第4章 実行|買取・訳あり

相続した山林を売る・手放す:届出・売れる条件・国庫帰属

相続で山林を取得したら、森林法10条の7の2により90日以内に市町村へ届け出ます。手放す道は売却、市町村に任せる制度、国庫帰属で、境界と手入れで決まります。

  • 相続で山林を取得したら、所有者となった日から90日以内に、市町村長へ届け出ます(森林法10条の7の2、林野庁)。届け出ないと、10万円以下の過料の対象です(森林法213条)。
  • 手放す道は、売る、市町村に管理を任せる(森林経営管理制度)、国庫帰属の3つです。国庫帰属は、境界が明らかでない山林と、追加の整備が必要な森林は通りません。
  • 売れるかどうか、いくらかかるかは、山林ごとに違います。あなたのケースは国庫帰属の要件チェックで確かめてください。

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山林を相続したら、何をいつまでに届け出ますか?

山林を相続したら、所有者となった日から90日以内に、山林がある市町村の長へ届け出ます。森林の土地の所有者届出制度とは、地域森林計画の対象となっている民有林の土地を新たに取得した人が、その旨を届け出る制度です(森林法10条の7の2、林野庁)。

山林を相続したら、何をいつまでに届け出ますか?
項目 内容 根拠
対象になる人 売買、相続などで森林の土地を新たに取得した個人・法人。面積は問わない 林野庁
対象になる土地 地域森林計画の対象となっている民有林 森林法10条の7の2
届出先 森林がある市町村の長 森林法10条の7の2
期限 所有者となった日から90日以内。相続は相続開始の日など 林野庁
届け出ないと 10万円以下の過料(届出をせず、または虚偽の届出をした場合) 森林法213条
届出が不要な場合 国土利用計画法23条1項の届出をしたとき 森林法10条の7の2
登記との関係 不動産登記とは別の手続き。登記の有無にかかわらず必要 林野庁

令和8年(2026年)4月1日から、届出書の様式が改正され、取得した人の国籍等の記載が加わっています(林野庁)。

農地の届出は、農林水産省のチラシが「おおむね10か月以内」としています(農地の記事)。山林は90日で、期限が短くなっています。相続放棄の3か月(民法915条)とほぼ同じ時期です。

相続登記も別に必要です。相続を知った日から3年以内に申請し、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です(不動産登記法76条の2・164条)。期限は期限カレンダーで計算できます。

自分の山林が届出の対象かどうか、どう調べますか?

市町村の林務担当課に、その山林が地域森林計画の対象かを確認します。林野庁は、登記上の地目に関係なく、森林の状態であれば対象となる可能性が高いとしています。

調べる順番は次のとおりです。

  1. 固定資産税の納税通知書や課税明細書で、土地の所在、地番、地目、面積を確かめる。
  2. 法務局で登記事項証明書と公図を取り、名義と位置を確かめる。
  3. 市町村の林務担当課で、地域森林計画の対象か、保安林か、境界の測量が済んでいるかを聞く。窓口名は自治体で異なります。
  4. 現地を確かめる。位置が分からない山林は、地番と公図から探す。

市町村は、森林の土地ごとに、所有者、所在・地番・地目・面積、境界に関する測量の実施状況を載せた林地台帳を作っています(森林法191条の4)。境界の測量が済んでいるかは、売る場合も、国庫帰属を申請する場合も重要です。

保安林に指定されている場合、立木を伐採するには、都道府県知事の許可が要ります(森林法34条)。買い手に伝える点です。

山林は売れますか?どこに頼めばよいですか?

