第4章 実行|売る

空き家の売却を任せる不動産会社の選び方:媒介契約3種類

媒介契約は一般・専任・専属専任の3種類で、違いは重ねて依頼できるか、レインズへの登録期限、報告の頻度です。査定は金額より根拠で比べます。

  • 媒介契約には、一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3種類があります。違いは、他社に重ねて頼めるか、自分で見つけた買主と契約できるか、登録期限と報告の頻度です(宅地建物取引業法34条の2)。
  • 査定は、金額の高さではなく根拠で比べます。不動産会社は、価額の意見を述べるときに根拠を明らかにする義務があります。
  • 仲介手数料の上限は法令で決まっています。代金800万円以下の空き家は、上限が30万円(税別)に上がる特例があります。あなたの手取りは手取り計算で確かめてください。

公開 /更新 /執筆・編集:実家の手引き 編集部(運営者情報)

媒介契約とは何で、3種類は何が違いますか?

媒介契約とは、不動産会社に買主探しを頼む契約です。不動産会社は、契約を結んだら、価額や有効期間、レインズへの登録に関する事項などを書いた書面を、依頼者に交付しなければなりません(宅地建物取引業法34条の2第1項)。

3種類の違いは、次の表のとおりです(2026年10月17日確認)。

媒介契約とは何で、3種類は何が違いますか?
項目 一般媒介 専任媒介 専属専任媒介
他の不動産会社への重ねての依頼 できる できない できない
自分で見つけた買主との契約 できる できる できない
有効期間 法律に上限はない。標準約款は3か月以内 3か月以内。更新も1回3か月以内 同左
レインズ(指定流通機構)への登録 義務なし。登録するかは契約書に記載 契約日から7日以内(休業日を除く) 5日以内(休業日を除く)
売主への業務報告 申込みがあれば遅滞なく報告。定期報告の義務はない 2週間に1回以上 1週間に1回以上

根拠:宅地建物取引業法34条の2第3〜5項・8〜9項、同法施行規則15条の10、国土交通省の標準媒介契約約款。一般媒介には、他の会社を明示する型と、明示しない型があります。明示しない契約にするときは、その旨を特約します(標準約款)。契約が標準媒介契約約款に基づくかどうかは、契約書に記載されます(同法施行規則15条の9)。

レインズとは、国土交通大臣が指定した指定流通機構が運営する、不動産会社間の物件情報の仕組みです。売主は、登録を証する書面のID・パスワードで、売主専用画面から取引状況を確認できます(国土交通省)。

向きやすいケースは、契約ごとに異なります。公的な比較データはなく、物件と地域で結果は変わります。

媒介契約とは何で、3種類は何が違いますか?
契約 向きやすい場合 向きにくい場合
一般媒介 複数社の対応を比べたい。買い手が見込める立地 報告が義務ではなく、状況を自分で聞く必要がある
専任媒介 1社に任せ、2週間に1回の報告を受けたい。自分で買主を探す余地も残したい その会社が積極的でないと進まない
専属専任媒介 自分で買主を探す予定がなく、報告を最も頻繁に受けたい 親族や隣人への売却を自分で進めたい

査定はどう受けて、査定価格をどう見ればよいですか?

査定は、複数の会社に依頼し、金額ではなく根拠を比べます。不動産会社は、売買すべき価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければなりません(宅地建物取引業法34条の2第2項)。

査定を依頼しても、売却を頼んだことにはなりません。媒介契約を結ぶまでは、どの会社とも契約していません。

査定価格、売出価格、成約価格は、別のものです。

査定はどう受けて、査定価格をどう見ればよいですか?
価格 意味
査定価格 不動産会社が示す、売れる見込みの価格についての意見。売れる額の保証ではない
媒介価額(売出価格) 媒介契約書に書く、売り出す価額。会社の意見を聞いて売主が決める
成約価格 実際に売買契約が成立した価格

近隣の成約価格は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」や、レインズ・マーケット・インフォメーションで調べられます。媒介価額が地価や物価の変動で不適当になったときは、不動産会社は、根拠を示して変更を助言します(標準約款)。

査定のときに、次の点を聞いて比べます。

査定はどう受けて、査定価格をどう見ればよいですか?
聞くこと 見る点
査定額の根拠 近隣の取引事例、物件の状態の評価
売出価格の提案と、下げる目安 価格を見直す時期と判断の基準
契約の種類と、勧める理由 一般・専任の別と、登録期限・報告頻度
手数料の額 上限の範囲か。低廉な空家等の特例を使うか
建物状況調査を実施する者のあっせん あっせんの有無は、契約書に記載される
広告や出張の費用 依頼者が負担する特別な費用の有無

建物状況調査とは、建物の構造耐力上主要な部分などの状況の調査です(宅地建物取引業法34条の2第1項4号)。

地元の会社と大手は、どう選べばよいですか?

