第4章 実行|買取・訳あり
訳あり不動産の種類一覧と判定表:自分の実家はどれに当たるか
訳あり不動産とは、法令上の制限・権利関係・建物の状態・人の死などで売りにくい不動産の通称です。法律上の定義はなく、実家の状態から種類を選び、売り方を調べます。
- 訳あり不動産は法律の用語ではありません。この記事では、売り方が変わる原因で、16の種類に整理しました。実家が複数に当てはまることも多くあります。
- 判定表で、実家の状態から種類と最初に読む記事を選べます。種類が重なるときは、名義・共有、許可・通行、建物・告知、売り先の順に進めます。
- 国庫帰属で手放せるかは、種類で変わります。建物がある土地、担保権のある土地、境界が明らかでない土地などは、申請できません。
更新日:2026年(令和8年)10月25日。法令は2026年10月25日に確認した条文の時点です。
訳あり不動産とは何で、どう分けますか?
訳あり不動産とは、通常の不動産より売りにくい事情を持つ不動産を指す通称です。法律に「訳あり不動産」の定義はありません。
不動産の広告や解説では、物理的・法的・環境的・心理的の4種類に分ける説明が多く見られます。相続した実家では、共有・借地権・相続登記の未了のような権利関係と、農地・山林も多くあります。この記事では、次の4つのまとまりに分けました。
| まとまり | 含まれる種類 | 売るときに主に変わること |
|---|---|---|
| 許可・法令上の制限 | 再建築不可、無道路地、市街化調整区域、既存不適格・違反建築、農地、山林 | 買主が建てられるか、許可や届出が要るか |
| 権利関係 | 共有名義、借地権、相続登記の未了、未登記の建物、境界・越境 | 誰が売主になれるか、誰の同意が要るか |
| 建物の状態・管理 | 建物の不具合、管理不全の空き家、家財が残る家 | 契約後の責任、持ち続ける間の費用 |
| 人の死・周辺環境 | 事故物件、周辺環境 | 買主に伝えるべき事実 |
自分の実家は、どの種類に当たりますか?
実家の状態を、下の判定表で探します。当てはまる行が複数あれば、すべて控えておきます。右の列の記事が、その種類の詳しい説明です。
| 実家の状態 | 当てはまる種類 | 最初に読む記事 |
|---|---|---|
| 敷地が道路に2m以上接していない | 再建築不可 | 再建築不可の家を手放す方法 |
| 他人の土地に囲まれ、公道に直接出られない | 無道路地(袋地) | 道路に接していない土地・家を売る |
| 都市計画で市街化調整区域になっている | 市街化調整区域 | 市街化調整区域の空き家を売る |
| 建築時の書類がない。増築部分の確認の記録が分からない | 既存不適格・違反建築のおそれ | この記事の「許可・法令上の制限」の節 |
| 登記簿の所有者が兄弟など複数 | 共有名義 | 共有名義の実家を売る |
| 建物は親のもの、土地は地主のもの | 借地権 | 借地権を相続したら |
| 登記簿の名義が亡くなった方のまま | 相続登記の未了 | 売る前の相続登記 |
| 登記事項証明書に建物の記録がない | 未登記の建物 | この記事の「権利関係」の節 |
| 境界標がない。隣地との境が曖昧 | 境界・越境 | この記事の「権利関係」の節 |
| 田や畑として使われている(いた)土地 | 農地 | 相続した農地を売る・手放す |
| 山林や原野 | 山林 | 相続した山林を売る・手放す |
| 雨漏り・シロアリ・傾き・設備の故障がある | 建物の不具合 | 契約不適合責任の免責特約 |
| 屋根や外壁が壊れ、近隣から連絡があった | 管理不全の空き家 | 空き家を持ち続けるコストとリスク |
| 親が家で亡くなった。事件や事故があった | 事故物件 | 孤独死・事故物件になった実家を売る |
| 騒音・悪臭・近隣の施設が気になる | 周辺環境 | 物件状況報告書の書き方 |
| どれにも当てはまらない。売り出したが売れない | 一般の売却で売れない | 売れないときの対処 |
どの種類か分からないときは、調べる先を確かめます。
| 確かめること | 資料 | 調べる先 |
|---|---|---|
| 名義・共有者・担保権・建物の登記の有無 | 登記事項証明書 | 法務局 |
| 土地の形と、囲んでいる土地 | 公図 | 法務局 |
| 前の道が建築基準法の道路か | 道路の種別 | 市区町村の建築担当課 |
| 市街化調整区域かどうか | 都市計画図・区域区分 | 市区町村の都市計画担当 |
| 農地かどうか | 現況と農地台帳 | 市区町村の農業委員会 |
| 契約や承諾の内容 | 借地契約書・承諾書・覚書 | 親の書類 |
迷うときは、空き家を相続したら最初にやることの診断で全体を確かめられます。
許可・法令上の制限で売りにくいのは、どの種類ですか?
