第4章 実行|売る
売主の売買契約書チェックリスト(エクセル無料):相続した実家を売る契約の前に確かめる条項
売主の売買契約書チェックリストは、代金・手付・引渡し・精算・境界・責任・解除など22項目を、条文と照らして確かめる表です。契約書の文案ではありません。
- 相続した実家を売る契約の前に、契約書(案)を22項目で確かめる無料のエクセルを用意しました。当事者と物件、お金、引渡しと登記、物件の状態と責任、解除とリスクの5つに分けています。
- 売主が特に見るのは、手付解除の期限、抵当権の抹消、残置物の扱い、境界の明示、責任の範囲と期間、違約金の額です。
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契約書の文案やひな形は作りません。条項の意味と、確かめる観点までを示します。
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売主の売買契約書チェックリスト(Excel)(A4横。2枚目は記入例)
売主の売買契約書チェックリストとは何で、どう使いますか?
売主の売買契約書チェックリストとは、売買契約書(案)の条項を、売主の立場で一つずつ確かめるための表です。条項ごとに、確かめること、相続した家の売主が特に見る点、根拠の条文を並べ、確認の欄とメモの欄を付けました。
使い方は次の3つです。
- 契約日の前に、仲介を頼んだ不動産会社へ契約書(案)を出してもらいます。
- 契約書の該当する条を探し、黄色の欄に条と内容を写します。
- 確認の欄を「確認済」「要相談」「該当なし」から選びます。要相談の項目は、契約の前に不動産会社や司法書士に質問します。
確認の状況は、表の上に件数が自動で出ます。
| まとまり | 項目 |
|---|---|
| 当事者と物件 | 売主・買主の表示、物件の表示、売買の対象と面積の扱い |
| お金 | 売買代金、手付金、手付解除の期限、残代金の支払い、費用の負担 |
| 引渡しと登記 | 引渡し日と所有権の移転、移転登記、抵当権などの抹消、公租公課の精算 |
| 物件の状態と責任 | 境界の明示、付帯設備、残置物、物件状況報告書、契約不適合責任 |
| 解除とリスク | ローン特約、違約金、危険負担、特約事項、契約書(37条書面)の受取り |
契約書のどこまでが、宅建業法で決まっていますか?
仲介を使う売買では、宅地建物取引業法37条1項が、契約成立後に不動産会社が売主と買主へ交付する書面の記載事項を定めています。不動産会社は、媒介で契約が成立したとき、契約の各当事者に遅滞なく書面を交付します。
契約を結ぶ前に見る契約書(案)は、この書面とは別ですが、37条の事項は契約書に書かれる項目の目安になります。チェックリストとの対応は次の表のとおりです。
| 37条1項 | 記載事項 | チェックリストの項目 |
|---|---|---|
| 1号 | 当事者の氏名・住所 | 売主・買主の表示 |
| 2号 | 物件を特定する表示 | 物件の表示、売買の対象と面積 |
| 2号の2 | 既存建物の構造耐力上主要な部分等の状況で、双方が確認した事項 | 物件状況報告書 |
| 3号 | 代金の額、支払の時期・方法 | 売買代金、手付金、残代金 |
| 4号 | 引渡しの時期 | 引渡し日と所有権の移転 |
| 5号 | 移転登記の申請の時期 | 移転登記の申請時期 |
| 7号 | 契約の解除(定めがあるとき) | 手付解除の期限、違約による解除 |
| 8号 | 損害賠償額の予定・違約金(定めがあるとき) | 契約違反による解除と違約金 |
| 9号 | 金銭の貸借のあっせんがあるときの、不成立の措置 | ローン特約 |
| 10号 | 天災などの不可抗力による損害の負担(定めがあるとき) | 引渡し前の災害・滅失 |
| 11号 | 契約不適合責任とその保証の措置(定めがあるとき) | 契約不適合責任の範囲と期間 |
| 12号 | 租税その他の公課の負担(定めがあるとき) | 公租公課の精算 |
境界の明示、付帯設備、残置物は37条に定めがなく、契約書の特約で決まります。
お金の条項では、何を確かめますか?
