第4章 実行|買取・訳あり

道路に接していない土地・家を売る:通行権の確かめ方と売り先

道路に接していない土地も売れます。通行の権利が法律上の通行権か、登記した地役権か、承諾書かで買い手と売り方が変わるので、先に確かめます。

  • 道路に接していない土地にも、公道へ出る通行の権利があります(民法210条)。ただし、通路の幅や車で通れるかは、権利の種類と書面で変わります。
  • 売る前に、登記事項証明書・公図・通行の承諾書で、どの権利があるかを確かめます。権利が書面で示せるほど、買い手の候補が広がります。
  • 売り先は、隣地の所有者、買取業者、一般の買主です。国庫帰属は、通行が妨げられている土地は承認されません。

公開 /更新 /執筆・編集:実家の手引き 編集部(運営者情報)

道路に接していない土地(無道路地・袋地)とは何で、なぜ売りにくいのですか?

無道路地・袋地とは、他の土地に囲まれて道路に接していない土地を指す通称です。民法210条は「他の土地に囲まれて公道に通じない土地」と書いています。家を建てるときの道路との関係(接道義務)も満たさないため、買い手が限られます。

この記事は、道路に接していない土地の「通行の権利」と「売り先」を扱います。接道義務(建築基準法43条の幅2m以上の接道)と再建築不可の一般論は、再建築不可の家を手放す方法で扱っています。

道路に接していない土地が売りにくい理由
理由 内容 根拠
建て替えができない 敷地が道路に2m以上接していないと、建築確認が通らない 建築基準法43条1項
通行の範囲が決まっていない 法律上の通行権は、必要で損害が最も少ない場所と方法に限られる 民法211条1項
通行の費用がかかる 通行する土地の損害に対して償金を払う 民法212条
権利が書面で示せない 法律上の通行権は登記できない。承諾書は相手との合意 不動産登記法3条

民法の通行権は「公道に至るため」の権利で、建築基準法の道路(42条)に2m以上接することとは別です。

道路に接していない土地には、どんな通行の権利がありますか?

道路に接していない土地の通行の権利は、主に3種類です。法律で当然に認められる囲繞地通行権、契約で設定する通行地役権、相手の承諾による通行です。

囲繞地通行権とは、他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者が、公道に出るために囲んでいる土地を通行できる権利です(民法210条)。池や川を通らないと公道に出られない場合、崖で公道との高低差が大きい場合も同じです(同条2項)。

道路に接していない土地の3つの通行の権利の比較
項目 囲繞地通行権 通行地役権 通行の承諾(承諾書)
生じ方 法律で当然に生じる(民法210条) 隣地の所有者との設定の契約(民法280条) 隣地の所有者との合意
通れる範囲 必要で、隣地の損害が最も少ない場所と方法(211条1項) 契約で定めた目的と範囲 書面で定めた範囲
費用 償金を払う。通路の開設の損害以外は1年ごとに払える(212条) 契約で定める 書面で定める
登記 できない できる(不動産登記法3条4号) 登記簿には載らない
土地を売ったとき 袋地である限り、新しい所有者にも生じる 原則、土地の所有権とともに移る(民法281条) 書面の内容で変わる

囲繞地通行権には、次の決まりもあります。

  • 通行権を持つ人は、必要があれば通路を開設できます(民法211条2項)。
  • 土地の分割や一部の譲渡で袋地が生じた場合は、分割した相手の土地だけを通行でき、償金は要りません(民法213条)。
  • 通路の幅や車で通れるかは、条文に定めがありません。個別の事情で判断されます。

通行地役権は、登記をしないと第三者に対抗できないのが原則です(民法177条)。継続的に行使され外から見て分かる地役権は、時効で取得できる場合があります(民法283条)。20年行使しないと、時効で消えることがあります(民法166条2項・291条)。

水道・ガス・電気などの引込みは、2023年(令和5年)4月1日施行の民法改正で、他の土地に設備を設置する権利が明文化されました(民法213条の2、法務省)。あらかじめ、目的・場所・方法を相手に通知する必要があります(同条3項)。

実家の土地の通行の権利は、どう確かめますか?

