第4章 実行|売る

売主の引渡し前チェックリスト(エクセル無料):相続した実家を引き渡す前の確認と、残置物・鍵・公共料金

売主の引渡し前チェックリストは、契約後から引渡し後までを5つの時期に分け、名義・抵当権・公共料金・鍵・固定資産税の精算を確かめる表です。

  • 引渡しの準備は、契約後から引渡し後までを5つの時期に分けると抜けが減ります。印刷して書き込めるエクセルのチェックリストを用意しました。
  • 売主が決済までに済ませるのは、名義と住所の確認、抵当権の抹消、公共料金の使用中止、鍵と書類の準備、固定資産税の精算額の確認です。費用と日付は、売買契約書の定めが優先します。
  • 相続した実家は、売主が遠方に住み、名義や住所が古いことがあります。登記と公共料金の名義を、早めに確かめます。

  • 売主の引渡し前チェックリスト(Excel)(シート1がチェックリスト、シート2が鍵・公共料金の記録。A4横で印刷できます)

公開 /更新 /執筆・編集:実家の手引き 編集部(運営者情報)

売主の引渡し前チェックリストとは何で、どう使いますか?

売主の引渡し前チェックリストとは、売買契約のあと、買主に家を引き渡して代金を受け取るまでに、売主が確かめることを時期ごとに並べた表です。売買では、売主は財産権を移転し、買主に登記などの対抗要件を備えさせる義務を負います(民法555条・560条)。

エクセルは、5つの時期、34項目です。項目ごとに、担当、期限の目安、チェック欄、確認日、メモの欄があります。

売主の引渡し前チェックリストとは何で、どう使いますか?
時期 期限の目安(引渡し予定日から) 主な確認
1 契約後〜決済の1か月前 30日前 名義・住所・抵当権・付帯設備・残置物・境界標
2 決済の1週間前 7日前 公共料金の使用中止、精算額、鍵・書類
3 決済の前日 1日前 最終確認、持ち物
4 決済・引渡しの当日 当日 入金確認、鍵・書類の引渡し
5 引渡し後 14〜30日後、翌年3月15日 登記の完了、最終請求、確定申告の準備

使い方は、引渡し予定日を入れると期限の目安が自動で出ること、済んだ項目に✔を付けること、の2点です。期限は上書きできます。売買契約書の日付と違うときは、契約書を優先します。

契約後〜1か月前に、何を確かめますか?

契約後の1か月は、登記に関わることを先に確かめます。名義・住所・抵当権は、決済の日に司法書士が登記を申請するための前提だからです。

契約後〜1か月前に、何を確かめますか?
確かめること 内容 根拠
名義と共有者 所有者が売主本人(共有なら全員)か 売る前の相続登記
登記上の住所・氏名 今と違えば、売却の登記の前に変更登記が必要 不動産登記法76条の5
抵当権などの権利 登記事項証明書の権利部(乙区)に残っていないか 法務省民事局の案内
付帯設備と報告書 付帯設備表・物件状況報告書と現況が合うか 民法562条
境界標 杭・プレートの有無、境界の資料 民法223条・224条

住所が違うとき、いつまでに変更登記をしますか?

所有者の住所が変わったときは、変更から2年以内に変更登記をする義務があります。2026年(令和8年)4月1日に施行され、施行前に変わった住所は2028年(令和10年)3月31日までです(不動産登記法76条の5、法務省)。正当な理由なく怠ると5万円以下の過料です(同法164条2項)。

売却の登記は、登記簿の住所と現在の住所が一致している前提で進みます。決済の前に、司法書士に伝えます。必要書類は相続した家を売るときの必要書類一覧にあります。

抵当権が残っているとき、どう抹消しますか?

抵当権が残っているときは、決済で売却代金などから債務を返し、金融機関から届く書類で抹消の登記を申請します。法務省民事局の案内では、抹消に使う登記識別情報、解除証書や弁済証書、委任状は、抵当権者の金融機関から送られます。

抵当権が残っているとき、どう抹消しますか?
項目 内容
登録免許税 不動産1個につき1,000円。土地と建物なら2,000円
住所・氏名が登記簿と違う場合 抹消の申請の前に、住所・氏名の変更登記が別に必要
事案によっては 手続が複雑になることがある(案内の注意書き)

住宅ローンを完済しても、抹消の登記を申請しないと、抵当権の登記は残ります。亡くなった方が完済済みでも、登記が残っていないかを登記事項証明書で確かめます。書類の取り寄せと司法書士への依頼は、契約書で費用の負担者を確かめてから進めます。

境界標と付帯設備は、何を確かめますか?

