第4章 実行|売る

契約不適合責任の免責特約:文例と、相続した空き家で使うときの注意

個人どうしの売買や買取業者への売却では、契約不適合責任を免除する特約は有効です。ただし、売主が知りながら告げなかった事実は、特約があっても免責されません。

  • 相続した家を個人が売るとき、買主が個人でも買取業者でも、契約不適合責任を免除・制限する特約は結べます(東京都の資料)。
  • 特約があっても、売主が知りながら告げなかった不具合は免責されません(民法572条)。知っている不具合は、物件状況報告書などで買主に告げます。
  • 下の文例は、当サイトが条文の言葉から作った見本です。契約書に入れる前に、不動産会社や弁護士に確かめてください。

公開 /更新 /執筆・編集:実家の手引き 編集部(運営者情報)

契約不適合責任とは何ですか?

契約不適合責任とは、売主が引き渡した家や土地が、種類・品質・数量について契約の内容に合わないときに、売主が買主に負う責任です(民法562条〜564条)。2020年(令和2年)4月1日の民法改正で、それまでの「瑕疵担保責任」から変わりました。

買主が売主に求められることは、次の4つです。

契約不適合責任とは何ですか?
買主が求められること 内容 根拠
追完の請求 修補(直すこと)などを求める 民法562条
代金の減額 追完されないとき、不適合の程度に応じて減額を求める 民法563条
損害賠償 売主に責任がある場合に、損害の賠償を求める 民法564条・415条
契約の解除 契約を解除する 民法564条・541条・542条

期間にも決まりがあります。種類・品質の不適合は、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、これらを求められなくなります(民法566条)。ただし、売主が引き渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この1年の制限はありません。

相続した家を個人として売るとき、免責特約は有効ですか?

相続した家を個人として売るとき、免責特約は原則として有効です。売主・買主の組み合わせで、効く法律が変わります。

相続した家を個人として売るとき、免責特約は有効ですか?
売主 買主 免責特約 根拠
個人(相続した家を売る人) 個人 免除する特約も、制限する特約も結べる 民法、東京都の資料
個人(相続した家を売る人) 買取業者などの事業者 結べる 民法
宅地建物取引業者 宅地建物取引業者でない買主 引き渡しから2年以上の期間を定める特約以外で、民法より買主に不利な特約は無効 宅地建物取引業法40条
事業者(宅地建物取引業者以外) 消費者(個人) 責任の全部を免除する条項は無効になりうる 消費者契約法8条

相続した家を売る人は、事業として売るのでなければ、消費者契約法の「事業者」にあたりません(消費者契約法2条)。このため、個人どうしの売買では、消費者契約法による免責特約の無効は問題になりません。東京都の資料も、売主・買主ともに消費者の売買では、免責する特約も制限する特約も可能としています。

免責特約があっても、責任を負うのはどんなときですか?

免責特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実と、売主が自ら第三者のために設定した権利(譲り渡した権利を含む)については、責任を免れません(民法572条)。

免責特約があっても、責任を負うのはどんなときですか?
免責されないもの 例 根拠
知りながら告げなかった事実 雨漏りを知っていて、買主に伝えなかった 民法572条
自ら第三者のために設定した権利 売主が設定した抵当権や賃借権を、買主に告げずに残した 民法572条

相続した家は、売主が住んでいなかったため、知らない不具合も多くあります。知らなかった不具合は、免責特約で責任を免除できます。知っている不具合は、契約前に書面で告げておけば、買主は不具合を知ったうえで買ったことになります。東京都の資料も、買主が欠陥を知っていた事情は、契約に適合しているかの重要な判断材料になりうるとしています。

告げる方法の一つが、物件状況報告書(告知書)と付帯設備表に書くことです。売るときに用意する書類は相続した家を売るときの必要書類一覧にまとめています。

免責特約は、どう書きますか?(文例)

免責特約の書き方には、全部を免除する型、範囲を限る型、期間を短くする型、容認事項を書く型の4つがあります。次の文例は、当サイトが民法の条文の言葉から作った見本です。

文例1:責任の全部を免除する

売主は、買主に対し、本物件の種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことについて、一切の責任を負わないものとする。ただし、売主が知りながら買主に告げなかった事実については、この限りでない。

使いどころは、建物が古く、状態を保証できない場合です。ただし書きは、民法572条で免責されない範囲を、契約書の中でも明らかにするためのものです。

文例2:責任の範囲を限る

売主は、本物件の種類又は品質に関する契約の内容との不適合のうち、雨漏り、シロアリの害、建物の構造上主要な部位の腐食及び給排水管の故障に限り、責任を負うものとする。

