第4章 実行|買取・訳あり

未登記の建物がある実家を売る:表題登記の要否と増築未登記の扱い

未登記の建物がある実家も売れます。ただし建物の所有権を取得した人には、1か月以内の表題登記の申請義務があります。買主が融資を使うなら登記の状態を先に確かめます。

  • 未登記の建物とは、登記事項証明書に建物の記録(表題部)がない建物です。売買契約は登記がなくても結べますが(民法176条)、買主に所有権を主張できる状態にするには登記が要ります(民法177条)。
  • 表題登記のない建物の所有権を取得した人には、取得の日から1か月以内に表題登記を申請する義務があり、怠ると10万円以下の過料です(不動産登記法47条1項・164条)。増築で床面積が増えたときは、変更登記が必要です(同法51条1項)。
  • 買主が融資を使うなら、登記の状態を先に金融機関に確かめます。表題登記は土地家屋調査士の業務です。費用は一次の相場がないため、見積で確かめます。

公開 /更新 /執筆・編集:実家の手引き 編集部(運営者情報)

最終更新:2026年10月25日。条文は2026年10月時点でe-Govに掲載されているものです。

未登記の建物とは何で、自分の実家が当てはまるかをどう確かめますか?

未登記の建物とは、登記記録に表題部がない建物です。不動産登記法は、登記記録を表題部と権利部に分けて作ると定めます(12条)。建物の所在・種類・構造・床面積を最初に記録する登記を、表題登記といいます(2条20号)。

「相続登記が済んでいない」状態とは別です。相続登記が未了の建物は、亡くなった方の名義の登記が残っています。未登記の建物には、名義の登記そのものがありません。

未登記に見える3つの状態
状態 目印 必要な登記
建物全体が未登記 登記事項証明書に建物の記録がない 表題登記(47条1項)
増築部分だけが未登記 登記の床面積・構造が現況と合わない 建物の表題部の変更登記(51条1項)
登記はあるが、建物が現存しない 取り壊したのに登記が残る 建物の滅失登記(57条)

確かめる資料は、次のとおりです。

未登記の建物とは何で、自分の実家が当てはまるかをどう確かめますか?
確かめること 資料 取得先
建物の登記の有無・床面積 登記事項証明書 法務局
市区町村が家屋として把握しているか 固定資産税の課税明細書、課税台帳の記載 市区町村の税務担当課
建築年・増築の時期 親の書類、工事の契約書 家の書類

固定資産税の課税があっても、登記されているとは限りません。固定資産税は、登記簿または家屋補充課税台帳に所有者として登記・登録されている者に課されます(地方税法343条2項)。家屋補充課税台帳は、登記されていない家屋のための台帳です(同法341条13号・381条4項)。所有者として登録された人が賦課期日前に亡くなったときは、その日に現に所有している人が納税義務者です(同法343条2項)。

取り壊した建物の滅失登記は、姉妹サイトの建物滅失登記の必要書類リスト(ふれあいの丘、運営:株式会社Kogera)で扱っています。

未登記の建物には、表題登記の申請義務がありますか?

あります。新築した建物や、表題登記がない建物の所有権を取得した人は、所有権の取得の日から1か月以内に表題登記を申請しなければなりません(不動産登記法47条1項)。正当な理由なく怠ると、10万円以下の過料です(同法164条1項)。

未登記の建物に関わる申請義務の条文
登記 義務を負う人 期限 怠ったとき 根拠
表題登記 新築した人、表題登記のない建物の所有権を取得した人 取得の日から1か月 10万円以下の過料 47条1項・164条1項
建物の表題部の変更登記 表題部所有者・所有権の登記名義人 変更の日から1か月 同上 51条1項・164条1項
建物の滅失登記 表題部所有者・所有権の登記名義人 滅失の日から1か月 同上 57条・164条1項
相続登記 所有権の登記名義人の相続人 知った日から3年 同上 76条の2・164条1項

相続した未登記の建物に、1か月の期限がどう当たるかは、条文に定めがありません。47条1項は「所有権を取得した者」と書くだけで、取得の原因を限定せず、相続の場合の起算日も示しません。民法896条は、相続人が相続開始の時から被相続人の財産を承継すると定めます。法務省・法務局の案内では、相続の場合の扱いを確認できませんでした。登記を整えるときに、土地家屋調査士に確かめてください。

