第4章 実行|買取・訳あり
市街化調整区域の空き家・実家を売る:許可の要否と買い手の探し方
市街化調整区域の空き家は売れますが、買主が建て替える・用途を変えるには都市計画法43条の許可が要る場合があります。建てた時の許可を窓口で確かめます。
- 市街化調整区域の家の売買そのものに、都市計画法の許可は要りません。ただし、買主が建て替える・用途を変えるときは、原則として都道府県知事等の許可が要ります(都市計画法43条)。
- 売れるかどうかは、建てた時の許可の内容と、買主が何に使うかで決まります。農家住宅などは、第三者が使うと用途変更の許可の対象になる場合があります。
- 解体は、窓口で建替えの扱いを確かめてから決めます。売り方の向き不向きは、あなたのケースで違います。診断で確かめてください。
市街化調整区域とは何で、実家が区域内かどう調べますか?
市街化調整区域とは、都市計画法7条3項が「市街化を抑制すべき区域」と定める区域です。新しく建物を建てたり、建物の用途を変えたりするには、原則として都道府県知事等の許可が要ります。
市街化区域と市街化調整区域の区分を、区域区分(いわゆる線引き)といいます(都市計画法7条1項)。実家が区域内かは、市区町村の都市計画の窓口か、自治体の都市計画図で確かめます。あわせて、建物がどの許可で建てられたかを確かめます。窓口の名前は自治体で違います。
| 聞くこと | なぜ必要か | 根拠 |
|---|---|---|
| 敷地は市街化調整区域か。線引きの日はいつか | 線引きの前から建っていた家か、後から許可で建てた家かで扱いが変わる | 都市計画法7条 |
| 建てた時の許可(開発許可・43条の許可)と、許可された用途 | 許可の用途と違う使い方には、用途変更の許可が要る。開発許可は登録簿で閲覧できる | 都市計画法42条・43条・47条 |
| 第三者が買って、そのまま住めるか | 農家住宅などは、第三者の使用を用途変更として扱う自治体がある | 自治体の審査基準 |
| 建替えの範囲と、解体後の扱い | 建替えの目安も解体後の扱いも、自治体で決まる | 運用指針Ⅰ-7-1(9) |
| 条例で指定された区域に入っているか | 区域内なら、条例の用途で建てられる場合がある | 都市計画法34条11号・12号 |
| 空き家の用途変更(賃貸・店舗など)の基準 | 2023年12月の運用指針の改正で扱いが広がった | 運用指針Ⅰ-15 |
回答は建物ごとの判断です。相談した日・担当課・回答を記録しておきます。
市街化調整区域の空き家を売るのに、許可は要りますか?
市街化調整区域の家の売買契約そのものに、都市計画法の許可は要りません。都市計画法の開発許可(29条)と建築許可(43条)は、土地の造成や建物の新築・改築・用途変更に対する許可だからです。
問題は、買主が買ったあとに何をするかです。建替えや賃貸などの計画に許可が要るかを、契約の前に確かめます。売買そのものに手続きが要るのは、次の場合です。
| 場合 | 必要な手続き | 根拠 |
|---|---|---|
| 敷地や周りの土地に、農地(地目や現況が田・畑)が含まれる | 農地のまま売るなら農業委員会の許可。転用して売るなら都道府県知事等の許可 | 農地法3条・5条 |
| 土地の面積が5,000㎡以上 | 買主が契約日から2週間以内に都道府県知事へ届け出る | 国土利用計画法23条 |
| 相続登記が済んでいない | 3年以内の申請義務がある。売る前に名義を直す | 不動産登記法76条の2 |
農地の売り方は、相続した農地を売る・手放すで扱っています。
許可なしの用途変更や建築には、50万円以下の罰金の定めがあり(都市計画法92条6号・7号)、是正の命令の対象にもなります(同法81条)。
買主が住む・建て替えるには、どんな許可が要りますか?
