第4章 実行|買取・訳あり
孤独死・事故物件になった実家を売る:告知が必要かの判定表
実家での自然死は、特殊清掃などがなければ原則として告げなくてよいとされます。特殊清掃をした場合や自然死以外の死は、売買には期間の区切りがありません。
- 親が実家で老衰や病気で亡くなった場合や、入浴中の事故などの日常生活の中での不慮の死は、原則として買主に告げなくてよいとされています(国土交通省ガイドライン)。
- 長く気づかれずに特殊清掃や大規模リフォームが行われた場合と、自然死・不慮の死以外の死は、売買では期間による区切りがなく、買主の判断に重要な影響を及ぼす場合は告げる対象です。賃貸の「概ね3年」は売買には当てはまりません。
- 買主に聞かれたら、期間や死因にかかわらず、分かっていることを告げます。売り方は、状況と期限で変わります。あなたのケースは診断で確かめてください。
事故物件の「告知」とは何で、誰が誰に伝えるものですか?
事故物件の告知とは、売る家で過去に人が亡くなった事実を、買主が契約するかを決める前に伝えることです。伝えるのは、事実を知っている売主と、仲介する不動産会社(宅地建物取引業者)です。
「事故物件」は法律の用語ではなく、国土交通省のガイドラインは「人の死に関する事案」と書いています。この記事では通称として事故物件と呼びます。
中心になる資料は、国土交通省の「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年(2021年)10月)です。ガイドラインの位置づけは、次のとおりです。
| 項目 | ガイドラインの記載 |
|---|---|
| 誰の義務の基準か | 宅地建物取引業者(不動産会社)が宅地建物取引業法上負う義務の解釈 |
| 対象の不動産 | 住宅として使われる不動産(居住用不動産)。オフィス等は対象外 |
| 守らなかったとき | 直ちに宅地建物取引業法違反にはならないが、行政の監督で参考にされる |
| 民事上の責任 | 依頼の内容や契約の内容によって個別に判断される。ガイドラインどおりに対応しても、民事上の責任を回避できるとは限らない |
| 売主・貸主について | 把握している事実を買主・借主に告知する必要があり、過去の裁判例では信義則上の告知義務の有無が個別の事情を考えて判断されている |
ガイドラインは、売主個人の義務を直接定めたものではありません。ただし、仲介の不動産会社が告知書で売主に事実を照会する方法を示しているため、売主にとっても何を聞かれ、何を伝えるかの目安になります。
宅地建物取引業者は、買主の判断に重要な影響を及ぼす事項を、わざと告げないことや、事実と違うことを告げることを禁じられています(宅地建物取引業法47条1号)。
告知が必要かどうかは、どう判定しますか?
告知が必要かどうかは、亡くなった状況(死因)、特殊清掃などが行われたか、亡くなった場所、売買か賃貸か、の4つで判定します。ガイドラインは、発見までの日数による区切りを定めていません。
特殊清掃とは、孤独死などがあった住居で、原状回復のために消臭・消毒や清掃を行うサービスです(ガイドラインが引用する総務省行政評価局の定義)。ガイドラインは、特殊清掃や大規模リフォーム等をまとめて「特殊清掃等」と呼びます。
下の表は、ガイドラインの記載をそのまま整理したものです。実家を売るときは「売買」の列を見ます。
| 亡くなった状況 | 発見までの期間 | 特殊清掃等 | 場所 | 売買での扱い | 賃貸での扱い(参考) |
|---|---|---|---|---|---|
| 老衰・持病による病死などの自然死 | 日数の定めなし | 行われていない | 売る住戸・建物 | 原則として告げなくてよい | 原則として告げなくてよい |
| 日常生活の中での不慮の死(自宅の階段からの転落、入浴中の溺死や転倒、食事中の誤嚥など) | 日数の定めなし | 行われていない | 売る住戸・建物 | 原則として告げなくてよい | 原則として告げなくてよい |
| 自然死・日常生活の中での不慮の死で、長期間にわたって人知れず放置された | 日数の定めなし(特殊清掃等が行われたかで判断) | 行われた | 売る住戸・建物 | 買主の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は告げる。期間の区切りなし | 発覚から概ね3年が過ぎた後は、原則として告げなくてよい |
| 上の2つ以外の死(自死・他殺・上の例にあたらない事故死など) | 問わない | 問わない | 売る住戸・建物 | 買主の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合は告げる。期間の区切りなし | 発生から概ね3年が過ぎた後は、原則として告げなくてよい |
