第4章 実行|活かす
空き家を貸す収支シミュレーション(エクセル無料):家賃・空室・修繕・税金から手残りを計算
空き家を貸したときの手残りは、家賃×入居率から管理費・固定資産税・保険・修繕を引いて求めます。無料エクセルで自己管理・管理委託・借上げを並べて比べられます。
- 家賃・入居率・固定資産税・保険・修繕・リフォーム費を入れると、自己管理・管理委託・借上げ(サブリース)の3列で、年間の手残りと10年の累計、リフォーム費の回収年数が出ます。
- 家賃・入居率・管理委託料率・借上げ賃料の割合に、公的な相場の数字はありません。エクセルは空欄にしてあり、自分で調べた数字を入れます。
- 相続した家を貸すと、空き家の3,000万円控除の要件を満たさなくなります(国税庁 No.3306)。売る可能性があるなら、貸す前に確かめます。
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シートは3枚です。1枚目が入力と結果、2枚目が記入例(見本・架空)、3枚目が入力の調べ方です。黄色の欄に入力し、灰色の欄は数式で自動計算されます。
更新日:2026年(令和8年)10月25日。制度の内容は、2026年10月25日に確認した公式資料の時点です。
このエクセルでは、何がわかりますか?
空き家を貸す収支シミュレーションとは、想定家賃と費用を入力すると、貸したときの年間の手残り(税引前)を自動で計算する表です。自己管理、管理委託、借上げ(サブリース)の3通りを同じ画面で並べて比べます。
| 結果 | 内容 |
|---|---|
| 年間の家賃収入 | 想定家賃×12か月×入居率。借上げは、想定家賃×賃料の割合×12か月 |
| 年間の支出 | 管理委託料、固定資産税・都市計画税、火災保険、修繕積立、募集・入替えの費用、交通費、その他 |
| 年間・月あたりの手残り(税引前) | 家賃収入−支出 |
| 10年の累計 | 年間の手残り×10。リフォーム費を引く前と引いた後 |
| リフォーム費の回収年数 | リフォーム費÷年間の手残り |
3方式の違いは、入居者に貸す人です。自己管理と管理委託は、貸主が所有者本人です。借上げは、事業者が所有者から借りて入居者に貸し直します。家賃の減額や解約のルールは3方式の比較表で整理しています。
入力欄には、何をどこで調べて入れますか?
入力は、共通の6項目と、方式ごとの6項目です。数字は課税明細書・保険証券・見積書・契約書(案)から取ります。ない項目は0を入れます。
| 入力 | 調べ方 | 注意 |
|---|---|---|
| 想定家賃(月額) | 同じ地域で広さ・築年数が近い賃貸の募集賃料を、賃貸情報サイトや地元の不動産会社で3〜5件調べる | 募集賃料は「募集の値」で、成約した賃料ではない |
| 入居率 | (12−空室の月数)÷12。空室が年1.2か月なら90% | 公的な代表値は確認できていない |
| 固定資産税・都市計画税 | 毎年の納税通知書に付く課税明細書で、土地と家屋の年額を合計する | 都市計画税は市街化区域内が対象。市街化調整区域内にはかからない |
| 火災保険料 | 契約中の保険証券 | 貸家にしたときの条件は、保険会社に確認する |
| 初期のリフォーム費 | 複数社の見積書 | 追加工事は入っていない |
| 管理委託料率 | 管理会社の見積書 | 公的な統計はない |
| 借上げ賃料の割合 | 事業者の提案書・契約書(案) | 公的な統計はなく、契約ごとに違う |
| 修繕積立・入替え費用・交通費 | 見積りと、入居者が替わる間隔から年額にする | 公的な統計はない |
家賃の相場は、どう調べますか?
家賃は、国の統計に頼らず、自分の家に近い賃貸の募集賃料を並べて決めます。国土交通省の不動産情報ライブラリは、取引価格や地価の情報が中心で、賃料の情報は載っていません(2026年10月25日確認)。
参考として、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」(2023年10月1日時点)では、民営借家(木造)の1か月当たり家賃の全国平均は54,409円です。築年数・間取り・地域が反映されていない平均なので、桁が合っているかの確認にとどめます。
固定資産税は、どこを見ますか?
固定資産税は、毎年の納税通知書に付く課税明細書を見ます。西宮市の案内では、課税明細書に所在、地番、地積、床面積、価格(評価額)、課税標準額が書かれています。税率は固定資産税が標準1.4%、都市計画税は上限0.3%です。市区町村で違うため、明細書の税額を入れます。
通知書が見当たらないときは、市区町村(東京23区は都税事務所)で評価証明書を取ります。年額のモデルは保有コストの試算にあります。
見本の数字では、手残りはいくらになりますか?