相続登記の3年の義務(76条の2)は、条文が「所有権の登記名義人について相続の開始があったとき」と書きます。表題部しかない建物には登記名義人がいないため、この義務の対象かどうかは、条文だけでは言い切れません。法務省の案内でも未登記建物の扱いは確認できませんでした。土地の相続登記は別に義務があります(売る前の相続登記)。

登記を放置したままでも、売買契約は結べます。民法176条は、物権の移転が当事者の意思表示だけで効力を生ずると定めます。ただし、民法177条により、登記をしなければ第三者に対抗できません。登記官は職権で表示に関する登記をすることもできます(不動産登記法28条)。市町村長は、登記されていない家屋で課税上支障があるとき、登記所に登記の措置を申し出ることができます(地方税法381条7項)。

相続した未登記の建物は、どの順番で登記しますか?

相続した未登記の建物は、表題登記、所有権の保存登記の順に進めます。表題部所有者の変更は、所有権の保存の登記をしてから移転の登記をする手順でなければできないためです(不動産登記法32条)。

未登記の建物を整える登記の順番と相談先
順 登記 内容 相談先
1 表題登記 建物の所在・種類・構造・床面積を表題部に記録する。現地の調査と測量が要る 土地家屋調査士
2 所有権の保存登記 権利部に所有者を最初に記録する。申請できる人は74条1項が定める(表題部所有者またはその相続人など) 司法書士
3 売買による移転登記 買主への名義変更 司法書士

表題登記のような「不動産の表示に関する登記」の調査・測量・代理は、土地家屋調査士の業務です(土地家屋調査士法3条)。法務省は、未登記建物の表題登記などで調査や測量が必要な申請の代理・相談を、土地家屋調査士に限ると案内しています。権利の登記の代理は、司法書士の業務です(司法書士法3条1項1号)。

相続人が複数いる場合は、誰の名義にするかを先に決めます。誰を表題部所有者とするかや、保存登記の手順は事案で変わるため、相談の際に確かめます。共有になる場合は、共有名義の実家を売るを読んでください。

増築した部分だけが未登記のときは、登記が必要ですか?

建物の種類・構造・床面積に変更があったときは、変更登記が必要です。建物の表題部の変更登記は、変更の日から1か月以内に申請します(不動産登記法51条1項・44条1項3号)。附属建物を新築したときも、登記事項(44条1項5号)の変更に当たります。

工事の内容ごとの、変更登記の要否の見方
工事の内容 登記事項が変わるか 変更登記の見方
増築して床面積が増えた 床面積が変わる 必要(51条1項)
構造を変える工事(木造から鉄骨造に建て替えるなど) 構造が変わる 必要(51条1項)
離れや物置を新しく建てた 附属建物が増える 必要(51条1項・44条1項5号)
内装の改修で、床面積・構造・種類が変わらない 変わらない 登記事項に変更がなければ申請義務の条文には当たらない
カーポートや簡易な物置 建物に当たるかが問題 屋根・周壁などを備えた建造物かで決まる(不動産登記規則111条)。調査士に確認

床面積は、各階の壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積で、100分の1平方メートル未満を切り捨てて定めます(不動産登記規則115条)。

登記の要否と、建築基準法に適合しているかは別の確認です。増築部分の適合は、市区町村の建築担当課で確かめます(訳あり不動産の種類)。

未登記のまま売れますか。買主の融資には影響しますか?

売買契約は結べますが、買主の融資は金融機関の確認が先です。買主が住宅ローンを使うとき、公的な条件で確認できるのは、フラット35が借入対象の住宅とその敷地に第1順位の抵当権を設定する条件であることまでです(住宅金融支援機構)。

抵当権は、登記できる権利です(不動産登記法3条7号)。登記記録は表題部と権利部に分かれます(同法12条)。建物の登記を整えるよう金融機関に求められる場合があるという民間の解説はありますが、未登記建物の扱いは公的資料で確認できず、金融機関ごとの判断になります。売りに出す前に、買主が使う予定の金融機関に確かめてもらいます。