| 自然死・不慮の死で特殊清掃等が行われた、またはそれ以外の死 | 問わない | 問わない | 隣の住戸、日常生活で通常使わない集合住宅の共用部分 | 原則として告げなくてよい | 原則として告げなくてよい |
| どの場合でも、買主から有無を聞かれた | 問わない | 問わない | 問わない | 期間や死因にかかわらず、分かっている点を告げる | 同じ |
| どの場合でも、社会的影響が大きく、買主が把握しておくべき特段の事情がある | 問わない | 問わない | 問わない | 期間や死因にかかわらず告げる | 同じ |
| 地震などの大規模な災害で、人の死が生じたか明らかでない | - | - | 売る住戸・建物 | その旨を告げれば足りる | 同じ |
| 建物を取り壊した後の土地として売る | - | - | 土地 | ガイドラインに定めなし。宅建業者・弁護士に相談 | ガイドラインに定めなし |
| 搬送先の病院で亡くなった | - | - | 病院 | ガイドラインに定めなし。宅建業者・弁護士に相談 | ガイドラインに定めなし |
| 転落で亡くなり、落下を始めた場所が売る住戸だった | - | - | 落下開始地点 | ガイドラインに定めなし。宅建業者・弁護士に相談 | ガイドラインに定めなし |
| 事務所・店舗など、住宅でない不動産 | - | - | 居住用でない | ガイドラインの対象外。宅建業者・弁護士に相談 | ガイドラインの対象外 |
「原則として告げなくてよい」の行にも、事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案は例外とする、と書かれています(賃貸の概ね3年と、隣の住戸・共用部分の行)。
「買主の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる場合」に当たるかは、ガイドラインでも事案ごとの判断です。迷うときは、事実を仲介の不動産会社に伝えて相談します。ガイドラインも、告知書等に記載して買主に交付することが、トラブルの未然防止に有効としています。
孤独死で特殊清掃をした実家は、何年たてば告げなくてよくなりますか?
売買では、何年たてば告げなくてよくなるという目安は、ガイドラインに定められていません。発覚から「概ね3年」で原則として告げなくてよいとされているのは、賃貸借の取引だけです。
| 取引 | 期間の目安 | 例外 |
|---|---|---|
| 賃貸借 | 発生(特殊清掃等の場合は発覚)から概ね3年が過ぎた後は、原則として告げなくてよい | 事件性、周知性、社会に与えた影響等が特に高い事案 |
| 売買 | 定めなし | - |
| 売買・賃貸とも | 買主・借主から聞かれた場合は、経過した期間にかかわらず告げる | - |
ガイドラインは、心理的な抵抗(いわゆる心理的瑕疵)が時間の経過とともに薄れ、やがて消えるとした裁判例もある、と紹介しています。ただし、売買で何年なら足りるかの一般的な基準は示していません。何年前のことでも、売る前に不動産会社へ伝えて、扱いを相談します。
告げるときは、何を伝え、何を伝えなくてよいですか?
告げる内容は、亡くなった時期(特殊清掃等の場合は発覚の時期)、場所、死因、特殊清掃等が行われたかどうかの4つです。亡くなった方の氏名や年齢、家族構成、死の具体的な様子、発見の状況は、告げる必要はないとされています。
ガイドラインは、亡くなった方とその遺族の名誉と生活の平穏に十分配慮し、不当に侵害しないようにする必要がある、としています。家族として話したくないことまで、買主に説明する必要はありません。
| 区分 | 項目 | 補足 |
|---|---|---|
| 告げる | 事案の発生時期 | 特殊清掃等が行われた場合は、発覚した時期 |
| 告げる | 場所 | 例:1階の居室、浴室 |
| 告げる | 死因 | 自然死・他殺・自死・事故死等の別。分からない場合はその旨 |
| 告げる | 特殊清掃等が行われたこと | 行われた場合だけ |
| 告げなくてよい | 氏名、年齢、住所、家族構成 | 亡くなった方と遺族の名誉・生活の平穏への配慮 |
| 告げなくてよい | 具体的な死の態様、発見状況 | 同上 |
不動産会社は、売主に告知書(物件状況等報告書)などへの記載を求めることで、通常の調査をしたものとされます。売主が「不明」と答えた場合や回答がない場合も、不動産会社はその旨を告げれば足ります。ガイドラインは、告げるときは後日のトラブルを防ぐため、書面の交付等によることが望ましいとしています。
告知書の欄の書き方と、住んでいなかった実家で分からない項目の書き方は、物件状況報告書・付帯設備表の書き方で扱っています。
告げずに売ったら、売主にはどんな責任がありますか?