お金の条項では、手付金の性質と、手付で解除できる期限の日付を、まず確かめます。民法557条1項は、買主が手付を交付したとき、買主は手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約を解除できるとしています。ただし、相手方が履行に着手した後は解除できません。
| 項目 | 確かめること | 相続した家の売主が特に見る点 |
|---|---|---|
| 売買代金 | 総額、土地と建物の内訳、手付・中間金・残代金の区分 | 売った金額は翌年の確定申告で収入金額になる。写しを保管する |
| 手付金 | 額、支払日、代金への充当、解約手付かどうか | 売主から解除すると、受け取った手付の倍額が要る |
| 手付解除の期限 | 期限が日付で書かれているか | 共有者の全員が売る意思を固めてから契約する |
| 残代金 | 支払日、方法、場所、引渡しと同時か | 抵当権の抹消や登記を同日に行うなら、手配日と合うか |
| 費用の負担 | 印紙税・登記費用・仲介手数料・測量費の負担者 | 売主が払った費用の一部は、申告で差し引ける |
売買契約に関する費用は、民法558条で当事者双方が等しい割合で負担するとされています。実際の負担者は、契約書の定めで決まります。印紙税は不動産売買契約書の印紙税 早見表、仲介手数料の上限は仲介手数料の早見表で確かめられます。
引渡しと登記の条項では、何を確かめますか?
引渡しと登記の条項では、引渡し日、所有権が移る時期、移転登記の申請日、抵当権の抹消、公租公課の精算を確かめます。所有権の移転は意思表示のみで効力が生じるため(民法176条)、移る時期は契約書で定めるため、書かれている日を確かめます。
| 項目 | 確かめること | 相続した家の売主が特に見る点 |
|---|---|---|
| 引渡し日と所有権 | 引渡しの日、所有権が移る時期、鍵の渡し方 | 契約日と引渡し日が年をまたぐとき、申告の年は税務署・税理士に確認する |
| 移転登記 | 申請日と、売主の書類 | 相続登記が先。共有なら全員分の書類が要る |
| 抵当権の抹消 | 登記事項証明書の乙区の抵当権、抹消の時期と費用 | 亡くなった方の借入れの担保が残ることがある |
| 公租公課の精算 | 起算日、精算額、支払日 | 納税義務者はその年の1月1日の所有者 |
固定資産税は、固定資産の所有者に課され(地方税法343条)、賦課期日は1月1日です(同法359条)。買主から受け取る精算金は、国税庁の手引きでは譲渡価額に算入するとされています。相続登記は売る前の相続登記、書類は必要書類一覧、引渡し前の段取りは売主の引渡し前チェックリストにあります。
物件の状態に関する条項では、何を確かめますか?
物件の状態に関する条項では、境界の明示、付帯設備、残置物、物件状況報告書、契約不適合責任の範囲と期間を確かめます。売主が住んでいなかった家は状態を知らない部分が多く、書き方で売ったあとの責任が変わります。
| 項目 | 確かめること | 相続した家の売主が特に見る点 |
|---|---|---|
| 境界の明示 | 境界を現地で示す約束か、境界標がないときの設置と費用 | 境界確認書・測量図の有無を確かめる |
| 付帯設備 | 残す設備と外す設備、故障の有無、保証の有無 | 動作を確かめられない設備は「不明」と書く |
| 残置物 | 引渡しまでに撤去するか、現状のまま引き渡すか。期限と費用 | 現状引渡しなら、買主が処分する前提を契約書に書く |
| 物件状況報告書 | 知っている不具合を書面で告げ、買主が確認した事項になっているか | 知りながら告げなかった事実は、免責の特約があっても責任を免れない |
| 契約不適合責任 | 責任の範囲(全部免責・範囲の限定)と、通知を受ける期間 | 個人が売るなら、免責や期間の短縮の特約を結べる |
境界標の設置・保存の費用は相隣者が等しい割合で負担し、測量の費用はその土地の広さに応じて分担するのが民法の定めです(223条・224条)。境界を売主が明示する約束は、契約書の特約で決まります。
物件状況報告書の書き方は物件状況報告書・付帯設備表の書き方、契約不適合責任の免責特約は契約不適合責任の免責特約にまとめています。買主が不適合を知った時から1年以内に通知しないと請求できないのが民法566条の原則で、売主が知りながら告げなかった事実は、責任を負わない特約があっても免れません(民法572条)。
残置物の片付けは、姉妹サイトのふれあいの丘に進め方があります。
解除とリスクの条項では、何を確かめますか?
解除とリスクの条項では、ローン特約の期限、違約金の額、引渡し前に家が壊れたときの扱い、特約事項を確かめます。いずれも、売主が契約後に動けなくなる場面を決める条項です。
| 項目 | 確かめること | 相続した家の売主が特に見る点 |
|---|---|---|
| ローン特約 | 買主の融資の承認期限、解除の期限、手付の返還 | 期限が長いと、他の買主を探せない期間が延びる |
| 違約金 | 違約による解除のときの額(代金の何%か)と催告の方法 | 書類が整わず売主が履行できないと、対象になりうる。負担できる額か |
| 危険負担 | 引渡し前の地震・火災などの扱い(解除・減額・修復) | 火災保険は引渡しまで続ける |
| 特約事項 | 買主の希望(解体して引渡し、測量など)と、売主の負担 | 約束できる内容か、費用と期限を確かめる |
| 契約書の受取り | 成立後に書面を受け取れるか。署名押印と印紙 | 確定申告と責任の通知期間が終わるまで保管する |
違約金は、民法420条で損害賠償の額の予定と推定されます。債務を履行しない相手には、催告して解除する方法(541条)と、履行不能などで直ちに解除する方法(542条)があります。引渡し前の滅失・損傷の扱いは、民法536条と契約書の定めを確かめます。
個人が相続した家を売るとき、宅建業法のどの規定が関わりますか?
