第4章 実行|売る
相続した家を売るときの必要書類一覧:段階別チェックリスト
相続した家を売るときは、相続登記で受け取った登記識別情報、作成後3か月以内の印鑑証明書と実印、本人確認書類が中心です。
- 売る前に、相続登記で名義を相続人に移しておきます。売却で使う登記識別情報は、相続登記のときに相続人へ通知されたものです。亡くなった方の権利証ではありません。
- 書類は「査定・媒介契約」「売買契約・決済」「売ったあとの保管」の3段階で集めます。印鑑証明書は、決済の日に作成後3か月以内のものを用意します。
- 登記上の住所が今の住所と違うときは、住所の変更登記も要ります。2026年(令和8年)4月1日から、住所の変更登記は義務です。
相続した家を売るとき、書類はいつ何が要りますか?
相続した家を売るときの書類は、査定・媒介契約、売買契約・決済、売ったあとの保管の3段階で使います。全体を一覧にすると、次のとおりです。
| 段階 | 書類 | どこで取るか | 何に使うか |
|---|---|---|---|
| 査定・媒介契約 | 登記事項証明書 | 法務局 | 名義・面積・抵当権などの確認 |
| 査定・媒介契約 | 公図・地積測量図 | 法務局 | 土地の形・面積・位置の確認 |
| 査定・媒介契約 | 固定資産税の納税通知書(課税明細書) | 毎年市区町村から届くもの(なければ評価証明書を取る) | 評価額と税額の確認 |
| 査定・媒介契約 | 建物の書類(確認済証・検査済証・設計図書など) | 家の中で探す | 重要事項説明で保存の状況を伝える |
| 査定・媒介契約 | 亡くなった方が買ったときの売買契約書・領収書 | 家の中で探す | 売ったあとの申告で取得費を示す |
| 売買契約・決済 | 登記識別情報(または登記済証) | 相続登記のときに通知されたもの | 買主への名義変更の登記 |
| 売買契約・決済 | 印鑑証明書(作成後3か月以内)と実印 | 住所地の市区町村 | 名義変更の登記の申請・委任 |
| 売買契約・決済 | 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカードなど | 不動産会社の取引時確認 |
| 売買契約・決済 | 住民票の写しなど(住所が変わった場合) | 住所地の市区町村 | 登記上の住所の変更登記 |
| 売買契約・決済 | 収入印紙 | 郵便局など | 売買契約書の印紙税 |
| 売ったあとの保管 | 売買契約書の写し、仲介手数料などの領収書 | 契約・決済で受け取る | 翌年の確定申告 |
| 売ったあとの保管 | 被相続人居住用家屋等確認書(3,000万円控除を使う場合) | 家の所在地の市区町村 | 3,000万円控除の申告 |
書類の名前と順番は、不動産会社や司法書士から指示があれば、その指示に従います。この一覧は、事前に探し始めるための目安です。
売る前に、相続登記は済んでいますか?
相続した家を売るには、先に相続登記で名義を相続人に移します。亡くなった方の名義のままでは、買主への名義変更の登記ができないためです。
相続登記が終わると、法務局から新しい名義人(相続人)に登記識別情報が通知されます(不動産登記法21条)。売るときの名義変更の登記では、この相続人の登記識別情報を提供します(不動産登記法22条)。亡くなった方の権利証(登記済証)や登記識別情報は、売却の登記には使いません。
相続登記そのものの書類(戸籍、遺産分割協議書など)は、この記事では扱いません。書類の一覧と様式は、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)の相続登記の必要書類一覧にまとめています。売る前の名義の決め方と期限は、売る前の相続登記で扱っています。
査定と媒介契約では、何を用意しますか?
査定と媒介契約では、物件の名義・面積・権利と、建物の状態が分かる書類を用意します。不動産会社は、売買契約の前に、登記された権利や建物の書類の保存の状況を、買主に重要事項として説明します(宅地建物取引業法35条1項1号・6号の2)。
| 書類 | 取り方と手数料(2025年4月1日以降) | 見るところ |
|---|---|---|
| 登記事項証明書 | 法務局の窓口・郵送で600円、オンライン請求で郵送受取520円・窓口受取490円 | 名義人、面積、抵当権が残っていないか |
| 公図・地積測量図 | 法務局で1筆(地積測量図は1件)ごとに、書面請求500円、オンライン請求で郵送受取470円・窓口受取440円 | 土地の形、面積、隣地との位置 |
| 固定資産税の納税通知書(課税明細書) | 毎年市区町村から届くもの。見当たらなければ、市区町村(東京23区は都税事務所)で評価証明書を取る。手数料は自治体ごとに違う | 土地・建物の評価額と税額 |
| 境界確認書(あれば) | 家の中で探す。隣地の所有者と取り交わした書面 | 土地の境界 |
手数料は、法務省「登記手数料について」の令和7年4月1日以降の額です。
建物の書類は、何を探しますか?