売主が人の死を知りながら告げずに売った場合、契約の内容に適合しないとされれば、買主から代金の減額や損害賠償、契約の解除を求められることがあります。免責の特約を結んでいても、知りながら告げなかった事実の責任は免れません(民法572条)。
ガイドラインは、仲介の不動産会社が売主に対し、事案をわざと告知しなかった場合等には民事上の責任を問われる可能性があることを、あらかじめ伝えるのが望ましいとしています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 民法562条 | 引き渡した物が種類・品質・数量で契約の内容に適合しないとき、買主は修補などの追完を求められる |
| 民法563条 | 追完されないときなどに、買主は不適合の程度に応じて代金の減額を求められる |
| 民法564条 | 562条・563条とは別に、損害賠償の請求と契約の解除もできる |
| 民法566条 | 種類・品質の不適合は、買主が知った時から1年以内に通知しないと求められなくなる。ただし、売主が引き渡しの時に知っていた、または重大な過失で知らなかったときは、この制限はない |
| 民法572条 | 責任を負わない旨の特約をしても、知りながら告げなかった事実は責任を免れない |
人の死があったことが品質の不適合に当たるかは、取引の目的や事案の内容で個別に判断されます。売主が知っている事実は、契約の前に書面で告げておきます。
免責の特約の文例と注意点は、契約不適合責任の免責特約で扱っています。
事故物件になった実家は、どんな売り方がありますか?
事故物件になった実家の売り方は、事実を告げて仲介で売る、訳ありの不動産を扱う買取業者に売る、建物を解体して土地として売る、の3つが主な選択肢です。どの方法でも、知っている事実を告げることは変わりません。
| 売り方 | 向く場合 | 注意点 |
|---|---|---|
| 告げたうえで仲介で売る | 自然死で特殊清掃がない、立地がよいなど、一般の買主が見込める | 告げる事案があると、買主が限られることがある。価格への影響を示す公的な統計はない |
| 買取業者に売る | 早く手放したい、建物が古く状態も分からない、共有者が多く早く分けたい | 価格は仲介より低くなることがある。物件によっては買取の対象外になる |
| 解体して土地として売る | 建物が古く、どのみち建て替えが前提になる | 建物を取り壊した後の土地の告知は、ガイドラインの対象外。解体しても告知が不要になるとは言えない |
価格は、査定を取らないと分かりません。査定額が出たら、仲介と買取のそれぞれで、仲介手数料と税金を引いた手取りを比べます。下の計算部品に、査定額を入れて試せます。
親が相続の直前まで一人で住んでいた家は、空き家の3,000万円控除(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例、租税特別措置法35条3項)の対象になる場合があります。建築時期や期限の要件は、相続した家を売るときの税金で確かめてください。
特殊清掃や遺品整理を先に進める場合は、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)が、実家の片付けと遺品整理の進め方を扱っています。解体を考える場合は、空き家を解体して更地にするかを読んでください。
売る前に、相続人は何を確かめ、どう進めますか?
売る前に、亡くなった場所、死因の別、発覚した時期、特殊清掃等の有無を家族で確かめ、仲介や買取の会社に最初の相談の段階で伝えます。後から分かるより、最初に伝えたほうが、価格や条件の話を正確に進められます。
| 確かめること | 見るもの・聞く相手 | 判定表との関係 |
|---|---|---|
| 亡くなった場所(建物の中か、敷地か、病院か) | 家族、発見した人 | 場所の列。病院での死亡はガイドラインに定めなし |
| 死因の別(自然死・事故死など) | 家族が分かる範囲。分からなければ「不明」 | 死因の列。不明ならその旨を告げれば足りる |
| 発覚した時期 | 家族、管理を頼んでいた人 | 告げる場合の「時期」 |
| 特殊清掃・大規模リフォームの有無と時期 | 業者との契約書・領収書 | 特殊清掃等の列 |
| 共有者全員が同じ事実を知っているか | 兄弟姉妹などの相続人 | 告知書の記載を一致させる |
事実をそろえたら、告知書に記載し、買主には書面で伝えてもらいます。契約書の免責の範囲と、告げた内容が合っているかも確かめます。会社の選び方は不動産会社の選び方にまとめています。
個別の事案で告げるべきかは、仲介する宅地建物取引業者か弁護士に相談してください。
あなたのケースでは、どう進めますか?