境界標は、境界を示す杭やプレートで、民法は、隣り合う土地の所有者が共同の費用で設けられるとしています(223条)。設置と保存の費用は、隣り合う所有者が等しく負担し、測量の費用は土地の広さに応じて分担するのが原則です(224条)。契約で境界の明示を定めているときは、その方法(現地の立会いか、資料か)を決めます。

付帯設備表と物件状況報告書は、書いた内容と現況の一致を確かめます。引き渡された目的物が契約の内容に適合しないときは、買主が修補などを請求できます(民法562条)。書き方は物件状況報告書・付帯設備表の書き方、責任の範囲は契約不適合責任の免責特約で扱っています。

公共料金は、いつ誰が止めて、精算しますか?

電気・ガス・水道の使用中止は、売主が契約先に連絡して、止める日を決めます。受付の期限と最終請求の時期は、事業者ごとに違います。

水道の例では、東京都水道局が、使用中止の手続きを3〜4日前までに行うよう案内しています。届出がないと、使わなくても基本料金がかかると書かれています。

進め方は次のとおりです。

  1. 契約先と契約者名義、お客様番号を、検針票・請求書で確かめる。名義が亡くなった方のままなら、契約先に手続きを聞く。
  2. 引渡し日と最終使用日を伝える。買主の引渡し前確認や、決済日に使う場合があるため、止める日は不動産会社と相談する。
  3. 最終の請求と支払いが済んだかを、引渡し後に確かめる。

チェックリストのシート2「鍵・公共料金の記録」に、連絡日、最終使用日、最終請求の確認を書き込めます。インターネット・固定電話・新聞などの解約も、同じ欄で管理します。

鍵と書類は、どう引き渡しますか?

鍵は、玄関から物置まですべてを数え、引渡しの日に買主と本数を照らし合わせます。紛失があれば、事前に不動産会社と買主に伝え、契約書や付帯設備表に記載します。

鍵と書類は、どう引き渡しますか?
引き渡すもの 確認すること
鍵 玄関・勝手口・窓・物置・門扉・郵便受け・防犯カード・リモコンの本数
建物の書類 確認済証・検査済証・設計図書など、あるものだけ
土地の資料 地積測量図・境界確認書
設備の書類 取扱説明書・保証書・リフォームの書類

不動産会社は、重要事項説明で、設計図書や点検記録などの書類の保存の状況を買主に説明します(宅地建物取引業法35条1項6号の2)。書類がなくても売れますが、ある書類は渡します。

固定資産税・都市計画税は、どう精算しますか?

固定資産税の買主との精算は、法律でなく売買契約の定めで行います。地方税法は、固定資産税を、賦課期日(1月1日)の所有者に課すと定めています(343条・359条)。その年の納付は売主で、買主の負担分は、契約の定めで売主が受け取ります。

起算日は、1月1日とする例と4月1日とする例があり、契約書に書かれます。

モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。 年税額12万円、引渡し日(買主負担の初日)を8月3日、1月1日起算、1年を365日として日割りで考えます。

モデルケース:見本の数字|固定資産税・都市計画税は、どう精算しますか?
項目 日数 金額
売主の負担(1月1日〜8月2日) 214日 約70,356円
買主の負担(8月3日〜12月31日) 151日 約49,644円

売主が年税額の全額を納め、買主から約49,644円を精算金として受け取る形になります。端数の処理や、都市計画税の扱いは、契約書で確かめます。精算額は、決済の1週間前までに、不動産会社から計算を受け取ります。

残置物は、どう扱いますか?

残置物は、引渡しまでに撤去するか、現状のまま引き渡すかを、売買契約書で確かめます。撤去と定めた場合は、業者・日程・費用の負担者を決め、終わった状態を写真に残します。

この記事は、片付けの作業そのものは扱いません。実家の片付けの進め方は、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)の実家の片付けの情報にあります。

決済の当日は、何をしますか?

決済の当日は、本人確認、書類の確認、入金の確認、鍵と書類の引渡しの順に進みます。入金を確かめてから鍵を渡します。

決済の当日は、何をしますか?
順 売主がすること
1 本人確認書類を示す。不動産会社は売買で本人確認を行う(犯罪収益移転防止法4条)
2 登記識別情報・印鑑証明書(作成後3か月以内)・実印を司法書士に渡す
3 抹消・住所変更の登記の書類を渡す
4 残代金・精算金の入金を確かめる
5 仲介手数料を払い、領収書を受け取る
6 鍵と書類を渡し、受領の確認をもらう

仲介手数料の上限は仲介手数料の早見表で確かめられます。引渡し日の状態は写真で残します。引渡し後に建物が当事者の責めによらずに壊れても、買主は売主に追完や減額などを求められないのが民法の原則です(567条)。

引渡し後に、何を確かめ、保管しますか?