建物の書類は、確認済証、検査済証、建物状況調査の報告書などです。既存の建物を売るとき、不動産会社はこれらの書類の「保存の状況」を、重要事項として買主に説明します(宅地建物取引業法35条1項6号の2ロ、同法施行規則16条の2の3)。
| 書類 | 説明の対象になる条件 |
|---|---|
| 確認済証(建築確認の申請書を含む) | すべての住宅 |
| 検査済証 | すべての住宅 |
| 建物状況調査の結果の報告書 | 調査をした場合 |
| 既存住宅の建設住宅性能評価書 | 評価を受けた場合 |
| 定期調査の報告書(建築基準法施行規則5条3項・6条3項) | 報告の対象の建物の場合 |
| 耐震診断の報告書など、耐震性が分かる書類 | 1981年(昭和56年)5月31日以前に工事に着手した住宅 |
書類がなくても売ることはできます。説明されるのは「保存しているかどうか」で、ない場合は「ない」と説明されます。
亡くなった方が買ったときの契約書は、なぜ探すのですか?
亡くなった方が家を買ったときの売買契約書や領収書は、売ったあとの確定申告で「取得費」を示すために使います。取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます(国税庁 No.3258)。
5%で計算すると、税金が高くなることがあります。査定と並行して、家の中で早めに探します。
売買契約と決済では、何を用意しますか?
売買契約と決済(代金の受け取りと引き渡し)では、名義変更の登記と本人確認の書類を用意します。中心は、登記識別情報、印鑑証明書と実印、本人確認書類の3つです。
| 書類 | 決まり | 根拠 |
|---|---|---|
| 登記識別情報(または登記済証) | 相続登記で相続人に通知されたものを使う | 不動産登記法21条・22条 |
| 印鑑証明書 | 名義変更の登記の申請書や、司法書士への委任状に添えるものは、作成後3か月以内 | 不動産登記令16条3項・18条3項 |
| 実印 | 印鑑証明書と同じ印 | 不動産登記令16条・18条 |
| 本人確認書類 | 不動産会社は、売買の際に氏名・住居・生年月日、取引の目的、職業を確認する | 犯罪による収益の移転防止に関する法律4条 |
| 収入印紙 | 売買契約書の印紙税。額は契約金額で決まる | 国税庁 No.7108 |
| 代金の振込先の口座 | 決済で代金を受け取る口座 | — |
印鑑証明書は、名義変更の登記を申請する時点で、作成後3か月以内のものが要ります。早く取りすぎると使えなくなるため、取る時期は司法書士に確かめます。印紙税の額は、売る流れと費用の費用の表にまとめています。
登記識別情報をなくしたときは、どうしますか?
登記識別情報をなくしても、家は売れます。登記識別情報を提供できない場合の手続きが、不動産登記法23条に定められています。
方法は、法務局から本人に確認の通知を送る「事前通知」(23条1項)、司法書士などの資格者代理人が本人確認の情報を提供する方法(23条4項1号)、公証人の認証を受ける方法(23条4項2号)の3つです。どちらを使うかは、決済の日程と費用をふまえて司法書士に相談します。
登記上の住所が今の住所と違うときは、どうしますか?
登記上の住所が今の住所と違うときは、売る前に住所の変更登記をします。2026年(令和8年)4月1日から、所有者は住所が変わった日から2年以内に変更の登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の5)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 期限 | 住所が変わった日から2年以内 |
| 2026年4月1日より前に変わった住所 | 2028年(令和10年)3月31日まで |
| 怠った場合 | 正当な理由がなければ5万円以下の過料(不動産登記法164条2項) |
| 使う書類 | 住民票の写しなど、住所のつながりが分かる書類 |
相続登記のあとに引っ越した場合が当てはまります。売却の登記の前提になるため、決済の前に司法書士に伝えておきます。
建物の確認済証や検査済証が見つからないときは?
確認済証と検査済証は、なくしても再発行されません。代わりに、役所に残る記録で、建築確認や検査を受けたかを確かめます。
| 自治体の例 | 方法 |
|---|---|
| 東京都 | 台帳記載事項証明書を発行。証明するのは台帳に記載された交付年月日や番号で、検査済証そのものの再発行ではない |
| 名古屋市 | 再発行はできない。処分等の概要書の閲覧で確かめる(平成4年4月1日以降に確認申請を受け付けたもの) |
方法と対象の年代は、自治体によって違います。家の所在地の市区町村の、建築確認の担当窓口に問い合わせます。古い建物では記録が残っていないこともあります。
共有・換価分割・成年後見のときは、何が加わりますか?
