第4章 実行|買取・訳あり
セットバックが必要な土地の売り方:後退面積の求め方と売却時の精算
セットバックとは、幅員4m未満の2項道路に面した土地で、建築の際に道の中心線から原則2mまで敷地を後退させることです。後退部分は敷地面積に入りません。
- 後退面積の目安は、後退する距離に、敷地が道に接する長さを掛けた面積です。原則は、道の中心線から2mの線まで下がります(建築基準法42条2項)。道幅2.7m、間口10mなら、見本の計算で6.5㎡です。
- 後退部分は、建ぺい率・容積率に使う敷地面積に入りません(建築基準法施行令2条1項1号)。売るときは、その部分の代金と面積の精算を、売買契約でどう決めるかが論点です。
- 後退部分の寄附や固定資産税の扱いは、自治体ごとに違います。売る前に、道路担当課と資産税課に確かめます。
更新日:2026年(令和8年)10月25日。条文は、同日にe-Gov法令検索で確認した時点のものです。
セットバックとは何で、どんな土地が対象ですか?
セットバックとは、幅員4m未満の道に面した土地で、建築の際に敷地を道の側から後退させ、道の幅を確保することを指す通称です。法律上の用語ではありません。根拠は、建築基準法42条2項の「2項道路」です。
2項道路とは、建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道のうち、特定行政庁が指定したものです。特定行政庁とは、建築主事を置く市町村では市町村長、その他の市町村では都道府県知事です(建築基準法2条35号)。2項道路は、道路とみなされ、後退した線が道路の境界線とみなされます。
| 場合 | 道路の境界線とみなす線 | 根拠 |
|---|---|---|
| 原則 | 道の中心線から水平距離2m | 42条2項 |
| 特定行政庁が指定する区域(幅員6m以上を道路とする区域) | 中心線から3m。避難・通行の安全上支障がないと認める場合は2m | 42条2項かっこ書 |
| 道の反対側が崖地・川・線路敷地などに沿う場合 | その崖地等の道側の境界線から、道の側へ4m | 42条2項ただし書 |
| 土地の状況でやむを得ない場合 | 特定行政庁が、中心線から1.35m以上2m未満(崖地等は2.7m以上4m未満)の範囲で別に指定できる | 42条3項 |
どの線になるかは、前の道ごとに違います。自分の土地に当てはめるには、自治体の図面で確かめます。
自分の土地が2項道路に面しているかを、どう確かめますか?
自分の土地が2項道路に面しているかは、市区町村の建築指導の担当課で、前の道の種別と後退の線の位置を図面で確かめます。窓口の名称は自治体で異なります。
確かめる順番は次のとおりです。
- 現地で前の道の幅を測り、4m未満かを見る。
- 建築指導の担当課で、前の道が2項道路か、後退の線がどこかを聞く。
- 法務局で公図と登記事項証明書を取り、手元に測量図があれば、道に接する長さと面積を確かめる。
- 後退が済んでいるかを見る。塀や門が後退した線にあるか、道路として分筆・寄附されているかを窓口で聞く。
道に2m以上接していない土地、道路そのものに接していない土地は、別の悩みです。接道義務と再建築不可は再建築不可の家を手放す方法、道路に接していない土地は道路に接していない土地・家を売るで扱っています。この記事は、2項道路に面し、後退すれば建てられる土地を扱います。
後退する面積は、どう計算しますか?
後退面積は、後退する距離に、敷地が道に接する長さを掛けた面積が目安です。道の中心線が道幅の中央にある原則の場合、後退距離は「2m−道幅÷2」です。
たとえば道幅が2.7mなら、後退距離は2−2.7÷2=0.65mです。敷地が道に10m接していれば、後退面積は0.65×10=6.5㎡になります。
| 現況の道幅 | 後退距離(原則・中心線から2m) | 後退面積 |
|---|---|---|
| 1.8m | 1.10m | 11.0㎡ |
| 2.0m | 1.00m | 10.0㎡ |
| 2.5m | 0.75m | 7.5㎡ |
| 2.7m | 0.65m | 6.5㎡ |
| 3.0m | 0.50m | 5.0㎡ |
| 3.5m | 0.25m | 2.5㎡ |
| 3.8m | 0.10m | 1.0㎡ |
道の反対側が崖地・川・線路敷地などの場合は、崖地等の境界線から4mの線までが道路とみなされます。道幅2.7mなら、自分の側が下がる距離は4−2.7=1.3mで、間口10mなら13㎡です。
中心線の位置、間口が斜めの敷地、角地の扱いは、図面で変わります。正確な面積は、自治体の図面と測量図で確かめ、測量が要る場合は土地家屋調査士などに相談します。
後退した部分は、建ぺい率・容積率や建築にどう影響しますか?