許可・法令上の制限で売りにくい種類は、再建築不可、無道路地、市街化調整区域、既存不適格・違反建築、農地、山林の6つです。いずれも、買主が建てられるか、許可や届出が要るかが論点です。
| 種類 | 目印と、売るときに変わること | 根拠 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 再建築不可 | 敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接していない。建て替えの建築確認が通らず、買い手が限られる | 建築基準法42条・43条 | 再建築不可 |
| 無道路地(袋地) | 他の土地に囲まれ公道に通じない。通行の権利が、法律上の通行権か登記した地役権か承諾書かで、売り先が変わる | 民法210条 | 無道路地 |
| 市街化調整区域 | 市街化を抑制すべき区域。売買に許可は要らないが、買主が建て替え・用途変更をするときは知事等の許可が要る | 都市計画法7条3項・43条 | 市街化調整区域 |
| 既存不適格・違反建築 | 建築後の法改正で現行の規定に合わなくなった建物(既存不適格)と、規定に違反して建てた建物(違反建築)。違反建築は、特定行政庁が是正の措置を命じることができる | 建築基準法3条2項・9条1項 | 専用記事なし |
| 農地 | 農地のまま売るには農業委員会の許可、転用して売るには知事等の許可が要る。相続したら農業委員会へ届け出る | 農地法3条・3条の3・5条 | 農地 |
| 山林 | 地域森林計画の対象の民有林を新たに取得したら、市町村長へ届け出る。届け出ないと10万円以下の過料 | 森林法10条の7の2・213条 | 山林 |
既存不適格については、建築基準法3条2項が、規定の施行の際に現に存する建築物には現行の規定を適用しないと定めています。同条3項に例外があるため、実家が既存不適格かどうかは、建築時の書類を探したうえで、市区町村の建築担当課に確かめます。
権利関係で売りにくいのは、どの種類ですか?
権利関係で売りにくい種類は、共有名義、借地権、相続登記の未了、未登記の建物、境界・越境の5つです。誰が売主になれるか、誰の同意が要るかが論点です。
| 種類 | 目印と、売るときに変わること | 根拠 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 共有名義 | 登記簿の所有者が複数。全体を売るには全員の同意が要る。自分の持分だけなら、他の共有者の同意なしに売れる | 民法251条1項・206条 | 共有名義 |
| 借地権 | 建物は自分のもの、土地は地主のもの。第三者に売るには地主の承諾が要る。承諾が得られなければ、裁判所に承諾に代わる許可を申し立てられる | 借地借家法19条 | 借地権 |
| 相続登記の未了 | 登記簿の名義が亡くなった方のまま。相続で取得したと知った日から3年以内に申請する義務があり、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料 | 不動産登記法76条の2・164条 | 売る前の相続登記 |
| 未登記の建物 | 登記事項証明書に建物の記録がない。建物を取得した人は、取得の日から1か月以内に表題登記を申請する義務があり、怠ると10万円以下の過料 | 不動産登記法47条・164条 | 専用記事なし |
| 境界・越境 | 境界標がない、隣地との境に争いがある。国庫帰属では、境界が明らかでない土地や、所有権の範囲に争いがある土地は申請できない | 国庫帰属法2条3項5号 | 専用記事なし |
未登記の建物と境界の確認は、専門の資格者(土地家屋調査士など)に相談する場面です。費用と期間は、見積で確かめます。相続人どうしの話し合いが先に必要な場合は、売る前の相続登記と共有名義の順に読んでください。
建物の状態・管理で売りにくいのは、どの種類ですか?