実家の土地の通行の権利は、法務局で登記事項証明書と公図を取り、家にある書面と現地の通路を照らし合わせて確かめます。権利の種類が分かれば、売り方の候補が決まります。

道路に接していない土地の通行の権利を確かめる資料と取得先
確かめること 資料 取得先
土地の形と、囲んでいる土地の地番 公図 法務局
通路になっている土地の所有者 隣地・通路の土地の登記事項証明書 法務局
通行地役権の登記 自分の土地と通路の土地の登記事項証明書 法務局
通行の承諾・償金の取決め 承諾書・覚書・領収書 家の書類(亡くなった親の保管分)
通路の幅と使われ方 現地の写真と計測 現地
前の道が建築基準法の道路か 道路の種別の判定 市区町村の建築担当課

通行地役権を登記すると、承役地(通路になる土地)には、要役地・目的と範囲が登記されます(不動産登記法80条1項)。要役地(通行する側の土地)にも、登記官が職権で記録します(同条4項)。自分の土地の登記事項証明書に地役権の記録があるかを見ます。

調べる順番は次のとおりです。

  1. 相続登記が済んでいるかを確かめる。済んでいなければ、売る前に名義を直す(売る前の相続登記)。
  2. 公図で、公道までの間にある土地の地番を確かめる。
  3. その土地の登記事項証明書で、所有者と地役権の登記を確かめる。
  4. 親の書類から、承諾書・覚書・償金の支払いの記録を探す。
  5. 現地で、通路の幅、車が入れるか、門や塀で通行が妨げられていないかを見る。

実家が兄弟との共有なら共有名義の実家を売るも読んでください。権利の判断に迷うときは、資料を持って弁護士・司法書士・土地家屋調査士に相談します。

通行の権利の種類で、売り方はどう変わりますか?

通行の権利が書面や登記で示せるほど、買い手は通行の範囲と費用を確かめやすくなります。権利が口約束だけなら、売る前に書面にできるかを隣地の所有者と話します。

通行の権利の状態ごとの売り方の目安
通行の権利の状態 売り方の目安 売る前にすること
通行地役権が登記されている 一般の買主・買取業者のどちらにも話しやすい 登記の目的と範囲が今の通路と合うかを確かめる
承諾書がある(登記なし) 買い手は書面の内容で判断する 承諾の範囲・期間・相手の所有者が変わったときの扱いを確かめる
囲繞地通行権だけ(書面なし) 隣地の所有者への売却、買取業者が中心 通路の場所と償金を、隣地の所有者と書面にできるか相談する
通行が妨げられている 隣地の所有者への売却、買取業者 弁護士に相談する。国庫帰属は承認されない
通路の土地の持分を持っている 一般の買主にも話しやすい 持分の登記と、他の共有者との取決めを確かめる

売るときは、通行の権利の状態を買主に伝えます。分かっている事実は物件状況報告書(告知書)に書き、契約の扱いは契約不適合責任の免責特約を読んでください。

隣地の所有者に売る・隣地から通路を買うには、どう進めますか?

道路に接していない土地は、隣地の所有者が最も買い手になりやすい相手です。隣地の所有者にとっては、敷地が広がり、通行される負担がなくなるためです。逆に、隣地から通路の土地を買い足して道路に接すれば、一般の買主にも売りやすくなります。

隣地の所有者と話す2つの方向
方向 向くケース 費用・注意点
実家の土地を隣地の所有者に売る 隣地の所有者が敷地を広げたい 価格は交渉。測量・登記の費用がかかる
隣地から通路の土地を買い足す 隣地側に余地がある 分筆の測量と登記の費用がかかる。建て替えには道路に2m以上の接道が要る
通行地役権を設定して登記する 売らずに通行を確保したい 範囲・対価を契約で定め、登記する

価格に公的な相場はありません。売る相手が配偶者や親子など特別の関係がある人の場合、空き家の3,000万円控除は使えません(国税庁 No.3306)。税金は相続した家を売るときの税金で確かめてください。

モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。

条件:道路に接していない土地と家を300万円で売る。長期譲渡、取得費は不明で売却価格の5%、2026年(令和8年)中の契約。3,000万円控除は使わない場合。測量・登記の費用は含めていません。

道路に接していない実家を300万円で売った場合の手取り(モデルケース:見本の数字)
項目 隣地の所有者に直接売る 不動産会社の仲介で売る
売却価格 3,000,000円 3,000,000円
取得費(概算:5%) 150,000円 150,000円
仲介手数料 0円 154,000円
印紙税(軽減後) 1,000円 1,000円
譲渡所得 2,849,000円 2,695,000円
所得税+復興特別所得税 436,300円 412,700円
住民税 142,400円 134,700円
手取り 2,420,300円 2,297,600円

計算の内訳は次のとおりです。

  • 仲介手数料(通常の上限):(3,000,000円×4%+20,000円)×1.1=154,000円
  • 印紙税:100万円超500万円以下の軽減後の税額(国税庁 No.7108)
  • 税率:長期譲渡所得は所得税15%、復興特別所得税は所得税額の2.1%、住民税5%(国税庁 No.3208)。100円未満は切り捨て

800万円以下の物件には、仲介手数料の上限の特例があります(国土交通省、仲介手数料の早見表)。自分の価格では売却手取り計算で試せます。

道路に接していない土地は、国庫帰属で手放せますか?

道路に接していない土地も、他の要件を満たせば相続土地国庫帰属制度を申請できます。ただし、民法210条の通行が現に妨げられている土地は承認されません(施行令4条2項1号)。

相続土地国庫帰属制度とは、相続等で取得した土地を、一定の要件で国に引き取ってもらう制度です(相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律、法務省)。通行に関係する要件は次のとおりです。

相続土地国庫帰属制度で、通行・通路に関係する要件
土地の状態 扱い 根拠
建物がある 申請できない(却下) 法2条3項1号
現に通路として使われている部分を含む 申請できない(却下) 法2条3項3号、施行令2条1号
袋地で、民法210条の通行が現に妨げられている 承認されない(不承認) 法5条1項4号、施行令4条2項1号
担保権や、使用・収益を目的とする権利が設定されている 申請できない(却下) 法2条3項2号
境界が明らかでない 申請できない(却下) 法2条3項5号

実家の土地の一部を隣の家が通路に使っている場合は、その部分が「現に通路の用に供されている土地」に当たらないかを、申請前に法務局で確かめます。分筆して通路の部分を除けるかも、あわせて相談します。

2026年(令和8年)9月30日時点の統計は、申請6,125件、帰属3,231件、却下86件、不承認103件、取下げ1,162件です(法務省)。却下の理由のうち22件は「現に通路の用に供されている土地」、不承認の理由のうち4件は「民法上の通行権利が現に妨げられている土地」でした。1件に複数の理由がある場合を含みます。

審査手数料は1筆14,000円、負担金は原則20万円です(施行令3条・5条)。市街化区域内の宅地などは面積で算定します。建物は解体してから申請します。要件の事前チェックは国庫帰属の要件チェックで、制度の全体は相続土地国庫帰属制度で確かめられます。申請前の相談先は、土地のある地域の法務局の本局です。

買取業者に売る前に、何を確かめますか?

道路に接していない土地を買取業者に売る前に、通行の権利・通路の所有者・建物の状態の3点を資料で確かめます。資料がそろうと、複数の会社の査定を同じ条件で比べられます。

道路に接していない土地を買取業者に査定してもらう前の確認表
確かめること 理由
通行の権利の種類(囲繞地通行権・地役権・承諾書) 買取の条件や価格が変わる
通路の土地の所有者と連絡先 買い手が後から通行を交渉する相手になる
償金・承諾料を払っていたか 引き継ぐ取決めがあるかが分かる
水道・ガス・排水の管がどこを通っているか 他人の土地を通る管は、設置の権利の扱いを確かめる(民法213条の2)
建物を残すか、解体するか 解体すると建て替えができないまま更地になる。国庫帰属と比べる
相続登記・共有者の同意 名義が整っていないと売買できない

買取の価格に公的な統計はありません。買取と仲介の違いは空き家の買取と仲介の比較、売れないときの順番は売れないときの対処にあります。物件が新潟県にある場合は、姉妹サイトの新潟 実家じまいナビ(運営:株式会社Kogera)が県内の情報をまとめています。

あなたのケースでは、どの順番で進めますか?