会社の規模と売却の成果の関係を示す公的な統計はなく、地元か大手かでは決められません。次の点を、会社ごとに確かめます。本サイトは、特定の会社の優劣を示しません。

地元の会社と大手は、どう選べばよいですか?
見る点 確かめ方
免許と行政処分 国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で免許を、「ネガティブ情報等検索サイト」で行政処分の履歴を確認。ただし後者は、全都道府県の情報を網羅していない
空き家・相続物件の経験 直近の取引の件数や事例を聞く。数字は会社の自己申告
物件の地域への対応 担当エリアか、レインズ以外の集め方があるか
説明の仕方 査定の根拠、手数料の内訳、報告の頻度を書面で出せるか
費用 手数料の実額と、依頼者の負担になる特別な費用

相続した空き家を売るには、事実上、相続登記が必要です。名義の整理は、先に相続したら最初にやることで確認します。

仲介手数料は、いくらまでですか?

仲介手数料の上限は、売買価格のうち200万円以下の部分に5%、200万円超400万円以下に4%、400万円超に3%です(それぞれ税別、宅地建物取引業法46条)。400万円超は「3%+6万円」の速算式で求められます。

代金が800万円以下の低廉な空家等は、上限が30万円(税別。税込33万円)です。2024年(令和6年)7月1日に施行された特例です(国土交通省)。

仲介手数料は、いくらまでですか?
売買価格 通常の上限(税別) 通常の上限(税込) 800万円以下の特例の上限
300万円 14.0万円 15.4万円 30万円(税込33万円)
600万円 24.0万円 26.4万円 30万円(税込33万円)
800万円 30.0万円 33.0万円 30万円(税込33万円)
1,200万円 42.0万円 46.2万円 対象外

この表のとおり、特例は手数料を安くする制度ではなく、代金が低い空き家の上限を引き上げる制度です。実際の額は、上限の範囲で、媒介契約を結ぶ前に合意します。契約前に、上限額の範囲で合意しておくことが重要とされています(国土交通省)。

手数料は成功報酬で、不動産会社の媒介で売買契約が成立したときに請求できます(標準約款)。売主が特別に依頼した広告料や遠方への出張旅費は、別に実費の負担になります。売却全体の費用と手取りは、相続した実家・空き家を売るに整理しています。

自治体の空き家バンクは、不動産会社への依頼と何が違いますか?

空き家バンクとは、空き家の売却・賃貸を希望する人が登録した情報を、利用を希望する人に紹介する制度です(滋賀県の案内)。多くは市町村が運営します。登録の条件や費用、不動産会社との併用の可否は、自治体ごとに異なります。

自治体の空き家バンクは、不動産会社への依頼と何が違いますか?
比べる点 不動産会社と媒介契約 自治体の空き家バンク
運営 宅地建物取引業者 市町村。運営を民間や社会福祉協議会が担う場合もある
根拠 宅地建物取引業法 空家法15条(市町村が空家等の活用に必要な対策を講ずるよう努める)
想定する買主・借主 一般の買主 空き家の利活用や移住を希望する人
費用・登録条件 手数料の上限は法令で決まる 物件所在地の窓口で確認

全国版として、LIFULL HOME'Sとアットホームの空き家バンクがあります。ただし掲載は、一部の市町の物件に限られる例があります(滋賀県の案内)。

買い手が見つかりにくい物件では、空き家バンクを並行して使うかを、物件所在地の市町村の空き家担当課に聞きます。併用ができるかは自治体の要綱によるため、聞いて確かめてください。

契約したあとに断る、または会社を変えるには、どうしますか?