建物の状態・管理で売りにくい種類は、建物の不具合、管理不全の空き家、家財が残る家の3つです。売った後の責任と、持ち続ける間の費用が論点です。
| 種類 | 目印と、売るときに変わること | 根拠 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 建物の不具合 | 雨漏り・シロアリ・傾き・設備の故障。売主は、契約の内容に適合しない場合の追完などの責任を負う。買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと、請求できなくなる。免責の特約があっても、知りながら告げなかった事実は免れない | 民法562条・566条・572条 | 契約不適合責任、物件状況報告書 |
| 管理不全の空き家 | 倒壊や衛生上の危険のおそれがある空き家。市町村長が指導・勧告でき、勧告を受けた敷地は住宅用地の固定資産税の特例の対象外になる。特定空家等の命令に違反すると50万円以下の過料 | 空家法13条・22条・30条、地方税法349条の3の2 | 持ち続けるコストとリスク |
| 家財が残る家 | 家財を残したまま売るか、片付けてから売るかは、買主との契約で決める | 契約による | 専用記事なし(下の姉妹サイト) |
家財の片付けは、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)で、手順と業者の選び方を扱っています。建物を解体して売るかどうかは、解体して売るか、古家付きで売るかで比べます。
人の死・周辺環境で売りにくいのは、どの種類ですか?
人の死・周辺環境で売りにくい種類は、事故物件と周辺環境の2つです。どちらも、買主に伝えるべき事実が論点です。
| 種類 | 目印と、売るときに変わること | 根拠 | 詳しい記事 |
|---|---|---|---|
| 事故物件 | 家で人が亡くなった。自然死や日常生活の中の不慮の死は、特殊清掃等がなければ原則として告げなくてよい。売買には、賃貸の「概ね3年」のような期間の区切りがない | 国土交通省ガイドライン、宅建業法47条1号 | 事故物件 |
| 周辺環境 | 騒音・悪臭・近隣の施設など。宅建業者は、環境などで買主の判断に重要な影響を及ぼす事項を、故意に告げないことが禁止されている | 宅建業法47条1号ニ | 物件状況報告書 |
売主は、分かっている事実を物件状況報告書に書いて、仲介の不動産会社に伝えます。
訳ありの事情は、買主への説明のどこに出ますか?
訳ありの事情の多くは、不動産会社が買主に行う重要事項説明の項目に出ます。宅地建物取引業法35条は、契約が成立するまでに、宅地建物取引士が書面を交付して説明する項目を定めています。
| 説明の項目 | 条文 | 関係する種類 |
|---|---|---|
| 登記された権利の種類・内容、登記名義人 | 1号 | 共有名義、借地権、相続登記の未了、担保権 |
| 都市計画法・建築基準法などの制限の概要 | 2号 | 再建築不可、市街化調整区域、既存不適格・違反建築 |
| 私道に関する負担 | 3号 | 私道に面した土地 |
| 飲用水・電気・ガス・排水施設の整備の状況 | 4号 | 水道やガスの引込みがない土地 |
| 既存建物の建物状況調査の実施の有無と結果の概要 | 6号の2 | 建物の不具合(建物の状態の確認) |
人の死や周辺環境は、35条の項目に直接の定めがありません。ただし、47条1号は、35条の項目のほか、環境などで相手方の判断に重要な影響を及ぼす事項を故意に告げないことを禁じています。分かっていることは、仲介の不動産会社に伝えます。
種類が重なるとき、どの順に進めますか?
種類が重なるときは、名義・共有、許可・通行、建物・告知、売り先の順に進めます。前の段階が決まらないと、次の段階の条件が決まらないためです。この順番は、この記事での整理です。
| 順番 | 確かめること | 理由 | 読む記事 |
|---|---|---|---|
| 1 | 名義、共有者の同意、借地の地主の承諾 | 誰が売主になれるかが決まらないと、売買の契約ができない | 売る前の相続登記、共有名義、借地権 |
| 2 | 接道・通行、区域、農地・山林の許可や届出 | 買主が建てられるか、許可が要るかで、売り先が変わる | 再建築不可、無道路地、市街化調整区域 |
| 3 | 建物の不具合、人の死、周辺環境の告知 | 契約書の条件と、売った後の責任が決まる | 契約不適合責任、事故物件 |
| 4 | 売り先の比較(仲介・買取・隣地・国庫帰属) | 1〜3の条件がそろうと、同じ条件で査定を比べられる | 買取と仲介の比較 |
モデルケース(重なり方の例)。実在の事例ではありません。
条件:実家が兄弟3人の共有で、市街化調整区域にあり、親が家で亡くなって特殊清掃をした。
- 共有者の3人で、売ること、代表者、分配の割合を決める(全体を売るには全員の同意が必要)。
- 窓口で、建てた時の許可と、買主が建て替え・用途変更をするときの許可の要否を確かめる。
- 特殊清掃等をした事実は、売買では期間の区切りなく告げる対象になりうる。物件状況報告書に書く。
- 条件がそろったところで、仲介と買取の査定を比べる。
国庫帰属で手放せるのは、どの種類ですか?