市街化調整区域のうち開発許可を受けた区域以外では、建築物の新築・改築・用途変更に、原則として都道府県知事等の許可が要ります(都市計画法43条1項)。都道府県知事等とは、都道府県知事のほか、指定都市・中核市などの市長を指します(都市計画法29条1項)。許可の基準は施行令36条にあります。
| 行為 | 許可 | 根拠 |
|---|---|---|
| 建物を新築する | 要る | 43条1項 |
| 建物を改築する(建て替える) | 要る(従前と同じ用途・規模などで、自治体が許可不要の改築として扱う場合がある) | 43条1項、運用指針Ⅰ-7-1(9) |
| 建物の用途を変える(住宅を店舗にするなど) | 要る | 43条1項 |
| 改築・用途変更の床面積の合計が10㎡以内 | 要らない | 施行令35条2号 |
| 既存の建物の敷地内に車庫・物置などの附属建築物を建てる | 要らない | 施行令35条1号 |
| 農林漁業用の建物や、農林漁業を営む人の住宅にする | 要らない(対象の建築物かは窓口で確認) | 43条1項、29条1項2号 |
| 用途を変えずに、そのまま住む・修繕する | 43条の許可の対象外。ただし、許可の用途に人の限定がある家は次の章を参照 | 43条1項 |
運用指針は、建替え後の床面積が従前の1.5倍以下で構造と用途がほぼ同じなら、許可不要の「改築」として扱って差し支えないとしています(Ⅰ-7-1(9))。運用指針は国の技術的助言で、扱いは自治体が決めます。
市街化区域に近く、おおむね50以上の建築物が連なる地域などには、条例で指定した区域があります(34条11号)。区域内では、条例で除かれた用途でなければ、許可を受けて建てられる場合があります(施行令36条1項3号ロ)。
「既存宅地」の確認を受けた土地でも、今は許可なしでは建てられません。既存宅地制度は2001年(平成13年)5月18日に廃止され、経過措置も2006年(平成18年)5月17日に終わりました(北九州市の案内)。
農家住宅など、建てた人が限られる家は第三者に売れますか?
農家住宅・分家住宅も第三者に売れる場合はありますが、買主が住むには用途変更の許可が要る場合があります。農業を営む世帯などが住む前提で許可された家だからです。運用指針は、用途変更の判断の目安を次のように示しています。
| 項目 | 運用指針の記載(要旨) | 該当箇所 |
|---|---|---|
| 適正に利用された期間 | 10年程度が目安。期間だけで一律に判断しないよう留意する | Ⅰ-7-1(20)③イ |
| やむを得ない事情 | 所有者の死亡、破産、遠方への転居など | Ⅰ-7-1(20)③ロ |
| 既存建築物の用途変更 | 適法な建築・相当期間の適正な利用・やむを得ない事情を総合的に判断する | Ⅰ-15 |
相続は所有者の死亡にあたりますが、許可するかは自治体が審査基準で判断します。たとえば松江市の運用基準は、農家住宅・分家住宅などを「属人性のある建築物」とし、用途変更後を自己の居住用に限っています(国土交通省の活用事例の資料)。1つの市の例で、全国共通ではありません。
2023年12月の改正で、空き家の用途変更はどう変わりましたか?
国土交通省は、2023年(令和5年)12月28日に開発許可制度運用指針を改正し、市街化調整区域の空き家の用途変更を弾力的に運用できるようにしました(国都計第133号)。用途変更の例は次のとおりです(Ⅰ-15)。
- 観光振興のための宿泊施設・飲食店など
- 既存集落の維持のための賃貸住宅、グループホームなど
- 空家等活用促進区域(空家法7条)で、誘導用途に使う場合
- 二地域居住や移住促進の計画の区域で、定めた用途に使う場合
観光振興や既存集落の維持のための用途変更の基準を定めた自治体は、令和5年度に83団体でした(国土交通省、令和5年度開発許可制度施行状況調査)。実家のある自治体に基準があるかを確かめます。
解体してから売るか、建物を残して売るか、どちらがよいですか?