査定の段階なら、媒介契約を結んでいないので、断ってかまいません。契約後は、標準約款で、更新、解除、費用の扱いが決まっています。

契約したあとに断る、または会社を変えるには、どうしますか?
場面 標準約款の内容
有効期間が終わるとき 更新は、有効期間の満了に際して、依頼者が文書等で申し出る(専任約款15条、一般約款16条)
会社が義務を果たさないとき 相当の期間を定めて催告し、履行がなければ解除できる(専任約款16条)
会社が不実のことを告げたなど 信義誠実義務違反、重要事項の不告知・不実告知、不当な行為があれば、依頼者は解除できる(専任約款17条)
専任の期間中に他社に頼んで成約 会社は、約定報酬額に相当する金額(消費税を除く)を違約金として請求できる(専任約款12条)
専任の期間中に自分で買主を見つけて成約 会社に通知する。会社は履行のために要した費用を請求できる(専任約款13条・14条)。専属専任は違約金(専属専任約款12条2項)
期間中または満了後2年以内に、紹介された買主と会社を外して契約 会社は、寄与した割合に応じた報酬を請求できる(専任約款11条)

断る方法は、契約の種類で違うため、契約書の約款を先に読みます。標準約款は、依頼者に不利な特約を無効としています(専任約款19条2項)。

あなたのケースでは、何から始めますか?

相続登記と売却の意思を整えてから、複数社の査定と契約の種類を比べます。名義、共有者の同意、期限の3点が先です。

  1. 名義と共有者を確認する。 登記事項証明書で、名義人と共有者を確かめます。
  2. 期限を出す。 3,000万円控除などの期限を、期限カレンダーで計算します。
  3. 査定を複数社に頼む。 上の表の項目を、書面で比べます。
  4. 契約の種類を決める。 登録期限、報告頻度、有効期間を確かめます。
  5. 手取りを試算する。 手取り計算で、手数料と税を引いた額を出します。

売る方向が固まった人向けに、複数の不動産会社の査定を比べられる無料の窓口があります。提携先の条件はサービスごとに異なるため、申込み前に各社の案内を読んでください。売るかどうか決めていない人、共有者の同意が取れていない人、名義が整っていない人には向きません。

この記事で使える計算ツール

計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。

よくある質問

専任媒介と一般媒介は、どちらがよいですか?

公的な比較データはなく、物件と地域で変わります。複数社に頼めるのが一般、1社に任せて2週間に1回以上の報告を受けられるのが専任です。

専任媒介契約の期間は、どれくらいですか?

3か月が上限です。これより長く定めても、3か月になります。更新するときも、1回につき3か月までです(宅地建物取引業法34条の2第3項・4項)。

空き家の仲介手数料は、いくらまでですか?

売買代金が800万円以下なら、上限は30万円(税別。税込33万円)です。800万円を超える場合は、200万円以下の部分に5%、200万円超400万円以下に4%、400万円超に3%です。

査定を依頼すると、売らなければなりませんか?

売る必要はありません。媒介契約を結ぶまでは、売却を頼んだことになりません。

地元の不動産会社と大手は、どちらがよいですか?

規模と成果の関係を示す公的な統計はなく、どちらがよいとは言えません。免許と行政処分、経験、説明の根拠を会社ごとに比べます。

この記事の根拠

  1. 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)34条の2 媒介契約(確認日 )
  2. 宅地建物取引業法施行規則(e-Gov法令検索)15条の9 媒介契約の書面の記載事項・15条の10 指定流通機構への登録期間(確認日 )
  3. 国土交通省 標準媒介契約約款(平成2年建設省告示第115号、令和4年国土交通省告示第583号による最終改正。専任・専属専任・一般の各約款)(確認日 )
  4. 国土交通省「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」(仲介手数料の上限、低廉な空家等の特例、レインズの売主専用画面、免許・行政処分の検索、不動産情報ライブラリ)(確認日 )
  5. 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年国土交通省告示第949号による改正後。大阪府の掲載ページで本文を確認)(確認日 )
  6. 空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索)15条 空家等及び空家等の跡地の活用等(確認日 )
  7. 滋賀県「空き家バンクのご案内」(更新2026-06-12)(確認日 )

最終更新:2026年10月17日。制度の数字は2026年10月時点の公表情報です。

  • 宅地建物取引業法34条の2、同法施行規則15条の9・15条の10(e-Gov法令検索、2026年10月17日確認)
  • 国土交通省 標準媒介契約約款(令和4年国土交通省告示第583号による最終改正)、同省「不動産取引に関するお知らせ」(2026年10月17日確認)
  • 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年国土交通省告示第949号による改正後。2026年10月17日確認)
  • 空家等対策の推進に関する特別措置法15条、滋賀県「空き家バンクのご案内」(2026年10月17日確認)

この記事は一般的な情報で、特定の不動産会社を推奨するものではありません。個別の契約や税務は、契約書の確認と、宅地建物取引業者・税理士・弁護士へのご相談で判断してください。