第5章 売却後|税金

譲渡費用になるもの・ならないもの一覧(早見表):相続した家を売るときの費用の扱い

譲渡費用は、売るために直接かかった費用です。仲介手数料、売主負担の印紙税、測量費、売るための解体費はなり、固定資産税と修繕費はなりません。

  • 譲渡費用になるのは、土地や建物を売るために直接かかった費用です。仲介手数料、売主が負担した印紙税、測量費、土地を売るための取壊し費用と建物の損失額、貸家の立退料などが当たります。
  • 固定資産税と修繕費は、持っている間の維持・管理の費用で、譲渡費用になりません。相続登記の費用は、譲渡費用ではなく取得費です。
  • 残置物の処分費、引越し費用など、国税庁の資料で確認できない費用は、断定せず「税務署に確認」とします。

公開 /更新 /執筆・編集:実家の手引き 編集部(運営者情報)

この記事は一般的な制度の説明です。個別の税額や特例の適用は、税務署または税理士にご確認ください。

譲渡費用とは何で、どう見分けますか?

譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用です。譲渡所得は、売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します(所得税法33条3項、国税庁 No.3255)。

判定は4つに分けます。根拠欄の「手引き」は国税庁の「土地や建物の譲渡所得のあらまし」、「質疑応答事例」は国税庁の質疑応答事例(譲渡所得)です。

譲渡費用とは何で、どう見分けますか?
判定 意味
なる 国税庁・通達で、譲渡費用と示されている
ならない 国税庁・通達で、譲渡費用に含まれないと示されている
条件つき 譲渡費用になるが、売るために行ったことなどの条件がある
税務署に確認 国税庁の資料で個別に確認できず、事実で判断が分かれる。断定しない

見分ける基準は、所得税基本通達33-7の言葉で、売るために直接要した費用かどうかです。資産の修繕費、固定資産税その他、資産の維持・管理に要した費用は含まれないと、同じ通達の注にあります。

売るためにかかる費用は、譲渡費用になりますか?

仲介手数料、売主が負担した印紙税、売るための測量費は、譲渡費用になります。売買の契約から引渡しまでに、売るために支払った費用です。

売るためにかかる費用は、譲渡費用になりますか?
費用 判定 条件・理由 根拠
仲介手数料 なる 売るために支払った分。上限は仲介手数料の早見表 No.3255、通達33-7(1)
媒介契約を解除して払う費用償還金 なる 買主を探すために要した実費の相当額。結果として媒介で売れなくても同じ 質疑応答事例
売買契約書の印紙税 なる 売主が負担した分だけ。印紙税の早見表 No.3255
売るための測量費 なる 売るために測った費用。買った時に払った測量費は取得費 No.3202、手引き、No.3252
契約解除の違約金 なる 売る契約のあと、さらに有利に売るため、既契約者との解除で払った額 No.3255
借地権を売るときの名義書換料 なる 地主の承諾を得るために払った額。借地権の記事 No.3255

家を壊す費用と立退料は、譲渡費用になりますか?

土地を売るための取壊し費用と、取り壊した建物の損失額、貸家を売るための立退料は、条件つきで譲渡費用になります。条件は、その支出が売るために行われたことです。

家を壊す費用と立退料は、譲渡費用になりますか?
費用 判定 条件・理由 根拠
土地を売るための建物の取壊し費用 条件つき 土地を売るために壊したこと。売買の契約書や買主の要望で示す。解体の損益は解体の記事 No.3255、通達33-7(2)
取り壊した建物の損失額 条件つき 取壊しが譲渡のために行われたことが明らかなとき。発生資材の価額を差し引く 通達33-8
貸家の借家人への立退料 条件つき 貸家を売るため、借家人に明け渡してもらう立退料。退去が売却の実現に必要だったことが前提 No.3255、裁決(平成27年9月30日)

立退料の裁決は、買主が退去を求めた事実も、支払いの合意を示す書面もなく、譲渡費用と認めなかった事例です。相続した家に借家人がいるときは、買主の要望と合意を書面に残します。

持っている間の費用と、相続のときの費用は、譲渡費用になりますか?

固定資産税、修繕費、持っている間の管理費は、譲渡費用になりません。相続登記の費用は、譲渡費用ではなく取得費です。

持っている間の費用と、相続のときの費用は、譲渡費用になりますか?
費用 判定 条件・理由 根拠
固定資産税・都市計画税 ならない 維持・管理の税。買主から受け取る精算金は、譲渡価額に算入する No.3255、通達33-7注、手引き
修繕費・リフォーム費 ならない 売るために直しても、通達は修繕費を含めない。設備費・改良費は取得費になる場合がある 通達33-7注、No.3252
管理費・光熱費・火災保険料 ならない 持っている間の、維持・管理に要した費用 通達33-7注
相続登記の費用 ならない(取得費) 相続で取得したときの登記費用は取得費。概算取得費(5%)を選ぶと含められない No.3252、手引き
売却代金の取立て、権利争いの弁護士費用 ならない 取立ての費用や、売るための費用でない紛争の費用は含まれない No.3255、質疑応答事例

相続登記の手続きは売る前の相続登記にあります。取得費と概算取得費の考え方は、譲渡所得の内訳書の記事で示しています。

判断が分かれる費用は、どう扱いますか?

