第4章 実行|売る
物件状況報告書・付帯設備表の書き方:住んでいない実家の分からない項目
物件状況報告書と付帯設備表には、売主が知っていることと調べて分かったことを書きます。住んでいない実家で分からない項目は、空欄にせず「不明」と理由を書きます。
- 物件状況報告書(告知書)は、売主が知り得る範囲で書く書類です。住んでいなかった実家で分からない項目は、調べた範囲と「不明」の理由を書きます(国土交通省の解釈・運用の考え方)。
- 知っていて書かなかった不具合は、契約不適合責任を免除する特約があっても責任を免れません(民法572条)。知っていることは、小さなことでも書きます。
- 親が家で自然死や日常生活の中での不慮の死で亡くなった場合、不動産会社は原則として買主に告げなくてよいとされています。特殊清掃が行われた場合は別です(国土交通省ガイドライン)。
物件状況報告書と付帯設備表とは何ですか?
物件状況報告書(告知書)とは、雨漏りや境界など、売主しか分からない土地と建物の状況を、売主が買主に伝えるための書面です。付帯設備表は、給湯器やエアコンなどの設備を引き渡すかどうかと、故障の有無を書く書面です。
どちらも、法律で書式が決まった書類ではありません。東京都のガイドブックは、2つの書面を売主が作り、契約の書類に添えて買主に告げるのが一般的としています。書式は不動産流通の業界団体がそれぞれ定めていて、名称も違うことがあります。
国土交通省は、売主しか分からない事項について告知書を出してもらい、買主に渡すことを、不動産会社に勧めています。告知書は「売主等が知り得る範囲で」書くものとされています。買主に渡すときは、売主の責任で作られたことを明らかにします(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方)。
物件状況報告書には、どんな項目がありますか?
物件状況報告書の項目は、土地、建物、周辺の環境、その他の4つに分かれるのが一般的です。書式によって項目は違うため、下の表は国土交通省の例示と東京都のガイドブックをもとにした、よくある項目のまとめです。
| 区分 | よくある項目 |
|---|---|
| 土地 | 境界の確定の状況、越境、土壌汚染、地中の埋設物(浄化槽・コンクリートの塊など)、浸水の履歴、過去の利用状況 |
| 建物 | 雨漏り、シロアリの被害、木部の腐食、建物の傾き、給排水管の故障・漏水、増改築・修繕の履歴、石綿の調査の有無、耐震診断の有無 |
| 周辺の環境 | 騒音・振動・臭気、近隣の建築計画、近隣との取り決め |
| その他 | 事件・事故など、特定保守製品の有無、前の所有者から引き継いだ資料、新築・増改築をした建設会社 |
東京都のガイドブックの記入例では、選択肢が「有・無・不明」や「有・無・修繕済」で、横に修繕の時期や状況を書く欄があります。
住んでいない実家で分からない項目は、どう書きますか?
住んでいない実家で分からない項目は、調べたうえで「不明」を選び、分からない理由と確認した範囲を書き添えます。「無」と書くのは、無いと分かっている場合だけにします。
書き方の考え方は、次の3つです。
- 知っていることと、推測を分ける。「たぶん無い」は「無」ではなく「不明」です。
- 誰が、いつ、どこまで見たかを書く。見ていない場所は「見ていない」と書きます。
- 空欄にしない。空欄では、無いのか、知らないのか、書き忘れかが記録に残りません。
| 書き方の例(当サイトの見本) | 使う場面 |
|---|---|
| 不明(売主は相続により取得し、居住していないため確認できない) | 住んでいた親しか知らない過去の出来事 |
| 不明(令和8年10月に売主が室内を目視した範囲では雨染みは見当たらない。屋根裏・床下は確認していない) | 見た範囲では異常がないが、全部は見ていない |
| 有(令和8年10月、2階北側の天井に雨染みを確認。原因・修理歴は不明) | 見つけたが、原因が分からない |
| 不明(売主の兄弟に確認したが、記憶がない) | 家族に聞いても分からない |
見本は当サイトが作ったものです。書式の欄に合わせ、仲介する不動産会社と相談して書きます。
雨漏り・シロアリ・境界などは、どう調べて、どう書きますか?