市街化調整区域では、解体の前に、解体後も建替えの扱いを受けられるかを窓口で確かめます。運用指針が示す建替えの目安は、既存の建築物があることを前提にしています。解体後の扱いは、自治体ごとに違います。
たとえば久喜市は、老朽化した空き家の解体後も最大3年間は建築物があるとみなす施策を設け、必ず解体前に相談するよう求めています。解体するかで、使える制度も変わります。
| 項目 | 建物を残して売る | 解体してから売る・手放す |
|---|---|---|
| 買主の建替え | 許可を受けて建て替えられる場合がある | 建替えの扱いを受けられない場合がある |
| 空き家の3,000万円控除 | 耐震基準に適合しているか、売った翌年2月15日までに耐震化・取壊しをすれば対象になりうる | 取り壊した後に敷地を売る形で対象になりうる |
| 相続土地国庫帰属制度 | 建物がある土地は申請できない | 他の要件を満たせば申請できる。負担金は原則20万円 |
| 費用 | 残置物の片付けなど | 解体費。固定資産税が上がる場合がある |
空き家の3,000万円控除(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例、国税庁 No.3306)は、1981年(昭和56年)5月31日以前の建築などが要件です。売る期限は相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までで、2027年(令和9年)12月31日までの売却が対象です。詳しくは相続した家を売るときの税金をご覧ください。
国庫帰属の負担金の面積式は、市街化区域内の宅地が対象です。市街化調整区域の宅地は原則の20万円です(相続土地国庫帰属法施行令5条1項1号・4号)。農用地区域内の農地や森林は別の面積式です。審査手数料は1筆14,000円です(同施行令3条)。
解体の費用は解体の記事で、解体補助金は姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)の自治体データベースで調べられます。
買い手はどう探し、手取りはいくらになりますか?
市街化調整区域の家は、許可の条件に合う買主を探します。地元の不動産会社への仲介、隣地や集落の人への打診、買取の査定を並行して進めます。
| 売り先 | 向くケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 地元の不動産会社の仲介 | 条例指定区域内など、一般の人が住める見込みがある | 許可の要件に詳しい会社を選ぶ |
| 隣地・集落の人、農業を営む人 | 敷地を広げたい人がいる。農家住宅や農地付きの家 | 価格は交渉。農地を含むなら農業委員会の許可 |
| 空き家バンク | 自治体に用途変更の基準や移住の計画がある | 移住者が住めるかを自治体に確かめる |
| 買取業者 | 早く手放したい。一般の買主が見つかりにくい | 価格は仲介より低い傾向。公的な統計はない |
| 貸す | 賃貸住宅への用途変更が認められる地域 | 許可が要る場合がある。貸す・活かす |
買取と仲介の違いは買取と仲介の比較、売れないときの順番は売れないときの対処にあります。物件が新潟県にある場合は、姉妹サイトの新潟 実家じまいナビ(運営:株式会社Kogera)が県内の情報をまとめています。
モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。
条件:売却価格500万円、長期譲渡、取得費は不明で売却価格の5%、仲介手数料は通常の上限額、2026年(令和8年)中の契約。控除の列は要件をすべて満たした場合です。
| 項目 | 控除なし | 3,000万円控除 |
|---|---|---|
| 売却価格 | 5,000,000円 | 5,000,000円 |
| 取得費(概算:5%) | 250,000円 | 250,000円 |
| 仲介手数料(通常の上限) | 231,000円 | 231,000円 |
| 印紙税(軽減後) | 1,000円 | 1,000円 |
| 譲渡所得(特例の前) | 4,518,000円 | 4,518,000円 |
| 特別控除 | 0円 | 4,518,000円 |
| 所得税+復興特別所得税 | 691,900円 | 0円 |
| 住民税 | 225,900円 | 0円 |
| 手取り | 3,850,200円 | 4,768,000円 |
計算の内訳は次のとおりです。
- 仲介手数料:(5,000,000円×3%+60,000円)×1.1=231,000円
- 印紙税:100万円超500万円以下の軽減後の税額(国税庁 No.7108)
- 譲渡所得:5,000,000−250,000−231,000−1,000=4,518,000円
- 所得税:4,518,000×15%=677,700円、復興特別所得税は677,700×2.1%=14,231円。合計の100円未満を切り捨て691,900円。住民税は×5%=225,900円
800万円以下の「低廉な空家等」は、事前の説明と合意があれば仲介手数料の上限が税込33万円になります(国土交通省、仲介手数料の早見表)。自分の価格では売却手取り計算で試せます。
あなたのケースでは、どの順番で進めますか?