判定表で自分のケースの行を探し、告げる事案があるか、ガイドラインに定めがないかを確かめてから、仲介と買取の両方の見込みを比べます。1社だけで決めず、複数の査定を取ります。
| あなたの状況 | 目安 |
|---|---|
| 親が自然死で、特殊清掃もしていない | 原則として告げなくてよい。聞かれたら答える。通常の売却を売る流れと費用で進める |
| 発見が遅れ、特殊清掃をした | 告げる前提で、仲介と買取の両方の査定を取る |
| 自然死以外の死だった | 告げる前提で、事案の内容を家族でそろえてから相談する |
| 解体して土地で売るつもり | ガイドラインに定めがないため、仲介の会社や弁護士に告知の扱いを相談する |
| 早く手放したい、建物が古い | 買取業者の査定を複数取り、買取と仲介で比べる |
買取に向かない人もいます。自然死で特殊清掃がなく仲介で買主が見込める人、価格を最優先する人、売るかどうか家族で決まっていない人です。
訳ありの不動産の買取を扱う会社に、査定を申し込める窓口があります。査定を頼んでも、売る義務はありません。物件によっては買取の対象外になる場合があり、買取の価格は仲介より低くなることがあるため、仲介で売れる見込みがある人には向きません。申込みの前に、案内を読んでください。
この記事で使える計算ツール
計算ツールは、本文の後に置く追加機能です。ツールが動かない環境でも、本文の説明と表の計算例だけで内容を読めます。
よくある質問
親が実家で孤独死しました。売るときに告知義務はありますか?
老衰や病気による自然死で、特殊清掃などが行われていなければ、原則として告げなくてよいとされています。長く気づかれず特殊清掃などが行われた場合は、買主の判断に重要な影響を及ぼすときは告げる対象です(国土交通省ガイドライン)。
事故物件の告知義務は何年で消えますか?
賃貸では、発生(特殊清掃等の場合は発覚)から概ね3年が過ぎた後は、原則として告げなくてよいとされています。売買には、この期間の目安はありません。
病死でも、発見が何日以上遅れたら告知が必要ですか?
ガイドラインに、発見までの日数の基準はありません。長期間気づかれずに特殊清掃や大規模リフォームが行われたかどうかで、扱いが分かれます。
告知するとき、亡くなった親の名前や発見の様子まで伝えますか?
伝える必要はありません。告げるのは、時期、場所、死因、特殊清掃等の有無です。氏名、年齢、家族構成、死の具体的な様子、発見状況は告げなくてよいとされています。
この記事の根拠
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(令和3年10月)本文(確認日 )
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン(概要)」(確認日 )
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」について(掲載ページ)(確認日 )
- 国土交通省 報道発表「『宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン』を策定しました」(令和3年10月8日)(確認日 )
- 民法562条・563条・564条・566条・572条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 宅地建物取引業法47条1号(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(docs/FACTS_CANON.md の正本。2026-10-22 は国税庁サイトが503で再確認できず)(確認日 )
最終更新:2026年10月22日。ガイドラインは令和3年(2021年)10月の版で、2026年10月22日時点で国土交通省の掲載ページに載っている本文と同じものを確認しました。
- 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」本文・概要・掲載ページ(2026年10月22日確認)
- 国土交通省 報道発表(令和3年10月8日。2026年10月22日確認)
- 民法562条・563条・564条・566条・572条、宅地建物取引業法47条1号(e-Gov法令検索、2026年10月22日確認)
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(2026年10月17日確認)
判定表と売り方の比べ方は、当サイトが上の資料から整理したものです。この記事は一般的な情報で、法律相談や不動産取引の助言ではありません。個別の事案で告げるべきかは、仲介する宅地建物取引業者・弁護士へのご相談で判断してください。