雨漏り・シロアリ・境界などは、家に残る書類、現地の目視、家族や近所への確認の順に調べます。次の一覧は、住んでいない実家で分からないことが多い項目の調べ方と書き方です。書かずにおいた場合に起こりうることも並べました(当サイトの整理)。
| 項目 | 調べ方 | 調べても分からないときの書き方 | 書かずにおくと起こりうること |
|---|---|---|---|
| 雨漏り | 天井・壁・押入れのしみを目視。修理の領収書・見積書を探す | 不明+目視した範囲と日付 | 引き渡し後に見つかると、修補や代金の減額を求められうる |
| シロアリ | 床下の点検口から目視。駆除・予防工事の保証書を探す | 不明+床下を見ていない旨 | 同上。予防工事の有無は保証書がなければ「不明」 |
| 木部の腐食・傾き | 床のきしみ、建具の開け閉め、外壁のひびを確認 | 有・無を選べない部分は不明+確認した場所 | 修補・減額のほか、損害賠償や解除を求められうる |
| 給排水管の故障・漏水 | 水道を止めている場合は、再開して水を流してみる | 不明(通水していないため確認できない) | 通水しないまま引き渡すと、漏水の有無を誰も確かめていないことになる |
| 増改築・修繕の履歴 | 工事の契約書・図面、建設会社の名前、家族への確認 | 不明+分かった範囲の工事だけ書く | 履歴が分からないと、買主は建物の状態を判断しにくくなる |
| 石綿の調査・耐震診断 | 調査の報告書があるかを探す | 調査の記録なし(または不明) | 不動産会社が説明するのは記録の有無と内容。調査の実施は不動産会社に義務づけられていない |
| 項目 | 調べ方 | 調べても分からないときの書き方 | 書かずにおくと起こりうること |
|---|---|---|---|
| 境界・越境 | 境界確認書を探す。法務局で地積測量図を取る。現地で境界標を探す | 不明(境界標を確認できない)+見つかった境界標の位置 | 買主から、測量や隣地との境界の確認を求められることがある |
| 地中の埋設物 | 古い浄化槽や井戸、建て替え前の建物の有無を家族に確認 | 不明(建て替え前の状況は売主には分からない) | 再建築のときなどに撤去が必要になることがある(東京都のガイドブック) |
| 浸水の履歴 | 家族・近所に確認。水害で保険金を受けた記録を探す | 不明(売主は居住していないため把握していない) | ハザードマップ上の位置は不動産会社が説明するが、過去に浸水したかは売主側にしか分からない |
| 近隣との取り決め | 塀の費用分担、配管が隣地を通るかなどを家族に確認 | 不明+聞いた相手 | 再建築のときなどに、隣地の所有者との調整が必要になることがある(東京都のガイドブック) |
「書かずにおくと」の欄は、不具合が後から見つかった場合に、買主が求められること(民法562条〜564条)を示しています。免責の特約があり、売主が本当に知らなかった不具合なら、責任は原則として免除されます。
調べるために家の中を片付ける必要があるときは、姉妹サイト(運営:株式会社Kogera)のふれあいの丘が、実家の片付けと遺品整理の進め方を扱っています。
親が家で亡くなった場合は、告知書にどう書きますか?
親が家で老衰や病気で亡くなった場合、不動産会社は原則として買主に告げなくてよいとされています。ただし、長く気づかれずに特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合は、告げる対象になります。
国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)は、居住用の不動産で告げるべき範囲を次のように示しています。
| 亡くなった状況 | 売買での扱い |
|---|---|
| 老衰・持病による病死などの自然死 | 原則として告げなくてよい |
| 階段からの転落、入浴中の事故、食事中の誤嚥など、日常生活の中での不慮の死 | 原則として告げなくてよい |
| 上の2つでも、長期間気づかれず、特殊清掃や大規模リフォームが行われた | 買主の判断に重要な影響を及ぼす場合は告げる |
| 上の2つ以外の死 | 買主の判断に重要な影響を及ぼす場合は告げる |
| 買主から有無を聞かれた場合 | 経過した期間や死因にかかわらず、分かっている点を告げる |
告げる場合の内容は、発生の時期(特殊清掃の場合は発覚の時期)、場所、死因、特殊清掃が行われたかどうかです。死因が分からなければ、その旨を告げます。亡くなった方の氏名や年齢、発見の状況などを告げる必要はないとされています。
ガイドラインは、不動産会社が売主に告知書への記載を求めることで、調査をしたものとするとしています。売主が「不明」と答えた場合も、不動産会社はその旨を告げれば足ります。賃貸には「概ね3年」の目安がありますが、売買にはこの目安はありません。
このガイドラインは不動産会社の義務の基準で、売主の民事上の責任は、事案ごとに判断されます。売主がわざと告げなかった場合は、民事上の責任を問われうるとされています。
付帯設備表は、どう書きますか?