市街化調整区域の実家は、窓口での確認、買主の候補探し、税の期限の確認の順に進めます。解体などの大きな支出は、窓口の回答の後に決めます。
| あなたの状況 | 次の一歩 |
|---|---|
| 区域内かどうか、建てた時の許可が分からない | 都市計画の窓口で、区域と許可の記録を確かめる |
| 線引き前からの住宅で、用途も住宅のまま | 第三者の居住と建替えの扱いを確かめ、地元の不動産会社に相談する |
| 農家住宅・分家住宅 | 用途変更の見込みを確かめ、農業を営む人や隣地への売却も探す |
| 賃貸や店舗にして貸したい | 空き家の用途変更の基準を確かめる |
| 3,000万円控除の期限が近い | 期限から逆算して決済日を決める |
| 土地だけを手放したい | 解体前に確かめ、国庫帰属と比べる |
| すぐに決められない | 持ち続けるコストを計算する |
市街化調整区域の家など、訳ありの不動産の買取を扱う会社に査定を申し込める窓口があります。物件によっては対象外です。価格を最優先する人、許可を取って一般の買主を探す時間がある人、売るか家族で決まっていない人には向きません。申込み前に、各社の案内を読んでください。
この記事で使える計算ツール
計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。
よくある質問
市街化調整区域の家は売れないのですか?
売れます。売買契約に都市計画法の許可は要りませんが、買主の建替え・用途変更に許可が要る場合があり、買主が限られます。
市街化調整区域の実家を相続した人が、そのまま住むことはできますか?
用途が住宅のままなら、住むこと自体に43条の許可は要りません。農家住宅など、許可の用途に人の限定がある家は、扱いを窓口で確かめます。
市街化調整区域の空き家を賃貸に出せますか?
用途変更の許可が要る場合があります。2023年12月の運用指針の改正で賃貸住宅などへの用途変更が弾力化されましたが、基準は自治体ごとです。
市街化調整区域の空き家は、解体してから売ったほうがよいですか?
解体の前に、解体後も建替えの扱いを受けられるかを窓口で確かめます。扱いは自治体ごとに違います。
市街化調整区域の土地を国庫帰属で手放すと、負担金はいくらですか?
宅地なら原則20万円です。面積式は市街化区域内の宅地が対象です。建物がある土地は申請できません。
この記事の根拠
- 都市計画法(e-Gov法令検索)7条・29条・34条・42条・43条・47条・79条・81条・92条(確認日 )
- 都市計画法施行令(e-Gov法令検索)34条・35条・36条(確認日 )
- 国土交通省 開発許可制度運用指針(令和7年3月19日最終改正)Ⅰ-7-1(9)(20)、Ⅰ-15(確認日 )
- 国土交通省「空家等の既存建築物の用途変更許可の弾力化について」(確認日 )
- 国土交通省「開発許可制度運用指針の改正について」(令和5年12月28日 国都計第133号)(確認日 )
- 国土交通省「既存建築物の用途変更許可の運用弾力化の概要・活用事例」(基準策定自治体数は令和5年度開発許可制度施行状況調査)(確認日 )
- 久喜市「2つの施策のご利用方法」(市街化調整区域の空家の除却後の建築制限の緩和)(確認日 )
- 北九州市「『既存宅地制度』の確認を受けた土地の取扱について」(更新2024-05-30)(確認日 )
- 国土利用計画法(e-Gov法令検索)23条 土地売買等の契約後の届出(確認日 )
- 農地法(e-Gov法令検索)3条・5条(確認日 )
- 不動産登記法(e-Gov法令検索)76条の2 相続登記の申請義務(確認日 )
- 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(e-Gov法令検索)2条3項(確認日 )
- 同法施行令(e-Gov法令検索)3条(審査手数料)・5条(負担金の算定)(確認日 )
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(令和8年4月1日現在法令等)(確認日 )
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額(確認日 )
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき(確認日 )
- 国税庁 No.7108 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(確認日 )
- 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(令和6年7月1日施行)(確認日 )
最終更新:2026年10月22日。制度の内容は2026年10月時点の法令と公表資料です。
- 都市計画法・同施行令、国土利用計画法、農地法、不動産登記法、相続土地国庫帰属法・同施行令(e-Gov法令検索)
- 国土交通省の開発許可制度運用指針と改正通知、国税庁のタックスアンサー
- 久喜市・北九州市の案内は、自治体ごとの差の例として載せています
この記事は一般的な情報です。許可の見込みは自治体の開発許可の窓口で、税額は税務署・税理士でご確認ください。