引渡し後は、登記の完了、公共料金の最終請求、固定資産税の精算、確定申告の書類を確かめます。種類・品質の契約不適合は、買主が知った時から1年以内に通知すれば請求できるのが原則です(民法566条)。免責や期間の特約があるときは、契約書によります。

引渡し後に、何を確かめ、保管しますか?
確認 期限の目安
登記の完了(移転・抹消・住所変更) 引渡しの2週間後ごろ
公共料金の最終請求 引渡しの1か月後ごろ
確定申告 売った翌年の2月16日〜3月15日

譲渡所得は、原則として、引渡しがあった日の属する年の所得として申告します。売買契約の効力発生日の年を選ぶこともできます(国税庁)。3,000万円控除の期限が近いときは、どちらの日で数えるかが関わるため、税務署・税理士に確認します。申告の手順は売った翌年の確定申告、確認書は被相続人居住用家屋等確認書の取り方です。期限は期限カレンダーで出せます。

あなたのケースでは、何から始めますか?

売買契約のあと、まず名義・住所・抵当権の確認から始め、次に公共料金と鍵の記録を始めます。

あなたのケースでは、何から始めますか?
あなたの状況 次の一歩
住宅ローンの抵当権が残っていそう 登記事項証明書で確認し、金融機関に書類を請求する
登記上の住所が今と違う 司法書士に、住所変更登記を伝える
実家に住んでいない(遠方) 公共料金の使用中止と鍵の確認を、不動産会社に相談する
手取りを知りたい 売却手取り計算で確かめる
査定を比べる段階 不動産査定の比較表を使う

この記事で使える計算ツール

ご自分の数字で、記事の内容を計算できます。入力した数字は、どこにも送信しません。

よくある質問

売主の引渡し前チェックリストは、エクセルで無料でもらえますか?

本ページのチェックリスト(Excel)を無料で使えます。引渡し予定日を入れると、期限の目安が自動で出ます。

固定資産税は、売ったあと誰が払いますか?

その年の納税義務者は1月1日の所有者です(地方税法343条・359条)。売主が全額を納め、買主負担分の精算金は、契約の定めで受け取ります。

公共料金は、いつ止めればよいですか?

事業者ごとに受付の期限が違い、水道は3〜4日前までの例があります。買主の確認で使う場合があるため、止める日は不動産会社と決めます。

引渡しのあとに家が壊れたら、売主の責任になりますか?

引渡し後に当事者双方の責めによらず壊れたときは、買主は追完・減額・損害賠償・解除を求められないのが原則です(民法567条1項)。引渡し前の扱いは契約書で確かめます。

この記事の根拠

  1. 民法(e-Gov法令検索)223条(境界標の設置)・224条(設置・保存の費用)・555条(売買)・560条(売主の対抗要件具備義務)・562条(追完請求)・566条(期間の制限)・567条(危険の移転)(確認日 )
  2. 地方税法(e-Gov法令検索)343条(固定資産税の納税義務者等)・359条(賦課期日)(確認日 )
  3. 不動産登記法(e-Gov法令検索)76条の5(所有権の登記名義人の氏名等の変更の登記)・164条2項(過料)(確認日 )
  4. 法務省 住所等変更登記の義務化について(施行日令和8年4月1日、施行前の変更は令和10年3月31日まで)(確認日 )
  5. 法務省民事局「住宅ローンを完済したことなどによって不動産の抵当権の登記を抹消するための登記申請手続について」(令和6年4月版)(確認日 )
  6. 犯罪による収益の移転防止に関する法律(e-Gov法令検索)4条(取引時確認)(確認日 )
  7. 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)35条1項6号の2(既存建物の書類の保存の状況の説明)(確認日 )
  8. 東京都水道局「手続きに際して」(使用中止は3〜4日前までに手続き。届出がないと基本料金がかかる)(確認日 )
  9. 国税庁 確定申告書等作成コーナー「譲渡所得の申告時期」(原則は引渡しがあった日の属する年。契約の効力発生日の年を選ぶこともできる)(確認日 )
  10. 国税庁 No.2020 確定申告(申告期間は原則2月16日〜3月15日)(確認日 )

最終更新:2026年10月25日。制度の内容は2026年10月時点の法令と公表資料です。

  • 民法223条・224条・555条・560条・562条・566条・567条、地方税法343条・359条、不動産登記法76条の5・164条、犯罪収益移転防止法4条、宅地建物取引業法35条(e-Gov法令検索)
  • 法務省「住所等変更登記の義務化について」、法務省民事局「抵当権の登記を抹消するための登記申請手続について」(令和6年4月版)
  • 東京都水道局「手続きに際して」、国税庁「譲渡所得の申告時期」・No.2020
  • 上記はいずれも2026年10月25日確認

この記事は一般的な情報です。費用の負担・日付・残置物・精算の起算日は、売買契約書の定めが優先します。登記は司法書士に、税金は税務署・税理士に、契約は宅地建物取引業者にご確認ください。