円 | 3,000万円控除で、利益1,800万円が全額差し引かれる |
| 国保料の所得割(川崎市の案内) | 0円 | 特別控除後の所得を使う |
| 軽減判定(岡山市の案内。2012年表示) | 1,800万円 | 特別控除前の譲渡所得を使う |
| 介護保険の合計所得金額(2016年の国の資料) | 1,800万円 | 特別控除を控除していない |
| 扶養控除の合計所得金額(国税庁の用語集) | 1,800万円 | 特別控除前の金額を加える |
つまり、税金は0円でも、保険料の計算では1,800万円の所得があるものとして扱われる制度があり得ます。現在の取扱いは、売る前に役所の担当課へ確認してください。
役所には、何を確認すればよいですか?
次の2点を、国民健康保険・介護保険・後期高齢者医療の担当課に聞くと、売却後の保険料の見通しが立てやすくなります。
- 土地・建物の譲渡所得は、特別控除の前の金額と後の金額のどちらで保険料を計算しますか。
- 保険料の軽減や自己負担割合の判定にも、同じ金額を使いますか。
保険料の通知が届く時期や、試算の窓口は自治体ごとに違います。
兄弟姉妹で売った(換価分割)とき、誰がいくらで申告しますか?
換価分割とは、不動産を売り、その代金を相続人の間で分ける遺産分割の方法です。申告する人と割合は、売った時点で代金の取得割合が決まっていたかどうかで変わります(国税庁 質疑応答事例、令和7年8月1日現在)。
| 場合 | 申告の割合 |
|---|---|
| 売った時点で、代金の取得割合が決まっている(法定相続分、または事前に決めた割合) | その割合に応じて、各人が申告する |
| 売った時点で、取得割合が決まっておらず、あとで分ける | 売った時点の所有割合(法定相続分)で申告する |
| 上の場合で、申告期限までに代金を分け、相続人全員が分けた割合で申告した | その申告が認められる |
| 上の場合で、申告期限までに代金を分けていない | 法定相続分での申告が確定し、あとで分けても更正の請求はできない |
控除の使い方は、誰が売主として申告するかで変わります。名義や遺産分割協議書の書き方によって、結果が異なります。進める前に、税務署または税理士に確認してください。
代表の相続人1人の名義で売り、代金を他の相続人に分ける方法があります。国税庁の質疑応答事例では、遺産分割の調停による換価分割で、1人の名義にした相続登記が換価のための便宜にすぎず、代金が調停の内容どおりに実際に分配される場合は、贈与税の課税は問題にならないとしています。協議で分ける場合は、遺産分割協議書に換価分割であることと分配の割合を書いたうえで、進める前に税理士に確認してください。
申告は、どこでどう進め、税金はどう納めますか?
申告先は、所轄の税務署です(国税庁 No.2020)。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、画面の案内に沿って金額を入力すると、必要な付表や明細書も自動で作成されます。
申告書を出したあとに、税務署から納付書や納税通知書は送られません。自分で次のいずれかの方法で納めます(国税庁 No.2020)。
- 振替納税
- ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)
- インターネットバンキング等
- クレジットカード納付
- スマホアプリ納付
- コンビニ納付(QRコード)
- 現金で納付(納付書を使用)
売却代金が入った段階で、納税分を別に取り分けておくと、納期限に慌てずに済みます。
売却後の家計や保険料が不安なときは、どうしますか?
売却益が出る年は、手取りのお金が増える一方で、翌年度の保険料や自己負担が上がることがあります。見通しが立たないときは、役所の担当課に確認するほか、ファイナンシャルプランナーに相談する方法もあります。
無料で相談できる窓口もあります。相談の内容、費用、提携する保険会社などの条件は、各サービスの公式ページで確認してください。
この記事で使える計算ツール
計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。
よくある質問
不動産を売ったら、確定申告はいつまでにしますか?
売った年の翌年の2月16日から3月15日までです。期限日が日曜日や祝日のときは、その翌日が期限になります。
3,000万円控除で税金が0円なら、確定申告は不要ですか?
必要です。控除は、確定申告書に適用を受ける旨を記載し、明細書を添付した場合に限って適用されます(租税特別措置法35条12項)。
家を売ると、国民健康保険料は上がりますか?
売却益が所得割の計算に入ることがあり、上がる場合があります。特別控除の前後どちらの金額を使うかは、自治体で違います。売る前に担当課へ確認してください。
相続人3人で売ったとき、誰が申告しますか?
売った時点で代金の取得割合が決まっていれば、その割合で各人が申告します。決まっていなければ、法定相続分が基本です。
申告書は何を使いますか?
申告書の第一表・第二表と、分離課税用の第三表、譲渡所得の内訳書[土地・建物用]を使います。確定申告書等作成コーナーで自動作成できます。
この記事の根拠
- 国税庁 質疑応答事例「遺産の換価分割のための相続登記と贈与税」(令和7年8月1日現在の法令等に基づく)(確認日 )
- 国税庁 タックスアンサー No.2020 確定申告(令和8年4月1日現在法令等)(確認日 )
- 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(確認日 )
- 国税庁 タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(確認日 )
- 国税庁 タックスアンサー No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)(確認日 )
- 国税庁 タックスアンサー No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(確認日 )
- 国税庁 タックスアンサー No.1180 扶養控除(令和8年4月1日現在法令等)(確認日 )
- 国税庁 専門用語集「合計所得金額」(確認日 )
- 国税庁 質疑応答事例 未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告とその後分割が確定したことによる更正の請求、修正申告等(令和7年8月1日現在)(確認日 )
- e-Gov法令検索 国税通則法(10条)(確認日 )
- e-Gov法令検索 国税通則法施行令(2条)(確認日 )
- e-Gov法令検索 租税特別措置法(35条・39条)(確認日 )
- e-Gov法令検索 地方税法(313条)(確認日 )
- 川崎市 国民健康保険料の算定(土地・建物の譲渡所得の扱い)FAQ(公開2022年4月1日・更新2025年1月1日)(確認日 )
- 岡山市 譲渡所得があった場合の保険料の扱い(ページ表示日2012年1月1日)(確認日 )
- 厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会(第55回)資料5 介護保険制度における所得指標の見直しについて(平成28年2月17日)(確認日 )
確認日はすべて2026年10月17日です。
- 国税庁 タックスアンサー No.2020、No.3306、No.3267、No.3202、No.3208、No.1180(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 質疑応答事例(譲渡所得)未分割遺産を換価したことによる譲渡所得の申告(令和7年8月1日現在)
- e-Gov法令検索 国税通則法10条2項、国税通則法施行令2条2項、租税特別措置法35条・39条、地方税法313条1項
- 川崎市FAQ、岡山市のページ、厚生労働省の部会資料(保険料の扱いの例。日付は表に記載)
- 曜日・見本の数字は、上記の制度から算出した値です
個別の判断は、税務署または税理士にご確認ください。