未登記の建物を売るときの、登記の整え方の選択肢
選択肢 向くケース 確かめること
売主が売る前に表題登記(と保存登記)を済ませる 買主が融資を使う見込みがある。一般の買主に売りたい 費用の見積、登記が終わるまでの日数、相続人全員の同意
現況のまま売り、買主が登記を整える 買主が買取業者、または現金で買う 登記の申請義務は取得した買主にも及ぶ(47条1項の文言)。誰が登記し、費用を誰が持つかを契約書に書く
売らずに持つ 売る時期が決まっていない 登記を放置したときの過料と、固定資産税のコスト(持ち続けるコスト)

建物が未登記であることは、売る前に買主へ伝えます。分かっている事実は物件状況報告書(告知書)に書き、契約の扱いは契約不適合責任の免責特約を読んでください。

登記費用と日数に、公的な相場はありません。土地家屋調査士・司法書士に見積を取り、売却価額から差し引いた手取りは売却手取り計算で試せます。

あなたのケースでは、どの順番で進めますか?

未登記の建物がある実家は、登記の状態の確認、相続人との相談、登記を整えるか現況で売るかの比較の順に進めます。登記の費用と日数の見積が出てから、売り方を決めます。

未登記の建物がある実家を売るときの、状況ごとの次の一歩
あなたの状況 次の一歩
登記の状態が分からない 法務局で登記事項証明書を取る。課税明細書で家屋の記載も見る
建物全体が未登記で、相続人が複数いる 相続人で名義を決める。土地の相続登記も確認する(売る前の相続登記)
増築した部分だけが未登記 土地家屋調査士に、変更登記の要否と見積を聞く
買主が住宅ローンを使う見込み 売り出す前に、買主側の金融機関に登記の条件を確かめてもらう
登記を整える時間や費用を出せない 現況のまま買い取る会社の査定を、複数取る
すぐに決められない 売れないときの対処と持ち続けるコストを読む

未登記の建物がある不動産など、訳ありの不動産の買取を扱う会社に査定を申し込める窓口があります。物件によっては対象外です。登記を整えてから一般の買主に売る時間と費用を取れる人、価格を最優先する人、売るか家族で決まっていない人には向きません。申込み前に、各社の案内を読んでください。

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よくある質問

未登記の建物がある実家は売れますか?

売れます。売買契約は登記がなくても結べます(民法176条)。ただし、買主が融資を使う場合は、金融機関への確認が先です。

未登記の建物を相続したら、表題登記は必要ですか?

表題登記のない建物の所有権を取得した人には、1か月以内の申請義務があります(不動産登記法47条1項)。相続の場合の起算日は条文に定めがないため、土地家屋調査士に確認してください。

増築した部分だけが未登記のとき、登記は必要ですか?

増築で床面積が増えたときは、建物の表題部の変更登記が必要です(同法51条1項)。内装の改修で床面積・構造・種類が変わらない場合は、登記事項に変更がありません。

表題登記は、誰に頼みますか?

土地家屋調査士です(土地家屋調査士法3条)。所有権の保存登記や移転登記は、司法書士に相談します。

この記事の根拠

  1. 不動産登記法(e-Gov法令検索)2条・3条・12条・28条・32条・44条・47条・51条・57条・74条・76条の2・164条(確認日 )
  2. 不動産登記規則(e-Gov法令検索)111条・115条(確認日 )
  3. 土地家屋調査士法(e-Gov法令検索)3条・68条(確認日 )
  4. 司法書士法(e-Gov法令検索)3条(確認日 )
  5. 地方税法(e-Gov法令検索)341条・343条・381条(確認日 )
  6. 民法(e-Gov法令検索)176条・177条・882条・896条(確認日 )
  7. 法務省 相続登記の申請義務化特設ページ(注記:未登記建物の表題登記等の代理・相談は土地家屋調査士に限られる)(確認日 )
  8. 住宅金融支援機構【フラット35】ご利用条件(担保・抵当権)(確認日 )

最終更新:2026年10月25日。制度の内容は2026年10月時点の法令と公表資料です。

  • 不動産登記法・不動産登記規則・土地家屋調査士法・司法書士法・地方税法・民法(e-Gov法令検索)
  • 法務省の相続登記の申請義務化特設ページ、住宅金融支援機構のフラット35ご利用条件

この記事は一般的な情報です。登記の要否と手続は、土地家屋調査士・司法書士にご確認ください。税額は税務署・税理士にご確認ください。