売れる場合はありますが、需要が限られ、売れるまでに時間がかかることがあります。山林の公的な売買価格の統計は確認できていないため、金額は書きません。

山林は売れますか?どこに頼めばよいですか?
売り先・相談先 向くケース 注意点
山林を扱う不動産会社・山林専門の業者 買い手を探したい 手数料と費用を契約前に書面で確かめる
森林組合 管理や施業を地域で任せたい 売買の仲介をするかは組合ごとで、公表資料では確認できていません。森林組合に確認してください。
隣接する山林の所有者 境界が分かり、相手に広げる利点がある 価格は交渉。書面で合意する
買取業者 早く手放したい 山林は対象外の場合がある
自治体・団体への寄付 公共の用に使える土地 受入れ状況の公的な統計はない

売る前に、相続登記を済ませます。名義が亡くなった方のままでは、売買の登記ができません。

山林は、用途地域外にあれば、宅地建物取引業法の「宅地」に当たらない場合があります(同法2条1号)。仲介手数料の取り決めは、契約書で確かめてください。

買い手が山林を開発するときは、地域森林計画の対象民有林で、政令で定める規模を超える開発行為に、都道府県知事の許可が要ります(森林法10条の2)。買い手の用途も確認します。

「山林を高く買い取る」という勧誘には、どう対応しますか?

応じないでください。国民生活センターは、原野や山林を高値で買い取ると持ちかけ、手続き費用や税金対策の名目で金銭を請求する「原野商法の二次被害」を注意喚起しています。

2017年度は12月31日までに1,196件の相談があり、前年同期の約1.8倍でした。契約当事者の約9割が60歳以上でした(2018年1月25日発表)。免許を持つ宅地建物取引業者でも、安易に信用しないよう呼びかけています。

不審な勧誘は、最寄りの消費生活センターに相談します。

山林を売ると税金はどうなりますか?固定資産税はいくらですか?

土地の部分を売ると、譲渡所得の税金がかかります。税率は、所有期間が5年を超える長期で20.315%、5年以下の短期で39.63%です。立木は、所有期間が5年を超えると山林所得として扱われます(国税庁 No.1480)。

山林を売ると税金はどうなりますか?固定資産税はいくらですか?
売る対象 所得の区分 計算の要点
土地の部分 譲渡所得 売った金額から取得費と譲渡費用を引く。取得費が分からなければ売った金額の5%
立木(5年超所有) 山林所得 収入から必要経費と特別控除(最高50万円)を引く。5分5乗方式

空き家の3,000万円控除は、被相続人が住んでいた家屋とその敷地の特例です。山林には使えません(国税庁 No.3306)。相続した立木の所有期間の数え方は、公表資料では確認できていません。税務署に確認してください。

山林の固定資産税は、どう考えますか?

固定資産税は、課税標準額に標準税率1.4%を掛けて決まります。山林は、居住用家屋の敷地ではないため、住宅用地の特例の対象外です(地方税法349条の3の2)。

同じ市町村にある土地の課税標準額の合計が30万円に満たなければ、固定資産税は課されません(地方税法351条の免税点。条例で例外を定める市町村もあります)。

モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。 山林以外に同じ市町村に土地がないと仮定します。

モデルケース:見本の数字|山林の固定資産税は、どう考えますか?
課税標準額の合計 固定資産税 理由
20万円 課されない 免税点の30万円未満
100万円 14,000円 100万円×1.4%
500万円 70,000円 500万円×1.4%

実際の課税標準額は、納税通知書や課税明細書で確認します。山林の評価額は、市町村が決めます。標準税率と異なる税率を、条例で定めている市町村もあります。

管理の責任もあります。竹木の栽植や支持に瑕疵があって他人に損害を与えたとき、占有者が防ぐ注意をしていれば所有者が賠償責任を負います(民法717条2項)。道路や隣地へ倒れるおそれのある木は、放置しないでください。持ち続ける場合の考え方は保有コストの記事にあります。

売れない山林は、市町村に管理を任せられますか?

