第4章 実行|買取・訳あり

借地権の承諾料・更新料の計算式と早見表:借地権割合の調べ方

承諾料・更新料の額を定める法律はありません。目安は路線価図の借地権割合で出す借地権価額で、額は地主との合意か裁判所が決めます。

  • 借地借家法に、承諾料・更新料・名義書換料の額の定めはありません。額は、地主との合意か、借地非訟で裁判所が決めます(借地借家法19条ほか)。この記事は、公的な統計がない「相場の割合」は書きません。
  • 計算の出発点になる借地権割合は、国税庁の路線価図で調べます。路線価の右隣のA〜Gの記号が、90%〜30%に対応します。
  • 借地権価額は、自用地としての価額に借地権割合を掛けて求めます。承諾料の話し合いに使う前提の金額として、この記事の早見表で見当を付けられます。あなたのケースは診断で確かめてください。

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借地権の相続・売却の全体像は借地権を相続したらで扱っています。この記事は、その中の「金額」だけを詳しく扱います。

借地権の承諾料と更新料は、どの場面で払い、どう決まりますか?

承諾料は、地主の承諾が要る行為をするときに払う金銭です。更新料は、契約を更新するときの金銭です。どちらも、額を定める法律はなく、地主との合意で決まります。合意できないとき、承諾料の一部は裁判所が決められます。

借地権の承諾料・更新料が出てくる場面と、額の決まり方
場面 呼び方 根拠 額の決まり方
借地権(土地の賃借権)を第三者に売る 譲渡承諾料、名義書換料、名義変更料 民法612条1項、借地借家法19条 地主との合意。合意できないときは、借地非訟で裁判所が承諾に代わる許可を与え、財産上の給付を条件にできる(19条1項)
建て替え・増築を制限する特約があるのに、建て替える 増改築承諾料、建替え承諾料 借地借家法17条2項・3項 地主との合意。合意できないときは借地非訟
建物の種類・構造・規模・用途の制限を変える 条件変更承諾料 借地借家法17条1項・3項 同上
契約の更新後に、残存期間を超えて続く建物を再築する 再築承諾料 借地借家法18条 同上
契約を更新する 更新料 借地借家法に定めなし 契約書の特約と、地主との合意

東京地方裁判所は、裁判所が支払を命じる金銭の額を「一般に『建替え承諾料』とか『名義変更料』などといわれています」と説明しています。借地借家法そのものには、承諾料・更新料という言葉も、その額の定めもありません。

更新料は、東京地方裁判所が案内する借地非訟事件の6種類(借地条件変更、増改築許可、更新後の建物再築許可、土地の賃借権譲渡または転貸の許可、競売・公売に伴う賃借権譲受許可、借地権設定者の建物及び土地賃借権譲受申立て)に含まれません。更新料で折り合わないときの扱いは、契約書と弁護士の助言で確かめます。

借地権が地上権の場合は、民法612条の対象ではありません。自分の借地権が賃借権か地上権かは、契約書と登記で確認します。

借地権割合とは何で、どこで調べますか?

借地権割合とは、借地権の価額が自用地としての価額の何割にあたるかを示す割合です(財産評価基本通達27)。国税庁が公開する路線価図で、路線価の右隣に書かれたA〜Gの記号から調べます。

路線価図の借地権割合は、次のとおりです(国税庁)。

路線価図の記号と借地権割合
記号 A B C D E F G
借地権割合 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30%

国税庁の例では、路線価図に「215D」とあれば、1㎡あたりの路線価が215,000円で、借地権割合が60%です。路線価は千円単位で表示されます。

調べる手順は次のとおりです(国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」)。

  1. 国税庁の財産評価基準書のページ(rosenka.nta.go.jp)を開き、見たい年分を選ぶ。
  2. 都道府県を選び、「路線価図」を選ぶ。
  3. 市区町村を選び、町丁名の索引から該当の地図を開く。
  4. 借地の前の道路に書かれた路線価の右隣のアルファベットを読む。

路線価が定められていない地域(倍率地域)では、同じサイトの「評価倍率表」の「借地権割合」欄を見ます。路線価地域で2路線以上に面する場合や、路線価地域と倍率地域が接している場合は、原則として路線価地域の正面路線価に表示された借地権割合によると、国税庁は案内しています。

借地権の取引慣行がないと認められる地域の借地権は、財産評価では評価しません(財産評価基本通達27ただし書)。その地域の底地は、借地権割合を20%として計算します(財産評価基本通達25(1))。

借地権価額と底地の価額は、どう計算しますか?