見本(架空)では、自己管理で年373,617円、管理委託で年344,236円、借上げで年308,326円が手元に残ります。リフォーム費100万円の回収は、約2.7〜3.2年です。
モデルケース(見本の数字)。実在の物件ではありません。
条件は、次のとおりです。エクセル2枚目の記入例と同じ数字です。
- 想定家賃:月54,409円(全国平均を借りた値。あなたの家の家賃ではありません)
- 入居率:90%(仮定)
- 固定資産税・都市計画税:年84,000円(保有コストの試算のモデルと同じ)
- 火災保険:年30,000円、修繕積立:年100,000円(仮定)
- 管理委託料率:5%(仮定)
- 借上げ賃料の割合:80%、空室のときも支払われる(仮定。相場ではありません)
- リフォーム費:100万円。募集・入替え・交通費は0円
| 項目 | 自己管理 | 管理委託 | 借上げ |
|---|---|---|---|
| 年間の家賃収入 | 587,617円 | 587,617円 | 522,326円 |
| 管理委託料 | 0円 | 29,381円 | 0円 |
| 固定資産税・都市計画税 | 84,000円 | 84,000円 | 84,000円 |
| 火災保険料 | 30,000円 | 30,000円 | 30,000円 |
| 修繕積立 | 100,000円 | 100,000円 | 100,000円 |
| 年間の支出の合計 | 214,000円 | 243,381円 | 214,000円 |
| 年間の手残り | 373,617円 | 344,236円 | 308,326円 |
| 10年の累計(リフォーム費を引く前) | 3,736,170円 | 3,442,360円 | 3,083,260円 |
| 10年の累計(100万円を引いた後) | 2,736,170円 | 2,442,360円 | 2,083,260円 |
| リフォーム費の回収年数 | 2.7年 | 2.9年 | 3.2年 |
手残りが最も多いのは自己管理ですが、見回り・募集・修繕の手配は所有者が行います。見本では交通費と入替え費用を0円にしているため、遠方の家では減ります。
結果は、どう読みますか?
結果は、手残りがプラスか、リフォーム費を何年で回収できるか、入居率が下がっても成り立つかの3点で読みます。
| 入居率 | 年間の手残り | リフォーム費100万円の回収年数 |
|---|---|---|
| 100% | 438,908円 | 2.3年 |
| 90% | 373,617円 | 2.7年 |
| 80% | 308,326円 | 3.2年 |
| 70% | 243,036円 | 4.1年 |
入居率が10ポイント下がるごとに、見本では手残りが約65,000円減ります。入居率を低めにしても成り立つかを、確かめます。
借上げの列は、空室のときも賃料が支払われるかで変わります。見本で「いいえ」を選び、入居率90%をかけると、借上げの手残りは年256,094円に下がります。契約書の免責期間の書き方を、書面で確かめます。
借上げ(サブリース)の賃料は、契約の条件にかかわらず減額を請求される場合があります(借地借家法32条)。ただし、定期借家契約で借賃の改定に係る特約があれば、32条は適用されません(同法38条9項)。賃料の割合を下げて、成り立つかも試してください。
エクセルの計算に、入っていないものは何ですか?
エクセルは、税引前の年間の手残りを出す表で、所得税・住民税は計算しません。不動産所得は他の所得と合わせて税額が決まるため、人によって違うからです。
国税庁 No.1370によると、不動産所得は「総収入金額−必要経費」で求めます。収入には家賃のほか、更新料や、返還を要しない敷金・保証金が含まれます。必要経費の例は、固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費です。税額は、税理士・税務署にご確認ください。
ほかに、次のものは入っていません。
- 家賃の下落と物価の変動(10年間、家賃も費用も同じとして計算)
- 敷金・礼金・更新料の受け取りと返還、借入の返済と利息
- 入居者が替わるときの大きな原状回復(入替え費用の欄に年あたりで入れる)
貸す前に、3,000万円控除と建物の傷みで何を確かめますか?
貸す前に確かめることは、3,000万円控除が使えなくなる点と、建物の傷みの2つです。
貸すと、3,000万円控除は使えなくなりますか?