付帯設備表は、設備ごとに「引き渡すか、撤去するか」と「故障・不具合があるか」を書きます。住んでいない家では、電気・ガス・水道を止めていて、設備を動かせないことがあります。
| 設備の例 | 住んでいない家で起きやすいこと | 書き方の例(当サイトの見本) |
|---|---|---|
| 給湯器・ふろがま | ガスや灯油を止めていて動かせない | 有(引き渡す)。動作は未確認(ガス停止中のため) |
| コンロ・換気扇 | 長く使っておらず、点火・作動が不明 | 有。不具合は不明(令和8年10月時点で未使用) |
| エアコン | 古い機種で、冷暖房が効くか分からない | 有(撤去する)、または有(引き渡す)・動作未確認 |
| トイレ・浴室・洗面 | 水道を止めていて、水漏れを確かめられない | 有。漏水の有無は不明(通水していないため) |
| 照明・カーテンレール・収納 | 残すか撤去するかが決まっていない | 残すものと撤去するものを1つずつ書き分ける |
| 門扉・塀・物置・車庫 | 家の外の設備を書き忘れる | 敷地の外回りも1つずつ書く |
石油給湯機・石油ふろがまは、消費生活用製品安全法の特定保守製品です(同法施行令 別表第三)。特定保守製品があるかどうかは、国土交通省の告知書の例示に入っている項目です。
家具や家電などの残置物は、残すか、引き渡しまでに処分するかを、買主と書面で決めておきます。設備の故障について売主が責任を負う範囲と期間は、売買契約書の条項で確かめます。
書いた内容は、売ったあとの責任にどう関わりますか?
物件状況報告書と付帯設備表は、売買契約の書類の一部になります(東京都のガイドブック)。告げた不具合は、買主が知ったうえで買ったことになり、あとから契約不適合とされにくくなります。
| 書いたこと | 起こりうること | 根拠 |
|---|---|---|
| 知っている不具合を書いた | 買主が知ったうえで買ったことになる。価格や免責の交渉に反映されることがある | 解釈・運用の考え方(37条1項2号の2) |
| 知っていたのに書かなかった | 免責の特約があっても責任を免れない | 民法572条 |
| 知らずに「無」と書いた | 特約がなければ、修補・代金の減額・損害賠償・解除を求められうる | 民法562条〜564条 |
| 「不明」と理由を書いた | 売主が知らなかったことが記録に残る | 解釈・運用の考え方(知り得る範囲で記載) |
種類・品質の不適合は、買主が知った時から1年以内に売主へ通知しなければ、責任を問えなくなります(民法566条)。ただし、売主が引き渡しの時に知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この制限はありません。
仲介する不動産会社は、買主の判断に重要な影響を及ぼす事項を、わざと告げないことや偽って告げることを禁じられています(宅地建物取引業法47条1号)。
責任を免除・制限する特約は、個人どうしの売買や買取業者への売却で結べます。特約の文例と注意点は、契約不適合責任の免責特約で扱っています。
記入前の確認チェックリストはありますか?
記入前に確かめることを、印刷して使えるチェックリストにしました。当サイトが作ったもので、業界団体の書式ではありません。
| 済 | 確認すること | 見るもの・聞く相手 |
|---|---|---|
| □ | 修理・リフォームの契約書、領収書、保証書を集めた | 家の中の書類、親の通帳の記録 |
| □ | シロアリの駆除・予防工事の保証書を探した | 家の中の書類、施工会社 |
| □ | 天井・壁・押入れ・床下を、日付を決めて見た | 現地(見た場所をメモする) |
| □ | 電気・水道・ガスを再開して、設備を動かせるか決めた | 不動産会社と相談 |
| □ | 境界確認書・地積測量図を探し、境界標を現地で見た | 家の中の書類、法務局、現地 |
| □ | 浸水・近隣との取り決め・地中の埋設物を家族に聞いた | 兄弟姉妹、親族 |
| □ | 家の中で亡くなった方がいるか、その状況を確かめた | 家族 |
| □ | 石綿の調査・耐震診断・建物状況調査の報告書を探した | 家の中の書類 |
| □ | 残す設備と撤去する設備を決めた | 共有者の兄弟姉妹 |
| □ | 「不明」の欄に、理由と確認した範囲を書いた | 記入した書面 |
共有の実家では、住んでいた時期の違う兄弟姉妹で知っていることが違います。記入の前に、共有者全員の知っていることを集めます。売るときに用意する書類全体は、相続した家を売るときの必要書類一覧にまとめています。
状態が分からない不安を減らすには、どうしますか?
