第5章 売却後|税金
取得費が分からないとき:概算取得費5%と建物の減価償却の計算表
取得費が分からないとき、または実額が売った金額の5%に満たないときは、売った金額の5%を取得費にできます。実額と併せて使えず、どちらか一方を選びます。
- 相続した家の取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費にできます(国税庁 No.3258)。実額が5%に満たないときも同じです。
- 実額で計算するなら、建物は購入代金などから減価償却費相当額を引きます。木造は経過年数35年以上で取得価額の5%まで下がるため、古い建物では実額が売った金額の5%を下回ることがあります。
- 5%と実額は併せて使えません。5%を選ぶと、相続のとき払った登記費用も取得費に入りません。内訳書への書き方は譲渡所得の内訳書の書き方にまとめています。
最終更新:2026年10月25日。税の根拠は、国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)と、令和7年分の「譲渡所得の申告のしかた」です。
取得費とは何で、分からないときは何を使えますか?
取得費とは、売った土地や建物を買ったときの代金や購入手数料などの合計額です(国税庁 No.3258)。建物は、その合計額から所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。相続した家は、被相続人が買ったときの取得費と取得の時期を引き継ぎます(No.3270)。
取得費が分からないとき、または実際の取得費が売った金額の5%を下回るときは、売った金額の5%を取得費にできます。これを概算取得費といいます。国税庁の例は、土地建物を3,000万円で売って取得費が不明なとき、5%の150万円が取得費です。
| 場面 | 使える取得費 | 根拠 |
|---|---|---|
| 購入時の資料があり、実額が5%を超える | 実額(建物は減価償却を引く) | No.3258・No.3261 |
| 資料がなく、取得費が分からない | 売った金額の5% | No.3258 |
| 実額は分かるが、5%に満たない | 売った金額の5% | No.3258 |
実額と5%は、併せて適用できません。実額で申告するか、5%の特例を適用するかのどちらかです(国税庁 確定申告書等作成コーナーの案内)。
売った金額の5%は、いくらになりますか?
売った金額の5%は、売却価額に0.05を掛けた額です。国税庁の例では3,000万円なら150万円です。譲渡所得は「売った金額−取得費−譲渡費用」で出すため(No.3202)、5%の額がそのまま取得費の欄に入ります。
| 売った金額 | 概算取得費(5%) |
|---|---|
| 500万円 | 25万円 |
| 1,000万円 | 50万円 |
| 1,800万円 | 90万円 |
| 3,000万円 | 150万円 |
| 5,000万円 | 250万円 |
土地と建物を1つの契約で売るときの売った金額は、合計額です。売却価額と手取りの試算は売却手取り計算でできます。
建物の取得費は、構造と築年数でどれだけ残りますか?
居住用の建物の減価償却費相当額は、「取得価額×0.9×償却率×経過年数」で計算します(国税庁 No.3261)。経過年数は建物を取得してから売るまでで、6か月以上の端数は1年に切り上げ、6か月未満は切り捨てます。償却費相当額は、取得価額の95%が上限です。
| 構造 | 償却率 |
|---|---|
| 木造 | 0.031 |
| 木骨モルタル | 0.034 |
| (鉄骨)鉄筋コンクリート | 0.015 |
| 金属造①(軽量鉄骨造で骨格材の肉厚3mm以下) | 0.036 |
| 金属造②(軽量鉄骨造で骨格材の肉厚3mm超4mm以下) | 0.025 |
建物の取得費は「取得価額−償却費相当額」なので、取得価額に残る割合は「1−0.9×償却率×経過年数」(下限5%)です。算式から計算した早見表は、次のとおりです。
| 構造 | 10年 | 20年 | 30年 | 40年 | 50年 | 5%になる年数 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 木造 | 72.1% | 44.2% | 16.3% | 5% | 5% | 35年以上 |
| 木骨モルタル | 69.4% | 38.8% | 8.2% | 5% | 5% | 32年以上 |
| (鉄骨)鉄筋コンクリート | 86.5% | 73.0% | 59.5% | 46.0% | 32.5% | 71年以上 |
| 金属造① | 67.6% | 35.2% | 5% | 5% | 5% | 30年以上 |
| 金属造② | 77.5% | 55.0% | 32.5% | 10.0% | 5% | 43年以上 |
使い方は、建物の取得価額に表の割合を掛けます。たとえば木造・取得価額1,000万円・経過年数30年なら、1,000万円×16.3%=約163万円が建物の取得費です。表は端数処理の前の目安で、実際の申告は国税庁の算式で計算してください。
建物と土地を一括で買い、契約で価額が区分されていないときは、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」を、区分の一方法として使えます(令和7年分 譲渡所得の申告のしかた 参考2)。建築年月日や構造は、登記事項証明書で確認できます。
5%と実額は、どちらが有利ですか?