市町村に管理を任せる制度はあります。森林経営管理制度とは、所有者が自分で管理できない森林について、市町村が経営管理権を取得し、自ら管理するか、民間の林業経営者に委ねる制度です(森林経営管理法、林野庁)。所有権は移りません。

森林所有者は、適時に伐採、造林、保育を実施して、経営管理を行う責務があります(同法3条1項)。

売れない山林は、市町村に管理を任せられますか?
手順 内容 根拠
意向調査 市町村が、森林所有者に管理の意向を調べる 同法5条
申出 所有者が、市町村に経営管理権集積計画を定めるよう申し出られる 同法6条1項
集積計画 森林ごとに、権利を持つ人の全員の同意が必要(共有の間伐等は例外) 同法4条5項
公告 公告により、市町村に経営管理権が設定される 同法7条

申出をしても、市町村が対象にしないことがあります。その場合、市町村は理由を通知するよう努めるとされています(同法6条2項)。

経営管理権が設定された森林は、そのままでは国庫帰属を申請できません。事前に解除が必要です(法務省Q&A)。2026年4月施行の改正の内容は、公表資料では確認できていません。市町村の林務担当課に最新の運用を確認してください。

山林は国庫帰属で手放せますか?費用はいくらですか?

森林も、相続土地国庫帰属制度を申請できます(法務省Q&A)。審査手数料は1筆14,000円で、負担金は森林の場合、面積で算定されます。境界が明らかでない山林と、追加の整備が必要な森林は通りません。

相続土地国庫帰属制度の要件と手順は国庫帰属の記事にまとめています。ここでは山林に関わる点だけを書きます。

山林は国庫帰属で手放せますか?費用はいくらですか?
山林で問題になる点 扱い 根拠
境界が明らかでない 申請できない(却下) 国庫帰属法2条3項5号
人工林で適切な間伐等がされていない、天然林で標準伐期齢に達していない 追加の造林・間伐・保育が必要と認められると承認されない(不承認) 国庫帰属法5条1項5号、施行令4条3項3号、法務省Q&A
枯れ木で倒木のおそれがある、竹が侵入するおそれがある 通常の管理を阻害するものとして不承認になり得る 法務省Q&A
立木は伐採済みで、切り株だけが残る 一般的には過分な費用を要する工作物に当たらないと考えられる 法務省Q&A
市町村の経営管理権が設定されている 解除が先 法務省Q&A

法務省の統計(令和8年8月31日時点)では、不承認100件のうち37件が、国による追加の整備が必要な森林でした。地上の工作物等(46件)に次ぐ多さです。却下85件のうち23件は、境界が明らかでないことが理由です。申請5,997件のうち、山林は902件、帰属3,119件のうち、森林は203件です(2026年10月16日確認)。

原野商法で買った山林・原野も、申請する範囲が明確で、不承認事由に当たらなければ申請できます(法務省Q&A)。

森林の負担金は、場所を問わず面積で算定されます(国庫帰属法施行令5条1項3号)。

モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。 実際の金額は、登記記録の地積で決まります。

モデルケース:見本の数字|山林は国庫帰属で手放せますか?費用はいくらですか?
山林の例 計算 負担金 審査手数料を足した総額
森林 1,000㎡(1筆) 1,000×24+237,000 261,000円 275,000円
森林 5,000㎡(1筆) 5,000×12+263,000 323,000円 337,000円
森林 30,000㎡(3ha、1筆) 30,000×6+311,000 491,000円 505,000円

隣接する2筆以上の森林は、申出により1筆とみなして負担金を算定できます(施行令6条)。3,000㎡の森林が2筆隣り合う場合、別々に計算すると299,000円×2=598,000円です。1筆とみなして6,000㎡で計算すると335,000円です。審査手数料は筆ごとで、2筆なら28,000円です。

山林は、売れない土地を国に引き渡す最後の手段になり得ます。相続放棄との違いは、相続放棄と国庫帰属の違いで扱っています。事前に要件を確かめるには、国庫帰属の要件チェックが使えます。

あなたのケースでは、どの方法にしますか?