個人が相続した家を売る契約には、宅建業法37条(書面の交付)と46条(報酬の上限)が関わり、38条・39条・40条は適用されません。38条〜40条の主語は「自ら売主となる宅地建物取引業者」だからです。買主が不動産会社の買取でも同じです。
| 条 | 内容 | 相続した家を個人が売る契約 |
|---|---|---|
| 37条 | 契約成立後の書面の交付 | 仲介会社から売主にも交付される |
| 38条 | 違約金などは代金の10分の2まで | 適用されない。額は契約で決まる |
| 39条 | 手付は代金の10分の2まで。解除の定め | 適用されない。民法557条が基本 |
| 40条 | 責任の特約の制限(引渡しから2年以上) | 適用されない。免責・期間短縮を結べる |
| 46条 | 仲介手数料の上限 | 仲介を頼むときに関わる |
違約金と手付の額には、この上限がありません。額は自分で確かめます。
相続した家の売主は、契約の前に何を済ませますか?
契約の前に、相続登記、共有者の意思、抵当権の残り、書類、告知書の下書きを済ませます。契約に間に合わないと、引渡し日や手付解除の期限が動きます。
| 状況 | 契約前にすること |
|---|---|
| 相続登記が未了 | 先に済ませる。売る前の相続登記 |
| 共有で、全員の意思が固まっていない | 全員の同意を得る。共有名義の実家を売る |
| 抵当権が残っている | 金融機関に抹消の書類と日数を確かめる |
契約のあとは、翌年の確定申告で契約書の写しと領収書を使い、手取りは売却手取り計算で出せます。売主が払った費用の判定は譲渡費用になるもの・ならないもの一覧にあります。
仲介で買主を探す時間をかけたくない人や、引渡しの時期と責任の範囲をできるだけ簡単にしたい人は、買取業者に査定を問い合わせる方法もあります。買取の価格は仲介の査定額より低いことがあるため、手数料を引いた仲介の手取りと並べてから決めてください。売るかどうか決まっていない段階や、共有者の同意がそろっていない段階には向きません。
この記事で使える計算ツール
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よくある質問
売主の売買契約書チェックリストは、エクセルで無料でもらえますか?
本ページのチェックリスト(Excel)を無料で使えます。22項目の白紙の表と、記入例のシートがあります。
売買契約書のひな形や文案はありますか?
当サイトでは用意していません。契約書の案は仲介を頼んだ不動産会社に出してもらい、契約日の前にこの表で確かめます。個別の契約は、不動産会社や弁護士にご確認ください。
手付解除の期限を過ぎたら、売主は契約をやめられませんか?
手付による解除は、相手方が履行に着手した後はできません(民法557条1項)。契約書に期限の日があれば、その日までです。それ以後にやめると、違約金の対象になりえます。
買主が不動産会社の買取でも、宅建業法40条は関わりますか?
関わりません。40条は、宅地建物取引業者が自ら売主となる売買の規定です。個人が売る契約では、買主が不動産会社でも、免責や期間短縮の特約を結べます。
この記事の根拠
- 民法(e-Gov法令検索)176条・420条・536条・541条・542条・557条・558条・560条・562条〜567条・570条・572条・573条・574条(確認日 )
- 宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)37条・38条・39条・40条・46条(確認日 )
- 地方税法(e-Gov法令検索)343条・359条(固定資産税の納税義務者・賦課期日)(確認日 )
- 国税庁「令和7年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし」(未経過固定資産税等は譲渡価額に算入)(確認日 )
最終更新:2026年10月25日。制度の内容は2026年10月時点の法令です。
- 民法176条・420条・536条・541条・542条・557条・558条・560条・562条〜567条・570条・572条・573条・574条、223条・224条(e-Gov法令検索)
- 宅地建物取引業法37条・38条・39条・40条・46条(e-Gov法令検索)
- 地方税法343条・359条(e-Gov法令検索)
- 国税庁「令和7年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし」
- 上記はいずれも2026年10月25日確認
この記事は一般的な情報で、特定の契約についての助言ではありません。契約書の内容は不動産会社や弁護士に、税額は税務署・税理士に、権利関係は司法書士にご確認ください。