道路に接していない実家は、通行の権利の確認、隣地の所有者への打診、買取・国庫帰属との比較の順に進めます。解体などの大きな支出は、売り先の見通しが立ってから決めます。

道路に接していない実家を売るときの、状況ごとの次の一歩
あなたの状況 次の一歩
通行の権利が分からない 公図と登記事項証明書を取り、親の書類から承諾書を探す
隣地の所有者と話せる 売るか、通路を買い足すか、地役権を登記するかを打診する
隣地の所有者が通行を拒んでいる 弁護士に相談する。国庫帰属は承認されない
早く手放したい 資料をそろえ、買取業者の査定を複数取る
土地だけを国に引き取ってほしい 解体前に要件を確かめ、国庫帰属と売却を比べる
すぐに決められない 持ち続けるコストを計算する

道路に接していない土地など、訳ありの不動産の買取を扱う会社に査定を申し込める窓口があります。物件によっては対象外です。価格を最優先する人、隣地の所有者との話し合いを試す時間がある人、売るか家族で決まっていない人には向きません。申込み前に、各社の案内を読んでください。

この記事で使える計算ツール

計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。

よくある質問

道路に接していない土地は売れますか?

売れます。買い手の候補は、隣地の所有者、買取業者、一般の買主です。建て替えができないため、一般の買主は限られます。

袋地の通行権は、土地を売ったら買主に引き継がれますか?

囲繞地通行権は、袋地である限り新しい所有者にも生じます。通行地役権は原則、土地とともに移ります。承諾書は、書面の内容で扱いが変わります。

囲繞地通行権に通行料はかかりますか?

通行する土地の損害に対して償金を払います(民法212条)。土地の分割や一部の譲渡で袋地が生じた場合は、償金は要りません(民法213条)。

道路に接していない土地は、国庫帰属で手放せますか?

他の要件を満たせば申請できます。民法210条の通行が現に妨げられている土地は承認されず、他人の通路に使われている土地は申請できません。

この記事の根拠

  1. 民法(e-Gov法令検索)166条2項・177条・209条・210条・211条・212条・213条・213条の2・280条・281条・283条・291条(確認日 )
  2. 建築基準法(e-Gov法令検索)41条の2・42条・43条(確認日 )
  3. 不動産登記法(e-Gov法令検索)3条・80条(確認日 )
  4. 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(e-Gov法令検索)2条3項・5条1項(確認日 )
  5. 同法施行令(e-Gov法令検索)2条・3条・4条2項・5条(確認日 )
  6. 法務省 相続土地国庫帰属制度の統計(令和8年9月30日現在、令和8年10月19日公表)(確認日 )
  7. 法務省「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」(令和5年4月1日施行)(確認日 )
  8. 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(令和6年7月1日施行)(確認日 )
  9. 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(確認日 )
  10. 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額(確認日 )
  11. 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき(確認日 )
  12. 国税庁 No.7108 不動産売買契約書の印紙税の軽減措置(令和9年3月31日までに作成)(確認日 )

最終更新:2026年10月22日。制度の内容は2026年10月時点の法令と公表資料です。

  • 民法・建築基準法・不動産登記法・相続土地国庫帰属法・同施行令(e-Gov法令検索)
  • 法務省の国庫帰属の統計(令和8年9月30日現在)と、民法改正(所有者不明土地等関係)の資料
  • 国土交通省の媒介報酬の資料、国税庁のタックスアンサー

この記事は一般的な情報です。通行の権利の判断は弁護士・司法書士に、税額は税務署・税理士にご確認ください。