まず90日以内の届出を済ませ、そのうえで、境界と手入れの状態、売れる見込みで選びます。1つの方法だけで決めず、市町村の林務担当課に先に相談します。

あなたのケースでは、どの方法にしますか?
あなたの状況 目安
境界が分かり、隣の所有者と話せる 隣接所有者への売却を最初に打診
手入れされた人工林で、地域の買い手がいそう 山林を扱う不動産会社・森林組合に相談
買い手がつかず、手入れもできない 国庫帰属の費用を計算。追加整備が必要でないか確認
手放すより、管理を任せたい 森林経営管理制度の意向調査・申出を市町村に確認
境界が不明で、測量もされていない 国庫帰属は通らない。境界の確認が先
山林以外の財産も多く、山林だけがいらない 売る、任せる、国庫帰属を比べる。相続放棄は他の財産も失う

向かない方法もあります。国庫帰属は、売って代金を得たい人に向きません。費用を払って国に引き渡す制度です。市町村に任せる方法は、所有権を手放したい人に向きません。

山林付きの実家や、山林以外にも買い手のつきにくい不動産がある場合に、訳あり不動産の買取査定を申し込める窓口があります。山林そのものは、買取の対象外になる場合があります。申込み前に、各社の案内を読んでください。

この記事で使える計算ツール

計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。

よくある質問

山林を相続したら、届出は必要ですか?

必要です。地域森林計画の対象民有林なら、所有者となった日から90日以内に、市町村長へ届け出ます(森林法10条の7の2)。面積は問われません。届け出ないと10万円以下の過料の対象です。

山林は売れますか?

売れる場合があります。山林を扱う不動産会社、森林組合、隣接所有者などが相談先です。公的な価格の統計は確認できず、売れるまでに時間がかかることがあります。

いらない山林は、国庫に引き取ってもらえますか?

要件を満たせば申請できます。審査手数料は1筆14,000円で、負担金は面積で算定されます(1,000㎡なら261,000円)。境界が明らかでない山林は申請できません。

山林の固定資産税は、必ず払いますか?

同じ市町村にある土地の課税標準額の合計が30万円に満たなければ、課されません(地方税法351条)。30万円以上なら、課税標準額に標準税率1.4%を掛けた額が基本です。

この記事の根拠

  1. 林野庁 森林の土地の所有者届出制度(対象者、90日以内、市町村長、国土利用計画法の届出との関係、令和8年4月1日の様式改正)(確認日 )
  2. 森林法(e-Gov法令検索)10条の2・10条の7の2・34条・191条の3・191条の4・213条(確認日 )
  3. 森林経営管理法(e-Gov法令検索)1条・3条・4条・5条・6条・7条(確認日 )
  4. 法務省 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A(森林・立木・追加整備・経営管理権・負担金)(確認日 )
  5. 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律・同施行令(e-Gov法令検索)5条・6条(確認日 )
  6. 法務省 相続土地国庫帰属制度の統計(令和8年8月31日現在)(確認日 )
  7. 国税庁 No.1480 山林所得(確認日 )
  8. 地方税法(e-Gov法令検索)349条の3の2・351条(住宅用地の特例、固定資産税の免税点)(確認日 )
  9. 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)2条1号(宅地の定義)(確認日 )
  10. 民法(e-Gov法令検索)717条(土地の工作物等の責任。竹木に準用)(確認日 )
  11. 国民生活センター「より深刻に『原野商法の二次被害』トラブル」(2018年1月25日発表)(確認日 )

最終更新:2026年10月17日。制度の数字は2026年10月時点の公表情報です。

  • 林野庁「森林の土地の所有者届出制度」(2026年10月17日確認)
  • 森林法10条の2・10条の7の2・34条・191条の3・191条の4・213条、森林経営管理法1条〜7条(e-Gov法令検索、2026年10月17日確認)
  • 法務省 相続土地国庫帰属制度のQ&A(2026年10月17日確認)、同統計(令和8年8月31日現在)、国庫帰属法施行令4条〜6条(2026年10月16日確認)
  • 国税庁 No.1480 山林所得、No.3306(2026年10月17日確認)
  • 地方税法349条の3の2・351条、宅地建物取引業法2条1号、民法717条(e-Gov法令検索、2026年10月17日確認)
  • 国民生活センター「原野商法の二次被害」(2018年1月25日発表。2026年10月17日確認)

この記事は一般的な情報です。個別の事案の判断や、法律・税務の相談に代わるものではありません。山林の区分や届出の要否は、市町村の林務担当課にご確認ください。