残置物の処分費、売る直前の清掃、引越し費用、登記の費用は、国税庁の資料で個別に確認できないため、「税務署に確認」とします。推測で譲渡費用に入れると、申告の誤りになりえます。

判断が分かれる費用は、どう扱いますか?
費用 判定 確認できたこと・理由
残置物・遺品の処分費 税務署に確認 国税庁の例示にない。売るために直接要した費用といえるかは事実で判断される
売る直前の清掃・草刈り・ハウスクリーニング 税務署に確認 維持・管理に当たると含まれない(通達33-7注)。売るために行ったと示せるか
引越し費用 税務署に確認 国税庁の例示にない
建物の滅失登記の費用 税務署に確認 国税庁の例示にない。取壊し費用とは別の支出
抵当権の抹消・住所氏名変更の登記の費用 税務署に確認 通達33-7(1)は登記に要する費用を挙げる。抹消では、利息・損害金や抹消を促す支出を認めなかった裁決(平成2年6月21日)がある

確認するときは、契約書、見積書、領収書を手元に置き、その費用を払った時期と、売却との関係を説明します。

譲渡費用は、税額をいくら変えますか?

課税される譲渡所得があるとき、譲渡費用が1円増えると、譲渡所得が1円減ります。長期譲渡所得なら、増えた額に20.315%を掛けた額だけ税額が減ります。

見本(架空)は、売却価格2,000万円、取得費は概算の100万円(5%)、3,000万円控除は使わない場合です。

モデルケース:見本の数字|譲渡費用は、税額をいくら変えますか?
項目 解体費を入れない 解体費120万円を入れる
譲渡費用の合計 100万円 220万円
課税される譲渡所得 1,800万円 1,680万円
長期の税額(20.315%) 3,656,700円 3,412,920円
差 — 243,780円

3,000万円控除で課税される譲渡所得が0になる場合は、譲渡費用を足しても税額は変わりません。端数処理を省いた概算です。手取りは売却手取り計算で出せます。

申告では、どこに書き、何を残しますか?

申告では、譲渡所得の内訳書の3面に譲渡費用を書き、領収書と契約書を残します。書き方は譲渡所得の内訳書の書き方、全体の流れは売った翌年の確定申告にあります。

  • 仲介手数料の領収書、売買契約書(印紙税の確認)
  • 測量・解体の見積書、請求書、領収書
  • 立退料の合意書
  • 判断が分かれる費用は、税務署に確認した日と内容のメモ

契約書の確認は売主の売買契約書チェックリストで行えます。

この記事で使える計算ツール

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よくある質問

譲渡費用になるものは何ですか?

国税庁は、仲介手数料、売主が負担した印紙税、貸家の立退料、土地を売るための取壊し費用と建物の損失額、有利に売るための違約金、借地権の名義書換料を挙げています(No.3255)。

相続登記の費用は譲渡費用になりますか?

なりません。相続で取得したときの登記費用は取得費です。概算取得費(売った金額の5%)を選ぶ場合は、含められません。

家財や遺品の処分費用は譲渡費用になりますか?

国税庁の例示にないため、断定できません。契約書と領収書を用意して、税務署に確認してください。

固定資産税は譲渡費用になりますか?

なりません。修繕費とともに、維持・管理に要した費用として、譲渡費用に含まれないと国税庁が示しています。

この記事の根拠

  1. 国税庁 No.3255 譲渡費用となるもの(令和8年4月1日現在法令等)(確認日 )
  2. 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(分離課税)(令和8年4月1日現在法令等)(確認日 )
  3. 国税庁 No.3252 取得費となるもの(令和8年4月1日現在法令等)(確認日 )
  4. 国税庁 所得税基本通達 33-7(譲渡費用の範囲)・33-8(資産の譲渡に関連する資産損失)(確認日 )
  5. 国税庁 質疑応答事例(譲渡所得・譲渡費用)媒介契約を解除したことに伴い支払う費用償還金等と譲渡費用(確認日 )
  6. 国税庁 質疑応答事例(譲渡所得・譲渡費用)譲渡代金の取立てに要した弁護士費用等と譲渡費用(確認日 )
  7. 国税庁 質疑応答事例(譲渡所得・譲渡費用)譲渡費用の範囲(訴訟費用)(確認日 )
  8. 国税庁「令和7年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし」(測量費、相続時の登記費用、未経過固定資産税等)(確認日 )
  9. 国税不服審判所 公表裁決事例(立退料)平成27年9月30日裁決(確認日 )
  10. 国税不服審判所 公表裁決事例(登記費用等)平成2年6月21日裁決(確認日 )
  11. 所得税法33条(e-Gov法令検索)(確認日 )

最終更新:2026年10月25日。制度の内容は2026年10月時点の公表資料です。

  • 国税庁 No.3255・No.3202・No.3252(令和8年4月1日現在法令等)
  • 所得税基本通達33-7・33-8、所得税法33条(e-Gov法令検索)
  • 国税庁の質疑応答事例(譲渡費用)、「令和7年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし」
  • 国税不服審判所の公表裁決事例(平成27年9月30日、平成2年6月21日)
  • 上記はいずれも2026年10月25日確認

この記事は一般的な情報で、特定の費用や税額についての助言ではありません。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。