実額(土地の購入代金+建物の取得費)が売った金額の5%を超えるなら実額、超えなければ5%が、取得費の大きいほうです。取得費が大きいほど譲渡所得が減るため、税額も下がります。
モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。
条件:相続した家を1,800万円で売る。5%は90万円。長期譲渡で、取得費以外の条件は同じ。購入資料が残っているものとして、2つの見本を比べます。
| 項目 | 見本A(木造・28年) | 見本B(木造・40年) |
|---|---|---|
| 土地の購入代金(見本) | 3,000,000円 | 300,000円 |
| 建物の取得価額(見本) | 10,000,000円 | 8,000,000円 |
| 償却費相当額 | 7,812,000円(×0.9×0.031×28) | 7,600,000円(計算上は8,928,000円。95%の上限を適用) |
| 建物の取得費 | 2,188,000円 | 400,000円 |
| 実額の合計 | 5,188,000円 | 700,000円 |
| 概算取得費(5%) | 900,000円 | 900,000円 |
| 有利なほう | 実額 | 5% |
| 取得費の差 | 4,288,000円 | 200,000円 |
| 税額の差の目安(差×20.315%) | 約87万円 | 約4万円 |
税額の差の目安は、取得費の差に、長期譲渡所得の税率20.315%(所得税15%、復興特別所得税(所得税額の2.1%)、住民税5%。No.3208)を掛けた概算です。3,000万円控除や取得費加算を使うとき、端数処理、譲渡損失のときは変わります。控除は譲渡所得が上限なので(令和7年分 譲渡所得の申告のしかた 参考1)、控除の範囲内で譲渡所得が0円になるなら、取得費の差は税額に出ません。
実額を選ぶときの注意点は、次の表のとおりです。
| 確かめること | 5%を選ぶ | 実額を選ぶ |
|---|---|---|
| 必要な資料 | なし | 購入代金・建築代金の資料(契約書、領収書など) |
| 相続のとき払った登記費用・不動産取得税 | 取得費に入らない | 取得費に入る(業務用でない場合。No.3270) |
| 建物の減価償却 | 計算しない | 構造・経過年数で計算する |
| 向く場合 | 資料がない、築年数が古い建物 | 購入価額が高く、築年数が浅い建物 |
購入代金の資料は、どこから探しますか?
実額で計算するには、被相続人が買った(建てた)ときの代金が分かる資料が要ります。取得費に含まれる費用の例は、購入代金、購入手数料、購入時の登録免許税や不動産取得税、測量費などです(国税庁 No.3252)。
| 探すもの | 分かること |
|---|---|
| 売買契約書、建築請負契約書、領収書 | 購入・建築の代金、手数料 |
| 登記事項証明書 | 建築年月日、建物の構造(参考2の注) |
土地の購入代金が分からず、建物の取得価額だけ分かるときに、土地は5%、建物は実額と分けて合算できるかは、国税庁の案内に書かれていません。税務署か税理士に確認してください。
市街地価格指数で、取得費を推計できますか?
国税庁タックスアンサーNo.3258と、確定申告書等作成コーナーの案内には、市街地価格指数による推計の記載がありません。国税庁が案内する取得費が分からないときの方法は、売った金額の5%です。
市街地価格指数による推計を紹介する民間の解説もありますが、本記事では扱いません。国税庁の案内に載っていない方法を使いたいときは、申告の前に税務署または税理士に確認してください。
内訳書には、どう書きますか?
内訳書の3面「2 購入(建築)代金など」の欄に、5%または実額を書きます。欄ごとの書き方と、国税庁の記載例(土地の購入先に「令和〇年相続」、氏名欄に「売った金額×0.05」)は、譲渡所得の内訳書の書き方で説明しています。
取得費加算の特例(相続税の一部を取得費に加える)と3,000万円控除は、併用できません。比較は相続した家を売る税金にあります。要件は3,000万円控除の判定ツールで確かめられます。
この記事で使える計算ツール
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よくある質問
取得費が分からないときは、どう申告しますか?
売った金額の5%を取得費にして、譲渡所得の内訳書に書きます。購入先欄に「令和〇年相続」、氏名欄に「売った金額×0.05」と書くのが国税庁の記載例です。
5%は、建物があっても使えますか?
国税庁の例は、土地建物を3,000万円で売った場合の5%(150万円)です。土地と建物で分けて計算する場合の扱いは、国税庁の案内に書かれていないため、税務署に確認してください。
5%を選ぶと、相続のとき払った登記費用は取得費に入りますか?
入りません。実額で計算する場合に限り、相続のとき払った登記費用と不動産取得税が取得費に加えられます(国税庁 No.3270)。
実額と5%は、一部ずつ使えますか?
実額と併せて適用できません。実額で申告するか、5%の特例を適用するかを選びます(国税庁 確定申告書等作成コーナーの案内)。
この記事の根拠
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき(確認日 )
- 国税庁 No.3252 取得費となるもの(確認日 )
- 国税庁 No.3261 建物の取得費の計算(確認日 )
- 国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期(確認日 )
- 国税庁 No.3202 譲渡所得の計算のしかた(確認日 )
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算(確認日 )
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー 取得費が分からないとき(概算取得費の特例)(確認日 )
- 国税庁 令和7年分 譲渡所得の申告のしかた 参考1(土地や建物の譲渡所得のあらまし)・参考2(建物の標準的な建築価額表)(確認日 )
- 租税特別措置法(e-Gov法令検索)31条の4(確認日 )
- 国税庁タックスアンサー No.3202・3208・3252・3258・3261・3270(令和8年4月1日現在法令等)
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー「取得費が分からないとき(概算取得費の特例)」
- 国税庁 令和7年分 譲渡所得の申告のしかた 参考1・参考2
- 租税特別措置法31条の4(e-Gov法令検索)
この記事は一般的な情報です。個別の税務相談に代わるものではありません。最終判断は、税務署または税理士にご確認ください。