相続した家を貸すと、空き家の3,000万円控除(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)の要件を満たさなくなります。要件の一つは、相続の時から譲渡の時まで、事業・貸付け・居住の用に供されていないことです(国税庁 No.3306、租税特別措置法35条3項)。
売る期限は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までです。かつ、特例の対象は2027年(令和9年)12月31日までの譲渡です。貸した収入と、売って控除が使えなくなる影響を、比べてから決めます。
売る期限は期限カレンダー、控除の判定は3,000万円控除の判定ツールで確かめます。貸さずに売る・解体する・国庫帰属ほうが手残りが多いかも、比べてください。個別の適用は、税理士・税務署に確認してください。
ほかに、貸す前に確かめることは何ですか?
確かめるのは、建物の傷みと家財、契約の種類、保険の3点です。傷みが大きいと、リフォーム費が家賃収入を上回ります。貸す方針のときの注意は、空き家の活用にもまとめています。
- 傷みと家財:国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査」では、賃貸または売却の意向がある世帯の約43%が「住宅の傷み」、約37%が「家財などの処理」を課題に挙げています。家財の片付けは、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)で手順を扱っています。
- 契約の種類:返してもらいたい時期が決まっているときは、定期借家があります。書面で契約し、更新がないことをあらかじめ書面で説明する必要があります(借地借家法38条1項・3項)。
- 保険:空き家の火災保険も読んでください。
- 見回り:貸している間も、空室の間は見回りが要ります。管理チェックリストを使えます。
借り手が見込めない、傷みが大きい土地は、土地活用は「やらない」も選択肢のページを先に読んでください。
あなたの空き家は、借上げの提案を取ってよい段階ですか?
エクセルで、借上げの列の手残りが成り立つと分かった段階が、提案を取る目安です。売ると決めている場合や、貸した後に自分で住む予定がある場合は、先に相続したら最初にやることで出口を比べます。家族の間で方向が決まっていないときは、家族会議シートも使えます。
借上げ(サブリース)の提案を出している会社に、相談を申し込める窓口があります。対象外の物件・地域があります。売ると決めている人、貸した後に自分で住む予定がある人、家賃の減額の可能性を受け入れられない人には向きません。申込みの前に、各社の案内で条件を読んでください。
この記事で使える計算ツール
ご自分の数字で、記事の内容を計算できます。入力した数字は、どこにも送信しません。
よくある質問
空き家を貸すと、年間いくら手元に残りますか?
家賃・入居率・費用で変わります。見本(架空)では、月54,409円・入居率90%で、自己管理が年373,617円、管理委託が年344,236円、借上げが年308,326円でした。自分の数字はエクセルに入れて確かめます。
エクセルで所得税や住民税は計算されますか?
計算しません。不動産所得は、総収入金額から必要経費を引いて求め、他の所得と合わせて税額が決まるためです(国税庁 No.1370)。税額は税理士・税務署にご確認ください。
家賃や入居率の目安は、エクセルに入っていますか?
入っていません。公的な相場の数字が確認できないため、入力欄を空にしています。全国平均の家賃(月54,409円、総務省統計局)は、自分の家の家賃には使いません。
貸したあとで売るとき、3,000万円控除は使えますか?
使えなくなる可能性があります。相続の時から売る時まで貸付けの用に供されていないことが、要件の一つです(国税庁 No.3306)。個別の判断は税理士・税務署にご確認ください。
この記事の根拠
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(確認日 )
- 国税庁 No.1370 不動産所得の課税のしくみ(確認日 )
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計」(借家の家賃:民営借家(木造)の1か月当たり家賃54,409円)(確認日 )
- 国土交通省 不動産情報ライブラリ(提供する情報は取引価格・地価公示・地価調査・鑑定評価書など。賃料の情報は含まれない)(確認日 )
- 西宮市「固定資産税・都市計画税」(課税明細書の記載事項、税率、都市計画税の課税区域)(確認日 )
- 国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月)(賃貸・売却の課題:住宅の傷み約43%、家財などの処理約37%)(確認日 )
- 借地借家法(平成3年法律第90号)28条・32条・38条(e-Gov法令検索)(確認日 )
最終更新:2026年10月25日。制度の内容は2026年10月時点の公表資料です。
- 国税庁 No.3306・No.1370、総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」、国土交通省 不動産情報ライブラリ、借地借家法(e-Gov法令検索)、西宮市「固定資産税・都市計画税」(2026年10月25日確認)
- 国土交通省「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月、2026年10月17日確認)
見本の数字は、実在の物件ではありません。この記事は一般的な情報です。個別の契約は弁護士・宅地建物取引業者に、税額は税務署・税理士にご確認ください。