共有名義、換価分割、成年後見のときは、書類と手続きが加わります。
| ケース | 加わるもの | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 共有名義の家を売る | 共有者全員の登記識別情報・印鑑証明書・実印・本人確認書類 | 共有名義の実家を売る |
| 換価分割(売って代金を分ける) | 代金の分け方を書いた遺産分割協議書 | 換価分割とは |
| 成年後見人が売る | 本人が住んでいた家を売るには、家庭裁判所の許可(民法859条の3) | 親が認知症になると実家は売れない? |
成年後見人が家庭裁判所の許可を得ずに居住用の家を売ることは、民法859条の3で認められていません。許可の申立ての書類は、家庭裁判所の案内で確かめます。
売ったあと、何を保管しますか?
売ったあとは、翌年の確定申告に使う書類を保管します。売った翌年の2月16日から3月15日に申告します(国税庁 No.2020)。
- 売買契約書の写し(今回の売却のもの)
- 仲介手数料、測量費、印紙代などの領収書
- 亡くなった方が買ったときの売買契約書・領収書(取得費の確認用)
- 3,000万円控除を使う場合は、被相続人居住用家屋等確認書
確認書の取り方は被相続人居住用家屋等確認書の取り方、申告の手順は売った翌年の確定申告で扱っています。仲介手数料の上限は仲介手数料の早見表で確かめられます。
印刷して使えるチェックリストはありますか?
相続した家の売却の必要書類を、印刷して書き込めるExcelのチェックリストにしました。段階ごとに、書類、取り方、確認した日を記入できます。
手取りの見込みは、相続した家の売却手取り計算で、仲介手数料と税金を引いて確かめられます。
この記事で使える計算ツール
計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。
よくある質問
相続した家を売るとき、亡くなった親の権利証は使いますか?
使いません。売却の登記で使うのは、相続登記のときに相続人へ通知された登記識別情報です(不動産登記法21条・22条)。
不動産売却の印鑑証明書は、何か月以内のものですか?
名義変更の登記の申請書や、司法書士への委任状に添える印鑑証明書は、作成後3か月以内のものです(不動産登記令16条3項・18条3項)。
査定のときから、すべての書類が要りますか?
要りません。査定では、登記事項証明書や固定資産税の通知書など、物件が分かる書類があれば進みます。登記識別情報と印鑑証明書は、主に決済で使います。
検査済証がなくても、家は売れますか?
売れます。不動産会社は、書類を保存しているかどうかを重要事項として説明します。役所で台帳の記載を確かめられる場合があります。
この記事の根拠
- 不動産登記法21条(登記識別情報の通知)・22条(登記識別情報の提供)・23条(事前通知等)・76条の5(住所等の変更の登記の申請)・164条(過料)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 不動産登記令16条・18条(印鑑証明書は作成後3月以内)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 法務省 住所等変更登記の義務化について(確認日 )
- 法務省 登記手数料について(令和7年4月1日から)(確認日 )
- 宅地建物取引業法35条1項1号・6号の2(重要事項の説明)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 宅地建物取引業法施行規則16条の2の3(保存の状況を説明する建物の書類)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律4条(取引時確認)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 国土交通省 不動産業におけるマネー・ローンダリング対策(犯罪収益移転防止法)(確認日 )
- 民法859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 東京都都市整備局 台帳記載事項証明書の発行(確認日 )
- 名古屋市 確認済証又は完了検査済証を紛失したが、再発行してもらえるか(FAQ)(確認日 )
- 国税庁 タックスアンサー No.2020 確定申告(確認日 )
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき(確認日 )
- 国税庁 No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置(確認日 )
最終更新:2026年10月18日。制度の数字は2026年10月時点の公表情報です。
- 不動産登記法21条・22条・23条・76条の5・164条、不動産登記令16条・18条(e-Gov法令検索、2026年10月18日確認)
- 法務省「住所等変更登記の義務化について」「登記手数料について」(2026年10月18日確認)
- 宅地建物取引業法35条、同法施行規則16条の2の3(e-Gov法令検索、2026年10月18日確認)
- 犯罪による収益の移転防止に関する法律4条(e-Gov法令検索)、国土交通省「不動産業におけるマネー・ローンダリング対策」(2026年10月18日確認)
- 民法859条の3(e-Gov法令検索、2026年10月18日確認)
- 東京都都市整備局「台帳記載事項証明書の発行」、名古屋市FAQ「確認済証又は完了検査済証の再発行」(2026年10月18日確認)
- 国税庁 No.2020、No.3258、No.7108(2026年10月17日確認)
この記事は一般的な情報です。必要な書類は、物件と取引の内容で変わります。個別の登記・契約・税務は、司法書士・宅地建物取引業者・税理士へのご相談で判断してください。