借地権価額は、自用地としての価額に借地権割合を掛けて求めます。底地(借地権の目的になっている宅地)は、自用地としての価額から借地権価額を引いて求めます。いずれも国税庁の財産評価の計算式です。

借地権と底地の計算式(財産評価基本通達25・27)
求めるもの 計算式 根拠
借地権の価額 自用地としての価額×借地権割合 財産評価基本通達27
底地(貸宅地)の価額 自用地としての価額−借地権の価額 財産評価基本通達25(1)

底地は、国税局長が貸宅地割合を定めている地域では、自用地としての価額にその貸宅地割合を掛けて求めます(財産評価基本通達25(1)ただし書)。

自用地としての価額は、路線価地域では、おおむね「路線価×奥行価格補正率×地積」で求めます。国税庁の計算例を次に示します。

国税庁の計算例(普通商業・併用住宅地区「300C」、奥行距離35m、700㎡)
手順 計算 金額
1平方メートルあたりの価額 300,000円×奥行価格補正率0.97 291,000円
自用地の価額 291,000円×700㎡ 203,700,000円
借地権の価額 203,700,000円×70% 142,590,000円

実際の評価には、奥行価格補正率のほか、土地の形や道路との関係による補正があります。補正の種類は、国税庁の評価明細書・調整率表で確かめます。

この計算は、相続税・贈与税のための財産評価です。承諾料や売買の価格を定める法令の規定ではありません。実際の取引の額は、地主との合意か裁判所の判断で決まります。

借地権割合ごとの借地権価額は、いくらですか?

自用地としての価額が分かれば、借地権割合に応じた借地権価額を早見表で見当を付けられます。下の表は、掛け算の結果を並べたモデルケース(見本の数字)で、実在の土地の評価額ではありません。

モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。

自用地評価額と借地権割合ごとの借地権価額の早見表(モデルケース:見本の数字)
借地権割合 自用地1,000万円 自用地2,000万円 自用地3,000万円 自用地5,000万円
A 90% 900万円 1,800万円 2,700万円 4,500万円
B 80% 800万円 1,600万円 2,400万円 4,000万円
C 70% 700万円 1,400万円 2,100万円 3,500万円
D 60% 600万円 1,200万円 1,800万円 3,000万円
E 50% 500万円 1,000万円 1,500万円 2,500万円
F 40% 400万円 800万円 1,200万円 2,000万円
G 30% 300万円 600万円 900万円 1,500万円

底地の価額は、自用地評価額から表の金額を引いた額です。たとえば、自用地3,000万円で借地権割合が70%(C)なら、借地権は2,100万円、底地は900万円です。

モデルケース(見本の数字)。実在の事例ではありません。

条件:路線価図に「150D」とある道路に面した借地。地積は100㎡。奥行価格補正率は1.00と仮定する(実際は奥行距離や土地の形で変わります)。

「150D」・100㎡の借地の見本計算(モデルケース:見本の数字)
項目 計算 金額
路線価 150(千円)×1,000 150,000円/㎡
自用地の価額 150,000円×1.00×100㎡ 15,000,000円
借地権割合 記号Dの割合 60%
借地権の価額 15,000,000円×60% 9,000,000円
底地の価額 15,000,000円−9,000,000円 6,000,000円

承諾料の話し合いで使う前提の金額は、この借地権価額です。ただし、承諾料を借地権価額の何%にするかは、法令にも公的な統計にもありません。見本の場合、割合を1%動かすと、金額は90,000円動きます(9,000,000円×1%)。

承諾料はいくらが相場ですか?数字を書かない理由は何ですか?