状態が分からない不安を減らす方法は、建物状況調査で分からない項目を減らすか、契約不適合責任を免除する条件で売るかの2つです。
建物状況調査(インスペクション)とは、建物の構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防ぐ部分の状況の調査です(宅地建物取引業法34条の2第1項4号)。調査するのは、国の講習を修了した建築士です(同法施行規則15条の8)。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 媒介契約のとき | 不動産会社は、調査をする者のあっせんの有無を媒介契約書に書く | 宅地建物取引業法34条の2第1項4号 |
| あっせんの料金 | 媒介の業務の一環で、仲介手数料とは別に受け取れない | 解釈・運用の考え方 |
| 重要事項説明の対象 | 調査から1年以内のもの(鉄筋コンクリート造などの共同住宅等は2年) | 同法35条1項6号の2イ、施行規則16条の2の2 |
| 調査の範囲 | 構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防ぐ部分に限られる | 同法34条の2第1項4号 |
調査の費用は、調査会社に見積もりを取って確かめます。調査をしても分からない部分は残るため、結果を物件状況報告書に反映し、残る部分は「不明」と書きます。不動産会社の選び方と媒介契約は、不動産会社の選び方で扱っています。
古い家で、調べても分からないことが多く、売ったあとの責任を残したくないときは、買取業者への売却も比べます。個人の売主が買取業者に売る場合も、契約不適合責任を免除する特約を結べます。買取と仲介の比べ方は空き家の買取と仲介、どちらが得かで整理しています。
雨漏りなど状態が分からない家や、共有名義などで個人の買主が見つかりにくい家は、訳あり物件を扱う買取の窓口に査定を頼む方法があります。査定を頼んでも、売る義務はありません。買取の価格は仲介より低くなることがあるため、仲介で売れる見込みがある人には向きません。
この記事で使える計算ツール
計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。
よくある質問
物件状況報告書で分からない項目は、空欄でよいですか?
空欄にせず、「不明」を選んで理由と確認した範囲を書きます。空欄では、無いのか知らないのかが記録に残りません。
親が自宅で亡くなったことは、告知書に書きますか?
老衰や病気による自然死は、不動産会社は原則として告げなくてよいとされています。長く気づかれず特殊清掃が行われた場合は告げる対象です。買主に聞かれたら、分かっていることを答えます。
設備が古くて動くか分からないときは、付帯設備表にどう書きますか?
「動作未確認」と、その理由(ガス停止中など)を書きます。撤去する設備は、撤去すると書き分けます。
告知書に書けば、売ったあとの責任はなくなりますか?
告げた不具合は、買主が知ったうえで買ったことになります。告げていない不具合の責任は、契約書の免責の特約で決まります。
この記事の根拠
- 民法562条〜566条・572条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 宅地建物取引業法34条の2・35条・37条・47条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 宅地建物取引業法施行規則15条の8・16条の2の2・16条の4の3(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」令和8年4月1日施行版(告知書の提出、建物状況調査のあっせん、石綿の調査結果の説明、37条1項2号の2)(確認日 )
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)(確認日 )
- 国土交通省 報道発表「『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』を策定しました」(令和3年10月8日)(確認日 )
- 国土交通省 住宅局「インスペクション(既存住宅の点検・調査)」(確認日 )
- 東京都住宅政策本部「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック(戸建住宅編)」Ⅰ章(物件状況等報告書・設備表と物件チェックリスト)(確認日 )
- 消費生活用製品安全法施行令 別表第三(特定保守製品:石油給湯機・石油ふろがま)(e-Gov法令検索)(確認日 )
最終更新:2026年10月20日。法令は2026年10月時点の条文です。
書き方の見本とチェックリストは、当サイトが上の資料から作ったもので、業界団体の書式を写したものではありません。この記事は一般的な情報で、法律相談ではありません。個別の記入と契約は、仲介する宅地建物取引業者・弁護士へのご相談で判断してください。