後退した部分は、建ぺい率・容積率の計算に使う敷地面積に算入しません(建築基準法施行令2条1項1号)。道路の境界線とみなされる線と道の間の部分の敷地は、算入しないと定められているためです。
見本の計算(実在の土地ではありません)。 登記簿の面積120㎡、後退面積6.5㎡の土地です。建ぺい率60%、容積率150%の地域と仮定します。前面道路の幅による容積率の制限(建築基準法52条2項)は考えていません。
| 項目 | 後退を考えないとき | 後退部分を除いたとき | 差 |
|---|---|---|---|
| 敷地面積 | 120.0㎡ | 113.5㎡ | 6.5㎡ |
| 建築面積の上限(建ぺい率60%) | 72.0㎡ | 68.1㎡ | 3.9㎡ |
| 延べ面積の上限(容積率150%) | 180.0㎡ | 170.25㎡ | 9.75㎡ |
後退した部分は道路の扱いになり、建築物や敷地を造成するための擁壁は、道路内に建築できません(建築基準法44条1項)。門や塀、駐車の位置は、後退した線の内側で考えます。
今ある建物は、使い続けられます。規定の適用の際に現に存する建物は、その規定に適合しなくても、規定を適用しないとされているためです(建築基準法3条2項)。後退が必要になるのは、建て替えなど建築をするときです。売る前に後退の工事をするかは、買主の希望と費用を見て決めます。
売るとき、後退部分は代金と精算でどう扱いますか?
分筆していなければ、後退部分は登記簿の面積に含まれたまま売買の対象になります。建築には使えないため、その部分の代金をどう扱うかは売買契約で決めます。公的な基準や統計は確認できませんでした。
見本の計算(実在の土地ではありません)。 登記簿の面積120㎡、後退面積6.5㎡、単価を1㎡あたり25万円と仮定します。
| 考え方 | 面積 | 売買代金 |
|---|---|---|
| A 登記簿の面積全体を同じ単価で売る | 120.0㎡ | 3,000万円 |
| B 後退部分を除いた面積で売る | 113.5㎡ | 2,837.5万円(Aとの差162.5万円) |
| C 後退部分を、単価の一部(割合a)で評価する | 全体 | 2,837.5万円+162.5万円×a |
Cの割合aに、公的な基準はありません。売主と買主の合意で決めます。自分の価格での手取りは、売却手取り計算で試せます。
面積の精算は、契約書の言葉で決まります。公益社団法人全日本不動産協会の解説では、公簿売買は公簿面積と実測面積の差を清算しない方式、実測売買は契約後・決済前に実測し、差を契約で定めた単価で清算する方式です。法律上の概念ではなく厳密な意味もないため、契約書の条項でこれらの語を使うのは適当とはいえない、とされています。
| 確かめる点 | 内容 |
|---|---|
| 面積の基準 | 登記簿の面積か、実測面積か。後退部分を含むか |
| 精算の有無 | 実測との差を、決済で精算するか。単価はいくらか |
| 後退部分の扱い | 代金に含めるか。寄附や分筆を売主が済ませるか |
| 説明 | 不動産会社は、法令に基づく制限の概要を書面で説明する(宅地建物取引業法35条1項2号) |
売主は、2項道路であること、後退の要否、後退済みか、寄附や契約の有無を、分かる範囲で不動産会社に伝えます。書面の書き方は物件状況報告書(告知書)、契約の扱いは契約不適合責任の免責特約を読んでください。
後退部分の寄附や固定資産税は、どう確かめますか?
後退部分の寄附の条件と固定資産税の扱いは、自治体ごとに違うため、売る前に自治体の窓口で確かめます。固定資産税は、公共の用に供する道路が非課税とされていますが(地方税法348条2項5号)、後退部分が当たるかの判断と手続きは自治体が行います。
| 自治体 | 内容 | ページの日付 |
|---|---|---|
| 江戸川区(東京都) | 区道・区有通路に接し、建築等で後退した敷地が対象。寄附は、所有権を区へ移し、区が管理する。申請前に、道路工事の完了、分筆、抵当権など所有権以外の権利の抹消が要る。寄附しない場合は無償使用契約があり、所有者のまま区が維持管理し、区が非課税申告と固定資産税の減免申請を代行する。寄附の場合の税の扱いは、同ページに記載がない | 2024年9月30日更新 |
| 相模原市(神奈川県) | 後退した部分などが「公共の用に供する道路」と認められれば、固定資産税・都市計画税が非課税になることがある。道路としての区分が明確でない、用途が不明、一般に開放されていない土地は、道路に見えても対象外。手続きと書類は同ページになく、資産税課に確認する | 令和4年11月7日 |
どちらも、全国に共通する基準ではありません。自分の自治体の運用は、窓口に聞きます。
| 聞くこと | 窓口の例 |
|---|---|
| 前の道は2項道路か。後退の線はどこか | 建築指導の担当課 |
| 後退部分の寄附を受け付けるか。条件は何か(分筆・権利の抹消・工事の完了など) | 道路管理の担当課 |
| 寄附しない場合に、維持管理の契約の制度があるか | 道路管理の担当課 |
| 後退部分の固定資産税・都市計画税は非課税や減免になるか。申請が要るか | 資産税の担当課 |
| 売るとき、寄附や契約の手続きを買主に引き継げるか | 道路管理の担当課・資産税の担当課 |
あなたのケースでは、どの順番で進めますか?