承諾料の相場の割合を示す公的な統計や裁判所の公表資料は、確認できた範囲にありません。この記事は、割合の数字を書きません。額は地主との合意で決まり、合意できないときは裁判所が鑑定委員会の意見を聴いて決めます。

民間の解説には、承諾料や更新料の割合や月数を示すものがあります。ただし、根拠として挙げられる判決・書籍・過去の調査は、本稿で原文を確認できていません。また、基準が「借地権価格」「更地価格」「地代」のどれか、記事ごとに違います。基準が違うと、同じ「5%」でも金額は変わります。

東京地方裁判所の案内によると、借地非訟の手続は次のように進みます。

  • 裁判所が、承諾を認めるかどうか、認める場合に借地権者に支払を命じる金銭の額を判断する際に、鑑定委員会の意見を聴く(借地借家法19条6項)。
  • 鑑定委員会は、弁護士、不動産鑑定士、有識者(建築士を含む)から3人以上が指定される。費用は国が負担し、当事者に費用はかからない。
  • 裁判所は、承諾料額・賃料額・建物及び借地権価格などについて意見を求める。
  • 多くの事件は、特段の事情がなければ、概ね1年以内に終わっている(令和8年3月5日改訂の表示)。

借地非訟の申立てには、手数料と郵便切手が要ります。申立手数料は、借地権が設定された土地の固定資産評価額を基礎に算定します。東京地方裁判所は、増改築許可以外の申立てでは、固定資産評価額の2分の1を目的物の価格とする算定方法を案内しています。申立先の裁判所の手数料早見表で確かめてください。郵便切手は、相手方1名の場合に6,000円です。

地主が提示した額に納得できないときは、次の順で確かめます。

  1. 地主に、金額の基準(借地権価額か更地価格か、掛ける割合)を書面で示してもらう。
  2. 借地権割合と自用地評価額を、この記事の手順で自分でも計算する。
  3. 不動産鑑定士や弁護士に、金額の根拠を相談する。
  4. 合意できなければ、借地非訟を検討する。申立てを代理人に依頼する場合、代理人は弁護士に限られます(借地借家法44条1項、東京地方裁判所の案内)。

地主が承諾しない場合の手続の流れは、借地権を相続したらに表で書いています。

更新料は、契約書のどこを見ればよいですか?

更新料は、借地借家法に定めがありません。まず、借地契約書に更新料の定めがあるかを見ます。更新後の期間や更新請求のルールは、借地借家法に定めがあります。

借地借家法の借地権の更新について、法律が定めていることは次のとおりです。

借地借家法が定める借地契約の更新のルール
項目 内容 根拠
更新後の期間 更新の日から10年。借地権の設定後の最初の更新は20年。当事者がこれより長い期間を定めればその期間 借地借家法4条
借地人からの更新の請求 存続期間が満了するとき、借地権者が更新を請求すれば、建物がある場合に限り、従前と同一条件で更新したとみなす。地主が遅滞なく異議を述べたときは別 借地借家法5条1項
地主の異議の要件 土地の使用を必要とする事情、従前の経過、土地の利用状況、明渡しの条件として財産上の給付をする旨の申出などを考慮し、正当の事由があると認められること 借地借家法6条
更新料 規定なし —

旧借地法の借地権など、借地借家法の施行前に設定された借地権の更新は、従前の例によります(借地借家法附則6条)。自分の借地権がどちらかは、契約書の日付で確かめます。

契約書の更新料の定め方は、契約ごとに違います。次の3点を見ます。

  • 更新料の額の決め方(金額が書かれているか、計算の基準と割合・月数が書かれているか)
  • 計算の基準になる額(路線価、借地権価額、更地価格、地代のどれか)
  • 更新のたびに払う定めか、最初の更新だけか

基準が借地権価額や更地価格のときは、この記事の計算式と早見表で、基準になる金額を出せます。

あなたのケースでは、何から確かめますか?