国庫帰属で手放せるかは、種類で変わります。相続土地国庫帰属制度とは、相続等で取得した土地を、一定の要件で国に引き取ってもらう制度です(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律、法務省)。法2条3項は、申請できない土地を定めています。
| 申請できない土地 | 関係する種類 | 号 |
|---|---|---|
| 建物の存する土地 | 再建築不可、事故物件、管理不全の空き家など建物のある実家すべて。解体してから申請する | 1号 |
| 担保権や、使用・収益を目的とする権利が設定されている土地 | 担保権のある土地、借地権が設定されている底地 | 2号 |
| 現に通路として使われている部分など、他人の使用が予定される土地を含む | 他人が通路に使っている部分のある土地 | 3号 |
| 特定有害物質で汚染されている土地(法務省令の基準を超えるもの) | 土壌汚染のある土地 | 4号 |
| 境界が明らかでない土地、所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地 | 境界・越境、共有者・相続人の間の争い | 5号 |
共有の土地は、共有者の全員が共同して申請する場合に限り、申請できます(法2条2項)。借地権そのものは、土地の所有権ではないため、この制度の対象になりません。ほかに、承認されない土地の要件(法5条)があります。要件は国庫帰属の要件チェックで、制度の全体は相続土地国庫帰属制度で確かめられます。
訳あり不動産の買取を相談する前に、何をそろえますか?
相談の前に、判定表で当てはまった種類と資料をそろえると、複数の会社の査定を同じ条件で比べられます。
| そろえるもの | 理由 |
|---|---|
| 当てはまった種類の一覧(判定表の行) | 査定の条件を、会社に正確に伝えられる |
| 登記事項証明書、公図 | 名義、共有者、担保権、建物の登記の有無が分かる |
| 親の書類(借地契約書、承諾書、購入時の資料) | 権利の内容を示す資料になる |
| 人の死、不具合、周辺環境で分かっていること | 物件状況報告書に書く事実になる |
物件が新潟県にある場合は、姉妹サイトの新潟 実家じまいナビ(運営:株式会社Kogera)が県内の情報をまとめています。
訳あり不動産の買取を扱う会社に、査定を申し込める窓口があります。物件によっては対象外です。価格を最優先する人、仲介で売る時間がある人、売るかどうか家族で決まっていない人には向きません。
よくある質問
訳あり不動産にはどんな種類がありますか?
広告では物理的・法的・環境的・心理的の4種類で説明されることが多くあります。相続した実家では、共有・借地権・相続登記の未了などの権利関係と、農地・山林もあります。
訳あり不動産は、売ることができますか?
売れます。ただし、種類によって、必要な同意や許可、買主に伝える事実、売り先が変わります。判定表で種類を選び、詳しい記事を読んでください。
訳あり不動産を国に引き取ってもらえますか?
条件を満たせば、相続土地国庫帰属制度を申請できます。建物がある土地、担保権のある土地、境界が明らかでない土地などは申請できません(法2条3項)。
この記事の根拠
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)35条・47条1号(確認日 )
- 民法(e-Gov法令検索)206条・210条・251条・562条・566条・572条(確認日 )
- 建築基準法(e-Gov法令検索)3条・9条・42条・43条(確認日 )
- 都市計画法(e-Gov法令検索)7条・43条(確認日 )
- 農地法(e-Gov法令検索)3条・3条の3・5条(確認日 )
- 森林法(e-Gov法令検索)10条の7の2・213条(確認日 )
- 借地借家法(e-Gov法令検索)19条(確認日 )
- 不動産登記法(e-Gov法令検索)47条・76条の2・164条(確認日 )
- 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(e-Gov法令検索)1条・2条(確認日 )
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索)2条・13条・22条・30条(確認日 )
- 地方税法(e-Gov法令検索)349条の3の2(勧告を受けた敷地は住宅用地の特例の対象外)(確認日 )
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)(確認日 )
最終更新:2026年10月25日。法令は2026年10月25日に確認した条文の時点です。
- 宅地建物取引業法・民法・建築基準法・都市計画法・農地法・森林法・借地借家法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法・空家法・地方税法(e-Gov法令検索)
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)
この記事は一般的な情報です。個別の判断は、弁護士・司法書士・土地家屋調査士・宅地建物取引業者にご確認ください。