セットバックが必要な土地は、前の道の確認、後退面積の計算、売買契約の扱いの整理、売り先の比較の順に進めます。売り先は、一般の買主と買取業者です。査定は、同じ資料をそろえて複数社に頼み、条件を比べます。
| あなたの状況 | 次の一歩 |
|---|---|
| 前の道が2項道路か分からない | 建築指導の担当課で、道路の種別と後退の線を確かめる |
| 後退面積が知りたい | 道幅と間口から概算し、確定は図面と測量で確かめる |
| 寄附できるか知りたい | 道路管理の担当課に、条件と手続きの順番を聞く |
| 建物が古く、建て替えが前提になりそう | 解体費は空き家の解体で確かめる。解体の補助金は、姉妹サイトのふれあいの丘(運営:株式会社Kogera)が自治体別にまとめている |
| 前の道に2m接していない | 道路に接していない土地・再建築不可を読む |
| 早く手放したい | 資料をそろえ、買取業者の査定を複数取る |
| すぐに決められない | 持ち続けるコストを計算する |
売れないときの順番は売れないときの対処、税金は相続した家を売るときの税金にあります。物件が新潟県にある場合は、姉妹サイトの新潟 実家じまいナビ(運営:株式会社Kogera)が県内の情報をまとめています。
セットバックが必要な土地を含む、訳ありの不動産の買取査定を申し込める窓口があります。物件によっては対象外です。価格を最優先する人、仲介で時間をかけて買主を探せる人、売るかどうかが家族で決まっていない人には向きません。申込みの前に、各社の案内を読んでください。
この記事で使える計算ツール
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よくある質問
セットバックした部分は、売るとき面積に含まれますか?
分筆していなければ、登記簿の面積に含まれます。ただし、建ぺい率・容積率の敷地面積には入りません(建築基準法施行令2条1項1号)。代金に含めるかは、売買契約で決めます。
セットバックは、売る前にしておく必要がありますか?
後退が必要になるのは、建て替えなど建築をするときです。今ある建物は使い続けられます(建築基準法3条2項)。売る前の工事は、買主の希望と費用を見て決めます。
セットバック部分には、固定資産税がかかりますか?
公共の用に供する道路は非課税です(地方税法348条2項5号)。後退部分が当たるかは自治体の判断で、相模原市は道路として区分が明確で、一般に開放されていることを条件にしています。
セットバック部分は、自治体に寄附できますか?
受け付けている自治体があります。江戸川区は、道路工事の完了、分筆、抵当権などの抹消を申請の前に求めています。条件は自治体ごとに違うため、道路管理の担当課に聞きます。
この記事の根拠
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)2条35号・3条2項・42条・44条(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)2条1項1号(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 地方税法(昭和25年法律第226号)348条2項5号(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)35条1項2号(e-Gov法令検索)(確認日 )
- 江戸川区「建築等に伴う道路後退(セットバック)敷地の寄附・無償使用契約」(ページ表示の更新日 2024-09-30)(確認日 )
- 相模原市「固定資産税・都市計画税の非課税となる道路」(ページ表示の更新日 令和4年11月7日)(確認日 )
- 公益社団法人 全日本不動産協会「公簿売買と実測売買」(月刊不動産2011年12月号掲載)(確認日 )
最終更新:2026年10月25日。制度の内容は、2026年10月25日に確認した条文と公表資料の時点です。
- 建築基準法・同法施行令・地方税法・宅地建物取引業法(e-Gov法令検索)
- 江戸川区・相模原市の公式ページ、公益社団法人全日本不動産協会の解説
この記事は一般的な情報です。道路の種別と後退の線は自治体に、契約の扱いは弁護士・宅地建物取引業者に、税額は税務署・税理士にご確認ください。