承諾料や更新料の話し合いの前に、借地権割合と自用地評価額を調べて、基準になる金額を自分で出します。そのうえで、契約書の定めと、地主の提示額の根拠を比べます。

状況ごとの次の一歩
あなたの状況 次の一歩
借地権を売る予定で、地主に承諾料を求められた 借地権割合と自用地評価額を調べ、借地権価額を計算する。地主に金額の基準を書面で確認する
建て替えを考えている 契約書の増改築の特約を確認する。承諾が要るなら、地主と話し、折り合わなければ借地非訟を検討する
更新が近い 契約書の更新料の定めと、更新後の期間(借地借家法4条)を確認する
路線価図に借地権割合がない 倍率地域の評価倍率表を見る。借地権の取引慣行がない地域かも確認する
借地権が賃借権か地上権か分からない 契約書と登記を確認し、弁護士・司法書士に相談する
借地権を相続したばかり 借地権を相続したらで、承諾の要否と最初にやることを確認する

個別の契約や金額の判断は、弁護士・不動産鑑定士にご相談ください。税金の扱いは、税務署・税理士にご確認ください。

借地権付きの家を売る場合は、借地権の買取を扱う会社に無料で査定を申し込める窓口があります。首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)の借地権付きの家は借地権の買取を扱う会社、東京都の借地権付きの家は訳あり物件の買取を扱う会社が窓口です。対象の地域や物件は会社ごとに違います。地主との交渉を自分で進められる人や、地主に売る方向で話が進んでいる人、売るかどうか家族で決まっていない人には向きません。申込み前に、各社の案内を読んでください。

よくある質問

借地権の承諾料は、法律で決まっていますか?

決まっていません。借地借家法に額の定めはなく、地主との合意で決まります。合意できないときは、借地非訟で裁判所が承諾に代わる許可を与え、財産上の給付を条件にできます(借地借家法19条1項)。

借地権割合は、どこで調べますか?

国税庁の財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)で調べます。路線価の右隣のアルファベットが借地権割合で、Aは90%、Gは30%です。

借地権の価額は、どう計算しますか?

自用地としての価額に借地権割合を掛けます(財産評価基本通達27)。たとえば、自用地が3,000万円で借地権割合が70%なら、2,100万円です。この計算は財産評価のためのもので、売買や承諾料の額そのものではありません。

更新料は、必ず払わなければなりませんか?

借地借家法に更新料の定めはありません。まず、契約書に更新料の定めがあるかを確認してください。判断に迷うときは、弁護士に相談します。

地主が承諾料の額で折り合わないときは、どうしますか?

土地の賃借権の譲渡では、借地権者が裁判所に承諾に代わる許可を申し立てられます(借地借家法19条)。裁判所は、鑑定委員会の意見を聴いて判断します。

この記事の根拠

  1. 借地借家法(e-Gov法令検索)4条・5条・6条・17条・18条・19条、附則6条(確認日 )
  2. 民法(e-Gov法令検索)612条 賃借権の譲渡及び転貸の制限(確認日 )
  3. 国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表「路線価図の説明」(借地権割合A〜G=90%〜30%、計算例)(確認日 )
  4. 国税庁 財産評価基準書「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」(借地権割合欄)(確認日 )
  5. 国税庁 財産評価基準書「路線価図の閲覧の仕方」(確認日 )
  6. 国税庁 財産評価基本通達 25(貸宅地の評価)(確認日 )
  7. 国税庁 財産評価基本通達 27(借地権の評価)ほか第2節 宅地及び宅地の上に存する権利(確認日 )
  8. 東京地方裁判所民事第22部「借地非訟事件について」(令和8年3月5日改訂の表示)(確認日 )
  9. 同「第1 借地非訟とは」(事件の6種類、手続のあらまし)(確認日 )
  10. 同「第2 借地非訟事件手続の流れ」(鑑定委員会制度)(確認日 )
  11. 同「第3 費用」(申立手数料の算定、郵便切手)(確認日 )

最終更新:2026年10月25日。制度の内容は2026年10月時点の法令と、国税庁・裁判所の公表資料です。

  • 借地借家法4条・5条・6条・17条・18条・19条、附則6条、民法612条(e-Gov法令検索、2026年10月25日確認)
  • 国税庁 財産評価基準書「路線価図の説明」「評価倍率表(一般の土地等用)の説明」、財産評価基本通達25・27(2026年10月25日確認)
  • 東京地方裁判所民事第22部「借地非訟事件について」(2026年10月25日確認)

この記事は一般的な情報です。個別の契約や金額、税額は、弁護士・不動産鑑定士・税理士にご確認ください。