使いどころは、全部の免除では買主が見つかりにくい場合です。対象を限ると、買主の不安が減り、売主の負担も見通せます。どの項目を残すかは、建物の状態で決めます。

文例3:責任の期間を短くする

売主は、本物件の引渡しの日から3か月以内に買主から通知を受けた契約の内容との不適合に限り、責任を負うものとする。

民法566条は「知った時から1年以内の通知」ですが、個人どうしの売買では、引き渡しから短い期間に限る特約も結べます。売主が宅地建物取引業者の場合は、引き渡しから2年以上の期間でなければなりません(宅地建物取引業法40条)。

文例4:容認事項を書く

買主は、本物件について、物件状況報告書及び付帯設備表に記載された事項を確認し、これを容認したうえで買い受けるものとする。売主は、当該記載事項について、契約の内容に適合しないことを理由とする責任を負わない。

使いどころは、知っている不具合を告げたうえで売る場合です。告げた事項は契約の内容になるため、あとから不適合とされにくくなります。

文例をそのまま使うのではなく、物件の状態と相手に合わせて、不動産会社の契約書の条項と照らして決めてください。

免責にすると、売りやすさはどう変わりますか?

免責特約をつけると、買主が修繕の負担を自分で見込むことになるため、価格や条件の交渉材料になります。免責が売却価格にどれだけ影響するかを示す公的な統計はありません。

免責にすると、売りやすさはどう変わりますか?
売り方 契約不適合責任の扱い 向く人
仲介で個人に売る 免除・限定・期間短縮を交渉して決める 時間をかけても高く売りたい人
買取業者に売る 免除する条件で契約する例が多いとされる(三井のリハウスの解説) 古い家を、責任を残さずに早く手放したい人

買主が個人の場合、住宅ローンや建物の状態の確認を理由に、免責を受け入れない買主もいます。仲介で売るときの手数料の上限は仲介手数料の早見表で確かめられます。

責任を残さずに手放したいときは、どうしますか?

古い家で、売ったあとの責任を残したくないときは、買取業者への売却も比べます。買取では、不動産会社が買主になるため、仲介手数料もかかりません。買取と仲介の比べ方は空き家の買取と仲介、どちらが得かで整理しています。

共有名義、再建築不可、雨漏りなどで個人の買主が見つかりにくい家は、訳あり物件を専門に扱う買取の窓口に、査定を頼む方法があります。査定を頼んでも、売る義務はありません。条件はサービスごとに異なるため、申込み前に各社の案内を読んでください。買取の価格は仲介より低くなることがあるため、仲介で売れる見込みがある人には向きません。

この記事で使える計算ツール

計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。

よくある質問

個人間の売買で、契約不適合責任の免責は有効ですか?

有効です。売主・買主ともに消費者の売買では、免責する特約も制限する特約も結べます。ただし、売主が知りながら告げなかった事実は免責されません(民法572条)。

契約不適合責任の期間は、何年ですか?

民法では、買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知する必要があります(民法566条)。個人どうしの売買では、特約で期間を短くできます。売主が宅地建物取引業者なら、引き渡しから2年以上です。

免責特約があれば、雨漏りを黙って売ってもよいですか?

よくありません。知りながら告げなかった事実は、特約があっても責任を免れません。知っている不具合は、物件状況報告書などに書いて告げます。

買取業者に売ると、契約不適合責任はなくなりますか?

免除する条件で契約する例が多いとされます(三井のリハウスの解説)が、契約書の条項しだいです。署名の前に、責任の免除と期間の条項を確かめてください。

この記事の根拠

  1. 民法562条〜566条・572条・166条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  2. 宅地建物取引業法40条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  3. 消費者契約法2条・8条(e-Gov法令検索)(確認日 )
  4. 三井のリハウス「不動産買取とは?相場・仲介との違い・メリットを徹底解説」(買取では契約不適合責任を免除する例が多いとの解説)(確認日 )
  5. 東京都住宅政策本部 民間住宅部 不動産業課「不動産取引における契約不適合責任・瑕疵担保責任について」(確認日 )

最終更新:2026年10月19日。法令は2026年10月時点の条文です。

  • 民法562条〜566条・572条・166条(e-Gov法令検索、2026年10月19日確認)
  • 宅地建物取引業法40条(e-Gov法令検索、2026年10月19日確認)
  • 消費者契約法2条・8条(e-Gov法令検索、2026年10月19日確認)
  • 東京都住宅政策本部 民間住宅部 不動産業課「不動産取引における契約不適合責任・瑕疵担保責任について」(2026年10月19日確認)
  • 三井のリハウス「不動産買取とは?」(買取での契約不適合責任の扱いの解説。2026年10月17日確認)

文例は、当サイトが上の条文の言葉から作った見本で、特定の契約書の書式を写したものではありません。この記事は一般的な情報で、法律相談ではありません。個別の契約は、契約書の確認と、宅地建物取引業者・弁護士へのご相談で判断してください。